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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第十一章】

【第十一章】

 その夜、戦勝祈願は、河洛州の魏県城を攻略した。しかし、その夜の作戦は終わらなかった。

 河内郡南西部に侵攻した箭田鴉は、陽阿の関と孟津の関の間にある堤防横まで進軍していた。警備駐屯地を制圧し、その隣に築城までして、この堤防を管理下に置いた。

「管理下。なるほどのぉ。いつでも堤防を開くことができると悦に入っているのであろう。」

「でしょうな、堤防下の湿潤地に夥しい幕舎の数。この地の水を征服したと思い込んでいるのでしょう。」

「時に、堤防そのものを破壊したらどうなる?」

「警備駐屯地を支配していようがいまいが、堤防は決壊し、湿潤地一面は水底に沈むかと。」

話しながら、幹部たちの顔は緩んでいく。

「警備駐屯地の防衛のつもりもあるのでしょうが、堤防そのものには、直接攻撃が可能です。彼の地を支配したと安心している今、攻撃は可能かと。彼らの目は孟津に向いております。」

「やるか。」


 堤防への攻撃は2回に分けられた。魏県攻撃の前に一度。破壊叶わず、「諦めて」撤退した風を装いながら、少し下がったところでの攻防に集中していた。相手は堤防直接破壊が困難と油断した。

「行くぞ。」

 その深夜。相手が堤防周辺の防備を緩めたのを見計ったように、総攻撃が始まった。

「行け行け行けぇ!なんとしても破壊するのだ。決壊させられれば、大量の水が、数百万の味方となって敵陣営に流れ込む!手を緩めるな。」

「ほほう。今頃焦って引き返しておるが、時すでに遅し!もう一息じゃぁ!」

 ミシミシミシ。ゴゴゴゴゴ。戦勝祈願諸将の攻撃に耐えかねて、堤防が決壊を始めた。

「よし、引け!決壊するぞぉ!」


 かくして堤防は決壊し、溜まっていた水が怒涛の如く流れ出した。多くの時間を費やして建て並べたであろう箭田鴉の幕舎群が一気に水に飲み込まれ、壊滅していく。

 そこにあったはずの夥しい数の幕舎群は、ほぼ一瞬できえさった。

「水の力とは、恐ろしいものよの。」

「狙った作戦とは言え、これほどの威力とは。」

「東の国では、津波という言葉があり、大層、恐れているそうな。」

「使う側で良かったな。この水計は、火計にも劣りませんな。」

「さて、掃討と行くか。水没しているゆえ、敵支配から解放するにも時間はかかろうが。」

「ですな。そのまま、水が引けば、再び幕舎などを立てにくるでしょうから。」


 水の力の恐ろしさを前に、歓喜と共に恐怖も自覚して、諸将は土地奪還に取り組んでいく。


【章末】


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