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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第十六章】

【第十六章】

 司隷州をめぐる争いは、緊迫してきた。他に先んじて司隷州入りした戦勝祈願・百家涼藍であったが,南部連合も入り始め、司隷西部・河南尹では、百家と南部勢力の戦闘が始まった。

「百家の進軍を支えるには、今一度、河内郡の鴉を叩かねばなりませんな。」

「やはり、あれであろうな。」

「あれですな。」

 戦勝祈願の全軍に、堤防攻撃に向けた動員令が発布された。

「こちらの劣勢を見越して、相手は再び堤防前に派遣中継の幕舎を築きつつある。今一度、堤防を破壊して、水底に沈めよう!」


 結束の高さはすぐに現れた。百家の将に代わって、要所を固めた丑縞の城に多くの将が集結した。そして号令一下、一直線に堤防を目指して進行する。一箇所一箇所、部隊を重ねての集中攻撃である。鴉の将が襲来に気づいて部隊を差し向けるが、そこにはすでに5つ以上の部隊が占領・攻城を進めている。そうなると多勢に無勢、飛び込んでは敗退して引いていく。もちろん、こちらの部隊も傷つき敗れ撤退していくが、すぐにそれを補う部隊が重ねる。一歩ずつ一歩ずつ。強大な大蛇の如く、戦勝祈願の軍団が堤防に向けて進んでいく。そして。

「よし、堤防に取り付いたぞ。全軍!堤防を破壊せよ!」

 ここからはあっという間である。修復を終えたはずの堤防が、叩き壊されて、支えていた莫大な水の重みに耐えかね、ミシミシと音を立てて崩れ始める。

「よし!作戦完了。堤防が決壊するぞ!全軍!高台まで撤収!!」


 ドンという音と共に、堤防が崩れ、湛えていた莫大な水が低地に流れ出す。鴉の幕舎・櫓などを次々に破壊しながら飲み込んでいく。

「やりましたな。これまでも何度か挑み、跳ね返されてはおりましたが。」

「今回は部隊の集まりも良かったし、皆も強くなっていたからな。」

「これでしばらくは敵の侵攻を遅らせることができますな。」

「すると今は、何よりの百家支援であろうよ。」


 『遅らせる』

 時代は、この言葉しか使えないほど緊迫してきていた。戦勝祈願の諸将は、歯を食いしばりながら自強と進軍を両立させ、いち早く司隷に辿り着いたが、南部連合は強豪の連合であった。これから全面対決となれば、苦戦は避けられまい。

「我らが矜持を保ち続けるための、落とし所はどこであろうな。」


 その時、北部連合の一角が崩壊した。虞蓮がなんの予告もなく友好を切ってきた。これまでも、戦勝祈願の苦労も知らずに、ワガママを言い、勝手に南部勢力と密約を結んだ結果として陳留国防衛で後手に回っておきながら,先に司隷に入ったことを「ずるい」と言い放っていた。

「ずるいって、子供か。」

「あれは、精神年齢が低いからな。」

「虞蓮と争いながら、南部連合を相手にするのは、かなり厳しいですな。」

「幹部会が策を練っておる。皆は心を合わせて、その方策に沿って動こうぞ。」

 時代がまた、新しい対応を否応なく求めてきた。


【章末】


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