【第二十七章】
【第二十七章】
天井がある。
全身が激しい痛みに包まれている。左側の視野がない。音も偏る。
昇は、病床でようやく目覚めた。
「父上、お気づきになられましたか。」
仁が声をかける。彼も満身創痍である。
「今日はジィジと呼ばんのか。」
「死の淵で抗っている父上に、そのような無礼は致しません。」
「陽阿はどうなった?」
「守り切ったようです。城壁修復の足場は無事に組み上がりました。」
「そうか。そうか。よかった。諸将、奮戦してくださったのじゃな。」
「駐城部隊の詰所は完成して、兵の配備も終わりました。後は、城壁の修復が完了するまで守りぬけば。」
「よかったなぁ。ここからじっくりと押し返してくれる事だろう。お前もひどい有様だな。」
「未熟ゆえ、私も壊滅いたしました。しかし、父上ほどでは。」
「今、儂はどのような状態だ。」
「左目を失いました。それと左耳も。重ねて状態も悪く極めて危険です。」
「はっきり言うなぁ。そうか、目を失ったか。眼帯、伊達ではなくなるのぉ。」
気丈に振る舞う父の様子に、仁は迂闊にも涙をこぼす。そのような呑気な事を言える状態ではないのだ。
「仁、言い残しておこう。勝願 出身の皆様も強くなった。戦鬼 出身の方々も。儂もこの時期に主城5部隊の基礎育成がほぼ終わるほどにはなったが、彼等には到底、敵わぬ。お主も4部隊までは育成が終わったと言っておったなぁ。しかし、皆様の方がとても強い。」
「はい。今回の件で自覚いたしました。」
「儂がひたすら公を守り、後を継いだ緋蕗陽殿を支えた頃は、皆、まだ弱く、力を合わせる必要があった。しかし、今は、個々が力を持っている。じゃがな、自らの強さに慢心してはならぬ。力を合わせて戦ってこそ、個々の強さが真に発揮されるのだ。」
「絆。ですね。」
「そのとおりじゃ。現在の幹部会の指示に従い、各自が皆のために。皆が頑張る仲間の為に。身を挺して力を尽くす。それぞれがどれだけ強くなっても。それを忘れてはならぬ。」
「慢心ですね。私も調子に乗っておりました。」
「儂もじゃ。だからこの有様じゃ。年甲斐もなく、自分の力量を測り損ねたわ。グフッ。」
昇は激しく咳き込み、吐血した。その血を拭いながら、続ける。
「仁よ。おお、仁よ。我が息子よ。奢るなかれ、慢心するなかれ。皆様の手足となって、できる事をするのじゃ。我が家門の明日は、そなたが頼りじゃ。」
そう言い残して、昇は目を閉じ、動かなくなった。
【章末】




