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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第三十章】

【第三十章】

 翌日も、戦勝祈願の躍進は止まらなかった。司隷地区を中心に捕虜にした敵将の数30。脱走し、友軍を救出しようとする者もいたが、すかさず鎮圧された。

「司隷ではひと段落ですな。」

「百家も順調に鴉を撃退し、勢力範囲を広げている。」

「我らが担当した原武北部はほぼ制圧。」

「ほとんどを捕虜にしたので、捕虜抜けの警戒だけですな。」

「多くが城をたたんで、故郷へ逃げ帰った様子。」

 司隷州・原武郡の、鴉はほぼ制圧された。一方で、陽阿は、防衛どころか広く侵攻するまでの勢いであった。

「このまま一気に、制圧しますか?」

「いや、陽阿は、派遣用の幕舎を破壊し、敵の機動力を奪う程度でよかろう。」

「早々に反旗を翻した喪威はともかく怜打須などは、資源欲を利用され、鴉やその下部同盟に唆されての反抗。それがこれだけ押されたら、失意のうちに停戦を申し込んでくるか、放浪するやもしれぬ。」

「さらにじゃ、関内で、頑張っていた琿烝と橙里が、勢いを盛り返した。」

「なんと。」

「さらには敵が三輔から入って来られぬよう、西川の席を門神で封鎖したのじゃ。」

「であれば、なおさら、敵を陽阿前に引き付けておくのが、彼らへの援助にもなりますな。」

「では、手ごろなところで一進一退しながら、こちらは経験値を稼ぎますか。」

「それが良いと思う。相手に、『自分たちも戦えている』と思わせるのも手ではないか。」

「夢を与えてやろうぞ、儚い夢を、な。」


 そこで、指令が出る。上手に負ける、上手に逃げる、それに力量を発揮せよと。敵に自分は強いと思い込ませるのだ。喪威や、鴉の下部組織である鬼滅とは、全力で戦うが怜打須が来たら、上手に負け、上手に逃げる。これには諸将の演技力が必要だ。しかし、彼らにはその才覚も備わっている。

「面白いなぁ。」

「これが戦略というものだ。押すばかりが戦争ではないということか。」

「他に兵を向かわせぬように、引き付けるのじゃな。」

「そして、陽阿の関近くに迫ったら、再び押し返す。」

「駆け引きか。面白い。誠に面白いぞ。それが全体の役に立つなら尚更だ。」


 指令を出した昇には、もう一つ目論みがある。怜打須・喪威・鬼滅が、連携して攻めてくる中で、怜打須とのみ、戦いが少ないことが目立てば、敵の間に不信感が湧く。勝手に湧く。

「誘敵撃滅の計と、離間の計。今の陽阿防衛軍の面々なら、間違いなくやり遂げてくれる。」

「殿の二つ名。『暴嵐龍』の他に、『黒策士』というのもありましたな。」従者が言う。

「全土に誤って流したと思わせて偽情報を流すなど、殿の常套手段でしたな。」

「なんとでも言え。最後に勝てば良いのよ。」

 傷が癒え始めた昇が、不敵に笑う。


【章末】


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