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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第一章 僕の学園生活?
17/45

17.ネタ晴らしと種明かし。といっても結構簡単なんだけどね。

「さぁって、どうしてあんなことしたの?」


 せっかくなのでミスリルゴーレムの欠片を回収中、物凄い威圧感を感じて振り返ると姉様が声をかけてきていた。

 あぁ、姉様の笑顔がとても怖い。どうしてさっきのゴーレムより壊そうなんだろう……


「どどど、どうしてって言われてもですね……」


 僕の棒術Lv1であのゴーレムの攻撃を受け止めるのは正直不可能だろう。なので細工はしていた。材料は途中階にいたザコモンスターの残すアレ。『魔道制御コア』である。これは結界の材料になる。

 そもそも結界というのは防御手段の一つで、設置することで敵の侵入をある程度防いでくれる魔道具の一つだ。何かあると困るなぁと思って、フィリー姉様の許可を得たあと、スキルを使って『下位結界石』を作っていた。


 複数の同時使用で結界を張る道具ではあるが、単体使用でも縦横2m四方の不可視の壁を作るくらいはできる。しかし強度は普通の盾と大して変わらないってことは承知していたうえでの多重起動だ。所詮は下位なので大した防御力は期待できないけど、術者の詠唱無く発動可能な防御壁として大いに役立ってくれた。用意した16枚全てがうまくいったわけではないけど、少なくとも一大事に至っていないのだから大成功といっていいだろう。


「……止められたから良かったようなものよ。万が一にも受け止めきれなかったらどうするつもりだったの? あんな金属の塊よ? どう考えたってぺちゃんこじゃないのよ!」


「いやほら、ちゃんと実験してましたし? まぁなんとかなるかなぁ~って、てへへ」


 壁に設置して水平に結界を張って「ガラステーブル」っぽくして遊んでたら呆れられた。エネルギー体というかガラスぽいだけで触ってもダメージとか感電とか無いから利用できないかな~ってことでやってみたんだ。ほら、ある程度の高さのテーブルって便利でいいじゃん?


「……もう、てへへじゃないわよ。次にあんなことしたら間違いなく怒るからね」


 既に怒られている気がするけど気にしたらまた怒るんだろうなぁ(汗)

 とにもかくにも最初のゲートキーパーを無事突破できたんだし、よかったよかった。



「そ、それにしても金属の熱膨張とかよくご存知でしたね。普通あんなうまくいかないんですよ?」


 ガラスのコップ等でよく言われることだ。熱した後に急に冷やすと急激な膨張と縮小をくりかえす。その変化に耐えられなくてヒビが入ったり最悪割れたりすることがある。多くの金属もそういった性質を持ってはいるが、金属は一応柔軟性もあるのでガラスほど脆くならないというだけだ。


「あぁ、昔に鍛冶屋のおっちゃんに聞いたのよ。熱した後冷やすと金属は脆くなるって。ミスリルだって金属だものできるかなぁって思ったから実行しただけよ」


 かなり思いつきだけで行動する人なのかもしれない。いや、実際に成果を得てるんだから問題ないんだろうけど、魔術を扱う人としてどうなんだろ? ああいうのってちゃんとした理論を元に行使するもんだと思ってたよ。


「とりあえずこれで『10階のゲートキーパーはユウが倒した』ってことになるわね。いやぁレベルアップ楽しみね♪」


 経験値取得はどうなってるんだろ。一応パーティー組んでるんだしみんなで分け合う形なんじゃないのかな。

 後で確認してみなきゃ。



----------



 結局今日はキリのいいところということで15階の安全エリアまでやってきた。ここには学生探索者が5人ほど休憩中だった。


「あれ? フィリーさんがなんてこんなところに?」

「確かソロで25階までは進んでたわよね?」

「いや知らんし」

「なんにせよ珍しいよな。ソロ専の癖にメンバー連れてるとか」

「っていうかあの子可愛くない? あんな子いたっけ?」

「姉妹ってことはなさそうだけど、もしかすると新入生かな~ いやはや災難だね」

「今からこっちに引き抜かない? フィリーと一緒とか可愛そうすぎるっしょ」


 彼らの会話を横目にフィリー姉様はポータルを起動。そのまま入り口へと戻ってしまった。

 入り口に戻ってからも何組かの学生達とすれ違い、そのたびにひそひそとした噂話が聞こえてくる。僕の登録の時は昼間ということもあってか生徒の誰かとすれ違うってこともなかったんだけど、みんな姉様のことをどんな風に思ってるんだろう? あんなに優しいのにね。


 無言のまま廊下を抜け学園の外に出ると既に夕方になっていた。こちらの世界も夕日は赤いんだなと妙なことを考えてたら、姉様が大きく息を吐き出し終えた後で言葉を続けた。


「ごめんなさいね、妙な気分にさせちゃって」

「え? 僕何かいけないことしました?」

「違うわ、皆わたしのことを見て何か言っていたでしょ? 色々変な噂が立ってからああいう扱いなのよ」


 いわく、金で単位を買っただの、一部の職員の弱みを握って好き勝手しているだの、挙句の果てには男性教員をたらしこんで自分に有利に働きかけているだの。入学当初から成績優秀、しかし商人の娘=平民として見られていたために「平民が目立ちやがって許さねぇ!」とばかりに色々目を付けられてしまったそうだ。

 使い手が希少な呪札魔術を使いこなすこともマイナスに働いてしまったらしい。準備さえしておけば無詠唱の連射のようなことができてしまうので、学生間の模擬戦でもかなりの成績を上げてしまったらしい。叩きのめした相手にはいわゆる伯爵のご子息というのもちょっとまずい。


 学園はその建前として「学内において俗世の身分は考慮しない」というのがあるんだけど、あるんだけどそれでも無視できるようなものではない。そのように育てられているのだがら貴族に至っては普通の振る舞いとして高圧的に出ることが多くなる。そして貴族は血筋として優遇されていて、結果として優秀なものが多くでてしまうシステムなんだ。ほとんど張子の虎に近くみたいなもんなんだけど、スキルがあるので100%嘘というわけでもないのがやっかいだったり。


 そんなスキルで促成栽培されたようなお飾り貴族を、文字通り実力で吹き飛ばしてしまったおかげで学園内の貴族派から睨まれてしまったそうなんで。なんだ別に何も悪くないんじゃないか。


「どっちかってぇと女に負けた方が許せなかったみたいね。『私が負ける訳が無い! こいつが何か不正をしていたに決まっている!』とかわめき散らかすアホまでいたからね。正直もうこいつらとかかわるのはやめようと思ったわけよ」


 商人の子として最低限の礼儀とか、貴族とのパイプを持つことは重要な意味があるはず。なのに入学早々から貴族との関わりを諦めるくらいには面倒ごとに突っ込んでいたんじゃないかな。


「私もバカだったから、別に一人でもどうにでもできるわってソロ攻略を始めてみたけど、ある程度はなんとかなったけどやっぱりそれ以上っていうのは正直難しかったわけね」


 色々思うところがあったんだと思う。学生はほとんど敵だらけ、職員に一部協力的な人がいてくれるおかげで学業の面では問題化することもなかったけど、流石にダンジョン研修ではどうなるかわからないから僕を呼び出すという奇作を打つことになったんだろう。もしかして実際にダンジョン内で何かあったからかもしれない。


「まぁ今更どうでもいいわよね。今はユウがいるんだし、戦闘面ではまったく期待していなかったけど案外便利ってのもわかったし?」


「その、疑問系で考えられても困るんですけど……」


「あ~今日は何かオイシイもの食べたいわね~、今日は何を作ってくれるの?」


「はいはい。えっとお肉がいいんですよね? ん~ちょっと違うかもしれないけど、僕のオススメがあるのでそれに挑戦しようと思います」


「あら? それは楽しみね。早速帰りましょう♪」


「まってくださいフィリー姉様! まずお買い物に行かないとっ!」


 途中何か凄いごまかされたような気がするけど、姉様が微笑んでくれるんなら別にいいかなぁとか思うのは思考停止っていうんだろうか?



----------



「だから洗えますって! 一人でできますからっ!」


「え~、ユウって男の子だったんでしょ? 体の洗い方も知らないとか意味わかんないんだから~」


 食事シーン? いやなんか知らないうちにお風呂に突っ込まれました。

「汗臭いとか意味わかんない! ダンジョンから戻ったらとにかくお風呂!」

 ということなので、自分は後でいいと言っているのですが、なんだか妙なテンションの姉様によって現在進行形で泡だらけです。


 姉様の手にあるのは、スポンジというか極細繊維の集合体というか、なんだかそんな感じのひょうたん形をしたものに、こすると泡の出る石鹸水のようなものをつけているものです。石鹸というか柑橘系の果物っぽい匂いがしているのが気になります。こんな匂いを撒き散らしてダンジョン内で平気なんでしょうか?


「匂い? そんなの『消臭』で消すに決まってるじゃない」


 そりゃそうですね、っていやちょっとくづぐったいのでいやその、……あのっ!


「ほらほらほらっ、ちゃんと手を上げてっ、ってちゃんと磨けば光るんだから手を抜いちゃだめよっ」


 ひ~っ!


「も~そんなぷるぷるさせちゃ荒いにくいでしょっ! もういいから動かないのっ!」


 む、無理ですそんなのっ く、くすぐったくってっ が、がまんがっ


「そんな顔してるともっといじめちゃうわよ~?」


 ひ~っ!



----------



「ふふ~ん、なんか羨ましいくらいにツヤツヤよね。髪質もいいし。どうして伸ばさないの?」


 嵐が過ぎました。何のとか効かないでください。


「やっぱ伸ばしたほうがいいわよ~、色々髪型で遊べるし。あぁショートも似合うから安心してね? でも長いほうが女の子っぽい髪型になると思うし」


 今は髪の毛を弄り回されているだけなので体にかかる変な感触も無いのが助かります。というかこのお屋敷ってお風呂あるんですよね。弄ばれるような扱いに思わずぞんざいな扱いでしたがとても気持ちがいいので今は許そうって気分になれます。


「ん~。といっても髪の毛をボーナスポイントで伸ばすってのももったいない話よね。便利だけどいつかは伸びるんだし。そんじゃ主人からの命令ね? 今後私が許可する長さになるまで髪を切らないこと」

「……ん~お姉様がそ~おっしゃるんでしたら~……」


 やはりお風呂は心のオアシス。命の洗濯なのですね。なんだか色々許せる気がします。ここが施設ならそろそろ追い出されるころあいですが、今日はそんなことをいうイヤな人もいませんし、のんびり入っていられるお風呂は本当にすばらしいのです。


「んじゃそうね。とりあえず肩にかかるくらいまでがんばりましょうか。今のユウくらいならそうね、2・3年で届きそう、かな? ちゃんと手入れするのよ~」


「……はい~、がんばりましゅ~……」


 もともと水浴びでもいいか程度にしか考えてませんでしたが、お風呂がある生活というのは本当にすばらしいですね。こちらの世界で広めてくれていた人にいくら感謝してもしきれません。


「うん! いやぁユウが女の子っぽさに目覚めてくれてよかったわぁ~」


「え?」


「約束だからね?」


「いやその、え?」


「え?じゃないわよ。今更切りたいとか言わないでしょうね? というかダメよ伸ばさなきゃ。ん~やっぱりすぐ伸ばそうかしら。伸髪薬って手に入り難いのよね~。ユウに作ってもらうって手もあるけど、あれ無駄に難易度高いからちょっと難しそうよね……」


「えぇ!?」


「……うん、作ってもらいましょう。早速レシピとか調べないとね。ユウはスキルのレベル上げね。がんばりましょう♪」


「……え?」


 いや、僕どうすりゃいいんですか?



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