18.やはりというかなんというか。レベル上がってました。
なんだか色々イッパイイッパイ過ぎてロクに確認していませんでしたが、よく見なくてもレベルが上がってました。スキルの方も軒並み上昇?というかなんだか順調過ぎて怖いくらいです。
しかし問題、というか謎の「ゴーレムクラッシャー」なる新称号まで取得してました。
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ゴーレムクラッシャー(実績称号)
ゴーレムを一撃のもとに粉砕せしめし者が獲得する称号。
撃破したゴーレム素材の武具に対する攻撃に5%の粉砕確率を取得
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いやはや。めちゃくちゃな効果ですがミスリル系の武具なんて滅多に出てこないんだからいいような気がしますけど、もしこの世界が物語なら作者が何をさせたいのかちょっと問い詰めたい気分です。
「しっかし面白い称号を手にいれちゃったものよね。こんなの誰でももってそうな気がするけど」
「ん~、倒すことではなくわざわざ『粉砕』と明記してるところがポイントかもしれません」
「どうして?」
なにやら思い当たらないらしい。姉様からすれば大差ないのかもしれないがこういった微妙なところは厳密に判断されてるんだろう。
「たぶんですけど、フィリー姉様の戦法として、一撃で倒すことはできても粉砕という条件を満たすことができなかったんじゃないかと思うんですよ」
「え~、呪札でばし~っとかよくやったわよ?」
強力な一撃での一転突破。ソロ攻略なら包囲されることだけは避けたいだろうから一撃必殺に傾倒するのもわかる。ただその方法がこの場合に合致してないだけだろう。
「ばし~じゃなくてガシャ~んって感じですかね? もちょっと具体的にいうと粉々になるような感じで。姉様だとそこまで全力でやっちゃうとチリも残らないんじゃないですか?」
「そうねコアも消えちゃうから適当に手加減してたわね」
ミスリルゴーレムのコアは幸いなことに手元に残っている。ザコのコアと比べると大きさはあまり変わらないのに込められている魔力の量が段違いなのが手に取るとよくわかる。熱くも冷たくも眩しくもないのだが確かに「重い」気がする。気がするだけで実際には変わらないんだろうけどね。
「姉様の呪札でのお膳立てがあったからこその一撃粉砕です。他の人にこの称号を取らせるのは難しくないかもしれませんが、姉様が単独でこれを成すのはかなり難しいんじゃないでしょうか?」
「まぁそうよね、熱して、冷まして、全身に衝撃を通すっていう手順が必要な時点で3手。この手順を1つに纏めることで取得できなくないかもしれないけど、複合魔法が1手としてカウントされるかは微妙なところね」
複数効果を得る攻撃手段、たとえば範囲攻撃のような魔法は多段攻撃、つまり一手としてカウントされないだろうということだ。この辺の判断がどういった風に処理されているのか微妙に問いただしたい来はするけど。
「ま、どうにもならないならどうにもならないなりにどうにかすればいいわ。それより今日は25階層を目指すわよ」
「だ、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫♪ あたし一人だって来れたんだから問題ないでしょ」
と非常に楽観視しているフィリー姉様でした。
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「ふぅ、案外楽勝ね」
「楽勝っていうか圧勝ですね」
呪札の高品質化によって威力が上昇、ついでにMPの消費も抑えられるようになり、なおかつMP回復手段(ポーション等)を気楽に得られるようになったせいもあってか、フィリー姉様のダンジョン突破力は2段階くらい上昇したそうだ。
どれくらいかというと、20階層のゲートキーパー戦のスキップが許可されちゃうくらいに。
『君らの10階層戦の記録を見る限り、ここでの戦闘は不要と判断したよ。その代わり得られるものもないがそこは勘弁して。それじゃ引き続き頑張ってね』
10階のミスリルゴーレムは明らかに規格外だったという点も加味してのことだろうとは姉様の言葉だが、確かにあの階層の守護者としては異常な能力持ちだったと思う。
戦わないで済むならそれでいいってことでそのまま進んで現在27階層にいたりする。
「流石にここまで来るとそこそこ手ごわくなるわね。ユウもまたレベル上がりそうじゃない?」
「はい。ちょうど今レベルが上がりました」
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ユウ・ユキヅキ 性別:女 レベル:15 年齢:12
HP: 140/154 MP:431/603
STR: 7 CON: 7 DEX:11
INT:13 POW:13 APP:17 LUK:16
称号 :[捨てられたモノ][学生][学生アルバイト][自動修復サンドバッグ][おやつ係(笑)][自己犠牲(笑)][次元踏破者][異邦人][被従魔契約(主人:フィリーオ・フォン・エストン)][ゴーレムクラッシャー]
スキル:[異界語(日本語)][苦痛耐性 Lv1][精神耐性 Lv1][環境適応 Lv1][サバイバル Lv2][裁縫 Lv1][清掃 Lv1][洗濯 Lv1][算術 Lv1][効率向上 Lv1][共通語][魔術の才覚][鑑定][獲得経験増加][レベルアップボーナス増加][支援魔術 Lv1][危機察知 Lv5][緊急回避 Lv2][生活魔術 Lv3][MP回復強化][アイテムボックス Lv3][術具作成 Lv4][調合 Lv3][棒術 Lv3][調理師 Lv1]
ボーナスポイント :45
▼取得可能スキル一覧
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元々スキルでもLvは3を超えるとあがり難くなっていくそうです。期待していたんですが[術具作成]はLv4のままでした。その代わり[調合]がLv3です。なかなかに異常だそうです。ですが危機察知は特異過ぎるあがり方です。常に注意していたせいもあるんでしょう。というかこれのせいでレベルが上がってる気がします。なんとなくですけど。
「普通、レベル5まで届いた者は国家単位での保護対象ね。職人ってレベル自体上がりにくい傾向があるはずなんだけど、ユウの場合はレアスキルのおかげもあってか中々にスゴいことになってるわね」
保護と言っても申請した場合受理されやすいだけで、別に申請せずに普通の店を営んでいる人はいるそうです。ただし普通の店舗と違って色々優遇されることが多いようで。軍装備の発注等を優遇的に受けられたりとかうんぬん。
他の職人のやっかみが無いわけではないけど、Lvという明確な基準があるおかげでそこまで深刻にはならないことが多いとらしい。元々職人というのは腕が全てってところもあるので、腕がいいなら基本的には許されるのだ。文句のあるヤツはもっと腕を上げて来いってことだね。
「あぁ、私はユウを保護申請したりしないわよ? だって私と一緒にいられなくなっちゃうし」
「え?」
「だってそうでしょ? 保護ってことは隔離されることでもあるのよ? 保護されなくても申告した段階で所在が露見するってことなんだから、何かしらの干渉が国から受けるってことだしね。面倒でしょそんなの?」
「め、面倒っていうか、姉様と一緒にいられないのはイヤだなって……」
こっちに来てからフィリー姉様としか生活したことはないけど、元の世界と比較したってここまで親切にしてくれた人は皆無だ。孤児院出だからといってバカにすることもなく、できることをやっただけで褒めてくれるし、危ないと思ったら叱ってくれる。そんな当たり前のことをしてくれるこの人の役に立ちたいと思うのはダメなことでしょうか?
「んまぁ、といっても私もユウのことを長く引きとめられないんだけどね」
「まぁ、そうですね……」
残り時間はだいたい70時間くらい。3日もない。再度呼び出しをかけるにも最低で1週間はかかるはずだというけど、こっちと向こうの時間の流れが違う可能性もあるのでなんとも微妙なところだ。
「まぁこのペースだとちょっと不安ね。まだ余裕があるなら続けて行きたいんだけど……大丈夫?」
少し心配そうに覗き込まれる。実際そこまで疲れているわけでもないし、レベルアップのおかげか体力も充実している感じだ。
「大丈夫です! 流石に追加スキルを選ぶような余裕はありませんけど、このまま姉様のフォローを続けるくらい平気ですよ! それより消耗品は大丈夫ですか? 先ほどは連戦でしたからそろそろ厳しくなって来たんじゃ……」
正直なところレベルが全く足りてない気はするけど、フォローとバックアップが中心なら問題ないと思う。ミスリルゴーレム撃破時にレベルが5上がり、今日も2程上がっているので実質倍加してる訳だけど、30・40階層以降なら少なくともレベル20は欲しいと思う。そうすればもっと高品位のアイテムを安定的に生産可能だろう。
だから早めに40階層まで到達し、一日もしくは半日ほどレベルアップの為に費やした後に50階層の守護者に挑もうというのが姉様の作戦だ。
30階層の守護者次第だとは思うけど、そこまで無謀な作戦とは思えない。そうでなくても僕のレベルアップは異常な速度らしいし、スキル取得もかなり優遇されているわけだしね。
「へぇ、それがあんたの奴隷……いや、パートナーって訳ね。商人が金を使うのは悪い手じゃないと思うけど、まぁよくもそんな都合のいい奴隷なんか見つかったものよね」
「……フィエラ……」
フィリー姉様の向いた方向には金髪の男女と黒髪の男が一人いた。ダンジョン内に突然出てきたと言われても不思議ではないくらい。何しろ僕は先ほどからマップを見ながら行動していたんだ。敵対生物であれ中立であれ、感知できないって段階でかなりおかしい。
「しっかし探し回ってしまいましたわ。こんなところでウロウロしていただなんて、貴方って本当に何を考えているんだか……」
フィエラと言われた金髪さんがなにやら芝居がかったポーズで語り始めた。
「本当にあと20階層も進めると信じているのかしら? もはや私との約束を反故にするおつもりじゃぁなくて?」
「約束? あぁ、一方的に取り決めた事柄というのなら確かに約束なのでしょうね」
「一方的とは心外ね、あの時も周りに誰もいなかったわけではなくてよ? 申し立てならその時にすべきでしょう?」
「その誰もってのに貴方の取り巻きを含むなら論外よ。そもそも契約を伴う約束は資格のある立会人が同席の上で行うべきことでしょう」
「この私にその資格が無いとでも?」
「当事者は立会人になれないというのは常識以前でしょ」
「……」
「……」
「……ま、いいわ。今日は貴方に良い話をしにきたのよ。聞きたくないかしら?」
ここぞとばかり良い(悪い)笑顔をふりまくフィエラさん。明らかに上位に立っているという余裕だろうか、
正反対にフィリー姉様の機嫌は最悪だ。たぶん相手のほうがレベルも技量も、人数も上なので逃げようが無いって考えなんだと思う。主に僕がいるせいなんだけど。
「期間内に50階層までたどり着ければあとはなんとかなるのでしょ?」
余裕の笑みを絶やさず彼女は続けた。
「いいわ、連れてってあげる。50階層まで」
「え?」
一瞬、何を言っているのかわからない。けど、彼女はフィリー姉様となにかしら賭け事をしていて、フィリー姉様は50階層を突破しないといけない、ってことはこの人が手助けをするメリットって何なんだ?
「というか50階層にも到達できずに終わりとか興ざめにも程があるのよ。どうせなら50階層に挑んだけどボロボロにやられちゃいました~って方が笑えるわ。私的にね」
どうやら手助けというよりとどめってことのようだ。かなり意地悪な人だと認定しよう。
しばらく考え込んでいたようだが、ようやくフィリー姉様が重い口を開く。
「……どういう魂胆かぁ置いといて、50階層まで連れてってもらえるってのは正直助かるわ。結構ぎりぎりだったしね」
「そう? じゃぁ決まりね。ラースコ! 彼女を転移して!」
「はいよお嬢様」
影に潜むように後ろに下がっていた男、ラースコと呼ばれた男が前に出てきた。
なにやら呪文のようなものを唱え始めると、それに呼応するように地面に直径1mほどの魔方陣のような模様が浮かび上がってきた。これが本物の魔法か……
「まぁ私も鬼じゃないからいきなりボス部屋にってことはしないわ。その手前のところね。じゃぁがんばりなさい」
にっこりと手を振るフィエラさん。
魔方陣からもれ広がる青い光がフィリー姉様を包み込んで行き、次第にその光を強めていく。
あまりに幻想的な光景にしばらく呆然としてしまったが、今頃になって重要なことを思い返した。
「じゃ、後はがんばってね。……ひとりで♪」
そうパチリと指を鳴らすと、先ほどまで通路を染め上げていた青い光が収束し、きれいさっぱり消え去った。
フィリー姉様もご一緒に。
何か、ブチりと音がするようになそんな感覚が頭を通り過ぎ、気が付くと通路にへたり込んでいる僕がいた。
「……フィリオ様、あの小娘はいかにしましょう?」
「え? いいわよあんな奴隷。連れて帰る価値もない。そのまましばらくすれば勝手に帰るか……さもなくば死ぬでしょ」
「いや、そりゃいくらなんでももったいないっしょ? いらんのだったらもらってってもいいですよね?」
「ラースコ……こんなのが趣味なの?」
「いえいえ、でもこの手の子供に目が無い御仁もおりますから、以外にいい値で売れますんよ。逃亡奴隷扱いにしてさっさと売り飛ばせば問題ないでしょ」
「それって立派な犯罪ってわかってるわよね?」
「ええ、だから『逃亡した』んですよ。僕らはその娘が逃げた方角をどっかの金持ちに漏らすだけですよ」
「ふぅん。逃亡しただけね」
唖然として地面に座り込んでいると突然目の前が真っ暗になった。
何が起こったのかを把握する暇もなく、僕は何か大きな力で掴み取られたような感覚くらいしか認識できないでいたのだ。




