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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第二十一章】

【第二十一章】

 虞蓮は崩壊した。君主の殿下は仲間を見捨てて放浪した。それに付き従う者も放浪したが中には十分な武力も持たず、殿下を盲信したのであろうと推察される者もいた。そして虞蓮に残った同盟員の中で改めて幹部会が構成され、新しい盟主が外交官を伴って、降伏を申し入れ、停戦を乞いに来た。交渉の中で、『他の同盟に攻撃をしないこと、元・虞蓮の放浪軍も含め放浪軍対応には可能な限り積極的に取り組むこと』を条件に、停戦の方向が見えてきていた。ただ、前の季節に連合を組む中で、散々振り回された納富は停戦には快諾しておらず、これから納富と連合を組む戦勝祈願にとっては、無警戒にはできぬ状況であった。


 全土の大勢、一度は決し、先の南部連合との停戦を踏まえ、改めて、いわば東西で連合を組み直して力を均衡化させた上で、洛陽を目指すこととなった。残念ながら主体として洛陽に手をつけるのは、南部連合を組んでいた、強豪3同盟ではあるが。

 結ばれた取り決めの中に、戦勝祈願と百家涼蘭・城戸愛絡は、その力量を見込まれて組み入れられたが、その他の同盟は捨て置かれた。戦勝祈願・百花涼蘭それぞれの分隊同盟は、一つとして認識されたが、その他の中小同盟は勝手次第となり、各州の州府の支配も割り当てられることは無く、それぞれが自力でなんとかするしかない。

 なんとかするしかないとは言うものの、州府を割り当てられたのは、いずれも強敵。争って勝てる見込みも少ない。全ての事が決した後の論功行賞が行われる事がなければ、此度の事変に参戦した、所属同盟員の悲嘆の声が、それぞれの盟主に届く。

「負けたとはいえ、尽力した北部の各同盟に益があるようにしたい。」

 君主・龍鬼はそう考え、幹部会も同じ考えであった。

 しかし、南部の納富の傭兵として動いていた同盟から、泣きの相談が入る。龍鬼と旧知であることを頼りに、同盟員の受け入れや領地の確保を願って来た。

 丁寧に対応する龍鬼であったが、辟易していた。外交官の羅宗も、違う語り口で参加するが、相手はなかなか諦めない。

「なぜ、敵であった我々に助けを求めるのか。仕えていた納富に言えばよかろうに。」

「傭兵として動く際に、あらゆる場面を想定しての恩賞を、確約してなかったのであろうか。」

「どうやら、そうらしい。」

「なんじゃそりゃ。」

老将・昇が鼻で笑う。

「傭兵としての立場を納富と取り決めるときに、見返りを約束させなかったのであれば、只々、強い同盟に擦り寄ったに過ぎんわ。何も考えずに尻尾を振っただけじゃのう。犬としての立ち位置なら、褒美は骨一本でも文句は言えまい。」

「翁の仰るとおりですな。例えが上手い。」

と羅宗。

「ただでさえ、今後の方向に思案を巡らす我が盟主の、貴重な時間を奪いおって。放っておけ。こちらが取り合う筋はない。」

 一方で外交官の羅宗は、北部連合・西部の各同盟とのやりとりも進めていた。が、ここにも国として全土の趨勢を考えて行動できぬ同盟もあった。ただ戦いたい。そんな暴徒山賊に等しい思考回路しか持てぬ者たち。

 間も無く、勢力を組み替えた東西争覇が始まる。それまでに不安の種は、排除しておきたい。幹部会の苦悩は今日も続いている。


【章末】


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