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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
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18.優君入院中の周囲の人々の様子。


========== (武志) ==========



 優君が入院した。


 というか優君が女の子だった!?

 気がついたら椅子に縛られてたのもビックリだけど、優君が裸で坂下さんにベロベロ舐められてたのも驚きだったし、その優君が女の子になっててどうしてそんなことにっ! と思っていたらなんだかとても酷いことになりそうで、血とか出てたしとにかく助けなきゃって勢いだけで動いてたら、蹴られて凄く痛かったけどそこは根性というか勢い余って外に飛び出したら回りに人が来てあっという間に救急車に乗せられて僕はいいから優君を!って訴えようとしたら変なマスクつけさせられて、いつの間にか病院のベッドに。


 うん、何がなんだかわからないね。


「お、起きたかい?」


 どうやら隣に誰かいたようです。

 白衣を着た男性、年は二十歳くらいでしょうか? 四角い銀縁メガネのいかにも真面目そうな人です。


「しかし大した根性だよ君。左肩脱臼と右腕上腕骨折。あばらにもヒビが3本と、なかなかのもんだなぁ」


 なんだか聞いたことの無い言葉ばかりですが、どうやら僕の怪我の話しらしいです。


「まぁ外傷だけだし、今日一日だけ大人しくしててくれれば明日には退院していいよ」


 障害や後遺症の出る形跡はないそうです。意外に頑丈だったんですね僕は。

 まぁそんなことはどうでもいいのです。


「とことで、優君はどうなりました?」

「優君? あぁ、一緒に助け出されたって子かい? 別の病院で対応しているらしくてね、私にはよくわからないんだ」

「そうですか……いえ、ありがとうございました」

「うん、じゃぁ大人しく寝てるんだよ」


 そういって先生は離れていきました。


 ……


 僕は結局、優君を助けられたんでしょうか? 窓から落ちた後についてはサッパリでしたし。

 結局自分だけ逃げ出しただけじゃないのかと。あのあと優君がどんな扱いをうけていたのかとか、もう頭の中でぐるぐる回り続けています。

 一応「助け出された」ってことなので、大丈夫だと信じたいのですが……


 ……


 あぁ、もう、一刻も早く外に出たい。優君の無事な顔が見たい!

 というかなんですかね、あのカツラを着けた優君は。めちゃくちゃ可愛かったじゃないですか。

 普段あんな服なんか着ないし一瞬別人かと思ってましたよ。いえなんとなくわかりましたけど。ちょっと困ったように微笑むところとか彼そのものもでしたし。


 あぁ、彼じゃないんでしたっけ。


 どうしてああなってるんでしょうか。というかこの前一緒にお風呂に行ったときとか、もしかして既に……? いやぁそんなこと…… そういえば人前というか僕の前ですら肌を出すのを嫌ってましたね。今までなら全然気にしてなかったのに。と思っていましたが、もしかすると……


 ……


 なんだかとても申し訳ないことをしていた気がします。

 やばい、謝りたい。というか謝らないと。何を? 男湯に連れ込んで裸にして洗ったことを? ううん。何か違う気がします。

 やばい、どうしよう。会いたいけど会っていいのかわからない。というかどういう顔をしてあっていいのかわからない。どう考えても一番恥ずかしいところ見ちゃったからなぁ……


 ……


 そもそも会いたくないと言われたらどうしよう?

 そうだよ、優君だってあんなこと思い出したくないに違いないし。だとするとあの場にいた僕と顔を合わせるのだって……

 う~ん。もう優君と会えないのかなぁ~、帰ってこないかもしれないし。

 やだなぁ、優君に嫌われたまんまとか……



 退院後も優君のその後を知ることはできなかった。


 戻った時に孤児院が解散になることを知らされた時もあまりショックはなく、なんとなく当然な気がしていたし。優君がいないなら別にいいかなと思っていたのかもしれない。


 しばらくして、当然のように優君と再会することになるんだけど、そんなことを知らない僕は、まるで何か抜け殻のようにぼんやり日々を過ごすしかなかったんだ。

 あ、うん。頭の中があの時の優君でいっぱいになってたわけじゃないよ? 頭に焼き付いてただけだし。超綺麗だったとか思ってなかったからね? 一瞬見惚れて動き出せなかったなんてないからね? ほんとだから。マジだから。




========== (フィリー) ==========



 というか呼び出せない。今日も繋がらない。

 いったいどういうことなのかサッパリ。

 新たに術式を検討、効率化や多重化を積み重ねても効果は無かった。どうしてこんなことに……


 ユウとの契約は切れていない。切れていないんだけど、どこか妨害されている感じがある。

 やはりあの時なにかあったと考えるしかないだろう。というかそれしか思いつかない。


「……で、何か用事がありまして? ファニシエール・エードルクツヴェン」


 フィエラ。彼女の仕業で分断されてから何かがあった。それは間違いない。だからといってどう問い詰めればいいのか……


「ま、確かに賭けは貴方の勝ち。そこは認めて差し上げますわ」

「……貴方に聞きたい事があるわ」

「勝者の権利という訳ですわね。いいでしょう。お答えしましょう」


 両手を組み見下ろすような視線で彼女は答える。


「まぁといってもあの奴隷……じゃぁない、従魔の少女のことでしょう?」

「……ってことは貴方が原因ってことでいいのね?」

「えぇ」


 まぁ悪びれも無く答えてくださること。


「表面上というか学園登録上ではただの奴隷ということでしたからね。別に居なくなっても誰も気にしないかと思っていましたが、あんな珍しい存在だとしたら十二分に価値があるかと思いまして。私が頂こうかと思ってみたんですが……」


 切っ掛けはどうあれ、私はあの子に対して責任があるんだから。あの子のためにもこんな半端な状態で放置するなんてありえないでしょ。


「私がユウを手放すわけないでしょう!?」

「まぁ普通はそうよね。でも優秀な私は別に貴方の許可など必要無いのよ?」

「……何を言っているの?」

「だってアレは従魔なのでしょう? 奴隷ですらない。奴隷であればこの国の法律では主人の所有物、取り上げるにも相応の金額を支払う必要がある。でもただの従魔だもの。別に奪い取っても問題ない。そうよね?」


 従魔契約に干渉できるっての!? どんだけ規格外の能力だと思ってるのよ。


「……」

「そうね、貴方達の間での契約が切れれば、ということよね。当然だけどその契約を切って私が貰い受けるつもりだったのよ? でもなんでかしらね。何故か上手くいかなかったのよね」


 こいつにはそんな特技は無かったはずだけど、それができるスキルを手に入れたってことかしら。もしくはマジックアイテムか何か……。でも使いこなせてないっところかしら。


「……つまり、貴方のやり方が甘かったってこと?」

「甘い? 正しく優れたわたくしが甘い? 意味がわからないわね。あのときたまたま上手くいかなかったのは、契約形態が通常の物と異なっていたことを把握する前に貴方に優先権が取り戻されたからに他ならないわ。まぁ? そのせいで貴方達の契約になにかしら不具合が出ているようではあるわね。で、あの子はどうしたの? もしかして帰ってこないとか?」


 ちっ。確かにこの場で見せられないのは悔しいけど、逆を言えばこいつらもユウのことを把握してないってことね。


「貴方達にわざわざ見せるほど安くないのよ、あの子は。これからだってそう。いい加減負け犬は大人しくしていてもらいたいわね」

「……ふん。所詮は庶民の子どうしじゃれ合ってるといいわ! 私達は天上の頂に至るのよ! 地の底で一生悔しがってるといいのよ!」


 そんな捨て台詞を残して彼女は去っていった。連れの2人が一瞬こちらを睨んだようだけど、何かあるのかしらね。

 まぁどうでもいいわ。これでどう対処していいかを考え直さないと。契約の接続が切れた訳ではない。考えていなかった訳ではないけど、未だにユウとの契約を阻害する何かが使われているとしたら、そんなものものともしないくらい強固な繋がりとして補強してやればいいだけの話。


 さぁ、ユウを呼び戻すわよ!





========== (フィエラ) ==========




 あぁ忌々しい。どうやったところで負けるはずのない賭けだった。はずだった。

 周到に根回しを済ませ、ヤツの周りから協力者を奪い、独力では絶対困難な課題を押し付けたはずだったのに。

 どうにかして手に入れた協力者。どうやら奴隷として登録しておきながら、ほとんど反則の従魔としての人間の召還を成しえるなんて。なんてヤツ。


「いやしかし、惜しいことしましたな。あの娘、なかなかに珍しい称号の持ち主でしたよ」

「あれね、『次元踏破者』だっけ? 聞いたこともない称号だけど。どんなメリットがあるの?」

「いやそこまでは。何しろ時間が短過ぎでして」

「……使えないわね」

「めんぼくない」


 と言いはするがラースコで対応できないとなれば他の誰でも無理だっただろう。こいつのユニークスキルは強力無比。所有する者が限られると言われるだけあって使い方次第では神にも匹敵する程のものなのだから。


「しかし、異常なスキル構成でしたな。あのレベルでは考えられないほどの充実っぷり。というかレアスキルが2つもあったって時点で相当なものでしたよ」

「そう、ほんと惜しいわね。次は上手くいける?」

「……ちょっと難しいと思います。さすがにフィリーさんも対処してくるでしょうしね」

「そうよね、あの女が何もしないと思えないし」


 忌々しいほど優秀。本当に、大人しく私の配下に収まっていればいいものを。


「……まだ、後悔してますか?」

「今更よ。あの手の輩は力で黙らせないと何も言うことを聞かない。そうでしょ?」

「そりゃまそうですけど。次から彼女も天上に挑むはずです。条件は五分、あの小娘のせいでこっちがちょっと不利かもしれませんよ?」


 厄介なこと。レアスキル持ちってだけでも困り者なのに。まぁあの女を手に入れた時点で自動的についてくる特典と考えれば安いもの。どう対処するかだけど……


「……まぁそうね。これからはあの小娘対策も必要か……一応ステータスとかは確認できるのよね?」

「はい、近くにいないとダメですが、一度『掌握』しましたからね。それくらいの干渉力は残ってます」


 一度『掌握』すれば相手に気取られずに情報を得ることができる。というのはこいつのユニークスキルの一面でしかない。これだけでも十二分に便利なんだけど。


「それならいいわ。次に見た時は必ず把握しておいて。無理に所有権を奪う必要はないわ」

「ほう? どうされるおつもりで?」

「簡単よ。あの女が手放さないっていうなら、小娘からこっちに来るように仕向けるだけ。所詮奴隷の子供のことよ、案外簡単に転ぶかもしれないじゃない?」


 あの小娘、どう考えても只の一般人なのよね。あれだけのレアスキルを持てる理由が本当にわからなくなるくらいに。ただの偶然で得たって言われるほうが信用できるのよね。だから凄い脆いと思う。


「そう簡単とも思えませんが、揺さぶりをかけるのはいいかもしれませんな。スキル構成からもかなり甘い性格なのが伺えますし」

「苦痛耐性とか持ってる段階でメンタル弱いって言ってるようなものだしね。スキル無効化のことも知らないみたいだし……」


 不意をついて接近した時は随分慌てていたからね。対人経験の無さが見て取れるもの。


「わかりました。それでは計画通りに」

「任せたわよ」


 ふふふ。これからよ。私を敗者と罵ったこと、後悔させてあげるんだから。




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