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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第十九章】

【第十九章】

 多方面に展開していた南部連合との停戦が成立した。そこで、勝手に離反して、さらに予告もなく他者の出生州に侵略した、不義の逆賊・虞蓮への討伐作戦が開始された。

 当初、隙をつかれた形で雛県を抜かれ任城まで奪われたが、これまで多方面同時展開で戦ってきた、戦勝祈願・百家涼藍にとって、一点集中の反撃戦線は、むしろ心地よいものだった。

「無警戒に、なぜこれほど城を河朔へ移して来ているのか。」

「自分たちはよほど強いと思っているのでしょう。」

「反撃されても跳ね返せると?」

「でしょうな。」


 体制が整うのに1日要したが、反攻体制は整った。その軍列は、まさに意気揚々。

「よし、任城東側に、幕舎の列を!完成すれば通過できまい。」

「合わせて、その東、愚かにも敵地に遷城して来たものどもを捕虜としましょう。」

 瞬く間に4名の敵将を捕虜とした。


「ん?敵の君主、自らこちらへ城を動かしているぞ。」

「はっ?なんと愚かな。守るべき王将が前線に出るとは。」

「そちらには百家殿が襲いかかっております。」

「頼もしい。敵君主を捕らえてしまえば、敵国財政に大きな打撃をあたえられる。」

「そういうことを、想像できなかったのでしょうな、殿下は。」

「どうせ、苦労を知らぬ二世なのだろう。」

「なぜ、あの君主はすぐに捕虜となるのか!」

苦笑しながらある者が言う。

「坊やだからさ!」

他のものが口を揃えて言い、爆笑する。


 ややして、百家より敵君主捕獲の報がもたらされた。散発的な抵抗は見られるものの、敵の士気は下がったように見える。


 任城包囲網を完成させつつ東へ駆逐の前線を押し上げる戦勝祈願。一方で、君主を捕らえた百家涼藍が、そのさらに東方から西進してきた。そしてついに、戦線が合流を果たした。

「よし、この城を捕らえたら、南進して、雛県奪取だ。」

「そしていよいよ、淮海への侵攻ですな。」

「人に故郷を荒らされる悔しさを、その身に味合わせてくれよう。」

「そのためにも、まず、間違いなく任城を奪還しましょう。」


 外交の場で大事なのは、感情任せに言葉を吐かぬこと。怒りや不満を腹に持ちつつも、言葉を荒げることなく冷静に伝える。言葉を選び、その言葉に鋭さを込める。それでいて大事なのは、相手の気持ちを推しはかること。これを理解できぬ君主を、外交の場に出してはならない。出てしまったのなら、幹部は身を挺してこれを諌め、非礼を詫びて面目を保つ。部下は仲間であって奴隷ではない。下部同盟が「奴隷」を名乗るような組織は、そもそも破綻している。

 良いリーダーとは、部下の声に耳を傾けて国をまとめ、知略を尽くして言葉を選び、さまざまな思惑を持つ他国との交渉にあたる。言葉にするとたった一文だが、これは容易なことではない。改めて幹部会の苦労に頭が下がる。


【章末】


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