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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第十三章】

【第十三章】

 今の戦勝祈願は、追い風の中を進んでいる帆船の如く。後世に現れる内燃機関の船のような力任せの進みではないが、確実に、堅実に、それでもグイグイと進んでいる。

 泰山郡の郡都・奉高城攻略はつつがなく完了した。「完了」という言葉が違和感を持たぬほど、安定の攻撃であった。およそ半刻での攻略。トドメは猫殿であった。


「さて、百家涼藍より援軍要請が来ておる。」

「前線の押し返しなら続けておるが?」

「いや、河内郡での戦闘を有利に進めるため、今のうちに郡都・懐県を支配し、民心を得たいとのこと。」

「なるほど。趣旨はわかる。うまくゆけばそれでよし、うまくゆかずともその後の孟津関攻略の良い指標となろう。」

 そこで戦勝祈願は、精鋭を援軍に差し向けることにした。河朔州で4つの郡都を手中に収めている戦勝祈願であるが、懐県は、昨日落とした奉高と同じ強度を持つ。自軍単体で、最後まで攻め抜ければ不安はないが、支配権を百家涼藍にとらせるためには、トドメを譲らねばならない。

 「譲る」と書いたが、事は口で言うほど簡単ではない。戦乱の中、城の強度を見ながら、ギリギリのところで戦勝祈願の部隊を撤退させねばならない。つまり一糸乱れぬ統率が求められる。

「連戦の中、諸将には疲れも見えます。ともすると、指示が通りきらず、トドメを取ってしまう武将が出るかも。」

「間違ってこちらが取ってしまうと、その後の外交に少なからぬ影響が出ますな。」

「さよう。更に言葉を選ばずに言えば、百家涼藍は我々よりは戦力が低い。あまり早く引きすぎては、落とし切れない可能性もある。」

「難しいな。」

「よし、城耐久、残り1/8で引く事としましょう。」

「いよいよ怪しければ、残り1割まで粘ろう。」


 かくして繊細な攻城が始まった。緒戦、百家涼藍が、駐城部隊の兵種を見極めながら丁寧に数隊を倒す。その後、百家涼藍・戦勝祈願の両軍の殲滅部隊が突撃する。駐城部隊を排除したのち両軍200を超える部隊が攻めかかる。

「ちと、速度が上がらんか。」

「これは、残り1割まで手伝わねば厳しいな。」

 城の耐久に目を凝らしながら、幹部たちは慎重に判断を重ねた。

「よし、ここで引こう。撤退の合図!」

「数名、引きません。ご老人も・・・」

「昇殿か?引くとは思うが、近頃お疲れの様子。それにお年も・・・」

「他の者は引き始めておりますが。私からも伝令を走らせております。」

と悠葵が言う。

「おおお。心配をかけた。すまぬ。ついつい熱くなってギリギリ粘ってしまったわ。楽しいのぉ、攻城は!ガッハッハ。」

撤兵を支持して、老人が無邪気に笑う。困った老人である。


 こうして無事に懐県は、百家涼藍の支配となり、ここを拠点に建国する運びとなった。

 百家涼藍は改めて戦勝祈願に感謝を述べ両者のつながりは一層堅固となった。


【章末】


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