オアシスを求める男
男はオアシスを求めていた。
肌に突き刺すような強い日差し、その熱気で全身は汗まみれ。現在歩いてはいるが、歩く気力を失くすほど周りには何もなかった。眩しい日の光を避けることができるような場所すらもない。そこを男はひたすら歩く。己の二本の足のみで。
暑い、とその場で嘆きだしたいほど。しかし、いくら文句を言おうにもどうすることはできない。人間が自然を操るなんて想像上でしかないのだから。
上から、横から、下から止まない熱気。こうしていると、自分が何を目的としてこの場で足を進めているのか分からなくなってくるようだ。だが、実際にそうなったとしても、この場で立ち往生は勘弁だ。彼は帽子すら被っていないのだから。今更被っておけばよかったと後悔しても遅い。戻る気力が無いのだから。それならば、自身が求めている場所へとくことが先決だ。というか、そうでもしないと熱でやられて頭がパンクしそう。そこまで彼の頭は熱いのである。
誰が諦めるものか、と男がしばらく足を進めていると、少し離れた場所に屋根付きの建物が見えた。ああ、諦めずに前に進んでよかった。思わず彼の頬は綻ぶ。そして、歩く速度も早まっていた。そこまでして、太陽光から逃げたいから。
ようやく建物がある方へとやって来ると、その中へと入った。軽快な音楽と共に「いらっしゃいませ」と間延びした声が聞こえてくるのだ。
そう、男は片道三十分掛けてコンビニエンスストアに辿り着いたのである。
ああ、なんて快適。建物内に広がっていた冷気が彼の火照った体を冷やしていく。今ならば、一生ここにいてもいいぐらい最高な場所なのだ。
だとしても、この男には一つの誤算があった。それは、彼の住むアパートの部屋には冷房が設置されていないということである。この後、彼がどうなったかなんて予想はつくだろう。窓全開にうちわ片手で「熱い」と文句を言うことだ。




