アメリカンファミリーザアタック
アメリカのニューヨークに着いた。
空港に着くと、早速めぐみと勉は、空港近くの最寄り駅へと向かった。
アメリカの広大な都市と広々とした景色を見てめぐみは、驚きと興奮に満ちた様子になっていた。
「凄い!ここがアメリカか!」
めぐみは、目を見開いて驚愕するように声を上げた。
しかし、勉は、道行く人達が食べる姿を真顔で見ていた。
「あんな物食べて体壊さないのかな」
勉が心配そうに言った。
「おじいちゃん、早く行くよ」
めぐみが急かすように言った。
「ああ。分かっとる」
勉が頷いて言った。
「もう、おじいちゃん、飛行機みたいな事しないでね」
めぐみが勉を睨み付けて強い口調で厳しそうに言った。
「は?何の事だ?」
勉が首を傾げて聞いた。
「機内食で野菜入れろとか。もう恥ずかしかったのよ!」
めぐみが腹立しそうに声を荒げて言った。
「何で?野菜は、健康に良いから言っただけだろうが」
勉が真顔で素っ頓狂な声を出して言った。
「だけど、もうやめて。アメリカに来てそんな事絶対にしないでね」
めぐみが勉を睨み付けて強く言い聞かせるように言った。
「すまん…。野菜食べないと。長生きしたいからな。健康に良いからな。キャベツと人参と大根食べないと。キャベツと人参と大根…」
勉は、小さく謝って、ブツブツと独り言を言って、めぐみと一緒に最寄り駅へと向かった。
最寄り駅に行って、電車に乗り、四駅目で降りて、父の住む住居へと向かった。
父の住む住居は、駅から数十分の所にあった。
会社の借家の様で煉瓦造りの平屋の家だった。
閑静な住宅街の中にある家だった。
周りも平屋の家が多かった。
辺りは、静かで長閑な街並みでビルもあまり立ち並んでいなく、林が所々生い茂っていて、自然も感じられる街だった。
めぐみが父の部屋のベルを鳴らした。
父が玄関の扉から出てきた。
父は、四十代半ばでアメリカに住む初めてから日本にいた時よりもやや太っていた。
お腹周りも出ていた。
「めぐみ、久しぶりだな」
父が笑顔で手を振って言った。
「お父さん、ただいま」
めぐみが手を振って父に笑顔で言った。
「やあ、英也君」
勉が父に笑顔で手を振って言った。
英也は、父の名前だ。
「あ、お義父さん」
父が畏まった様子で勉に深々と頭を下げて挨拶をした。
「元気か?仕事はどうだ?」
勉が心配そうに聞いた。
「仕事ですか?順調です」
父が笑顔で張りのある声で言った。
「そうか。それは、良かったよ」
「はい。お義父さんも今日はわざわざ来て下さりありがとうございます。妻は、元気ですか?」
「ああ、娘か?元気だぞ。うちの娘何か英也君には、もったいないくらいだ。英也君がいないとうちの娘何か、一人では何も出来ないからな。娘が今あるのは、英也君のお陰だからな。ありがとう」
勉が父に深々と頭を下げてお礼を言った。
「いえ、いえ…。そんな…」
父が照れ臭そうに首を横に振って、言った。
「それより、お父さん、お腹空いたけど、お昼ご飯食べたいけど何かある?」
めぐみが聞いた。
「ないけど、何頼む。出前取るけど何食べたい?」
父は、めぐみと勉を家の中に入れて聞いた。
めぐみは、家のリビングのソファにどっかりと座った。
「あのさ、ピザ食べたい!ハンバーガも食べたい!本場アメリカのピザとハンバーガ食べたい!」
めぐみが身を乗り出して嬉しそうに言った。
「よし、ピザ頼もうかな。あの、ブラックザモンスターのピザ屋ならハンバーガもあるからハンバーガも頼もうか。久しぶりに俺もピザ食べたいし」
父が嬉しそうに言って、スマホで取り出して、出前を取ろうとした。
すると、慌てて、勉が父の目の前に駆け寄った。
「ちょっと待て!」
勉が父を睨み付けて声を荒げた。
「どうしたの?おじいちゃん?」
めぐみが驚いた様子で目を見開いて首を傾げて聞いた。
「そんな物食べたら油まみれだ!体に悪い!」
勉が半狂乱な様子で声を荒げて叫んだ。
めぐみも父も勉の突然の鬼のような変貌で顔を引き攣らせて強張っていた。
「あの、野菜あるか!」
勉が父の方をギロリと睨み付けて押し殺した声で聞いた。
「はい…あります…!」
父が慌てた様子で早口で言った。
「早く持って来てくれますかな!」
勉が慌ただしそうに声を荒げて言った。
「はい!了解しました!」
父が身震いして、声を振るわせて勉に従うように言った。
父は、冷蔵庫から野菜を片端から取り出した。
キャベツ、ピーマン、人参、ジャガイモを出した。
「魚はありますかな!」
勉が怒り混じりの声で聞いた。
「…魚は…、ツナ缶なら!」
父が台所の棚から缶詰を取り出して言った。
「それで良いです!」
勉は、嬉しそうに声を上げて、ツナ缶を開けた。
そして、キャベツを千切りに切って、ピーマンを切って、人参を切って、ジャガイモを切って、フライパンで炒めた。
そして、塩を軽くまぶして、皿の上に乗せた。
そして、ツナ缶を開けて、皿の上に添えた。
「完成だ」
勉が満面の笑みを浮かべて、テーブルの上にキャベツとニンジンとジャガイモとピーマンを切った野菜の炒め物とツナ缶を添えた皿をテーブルの上に置いた。
父とめぐみは、困惑した様子で見ていた。
「食べるの?」
めぐみは、勉が作った皿の上の料理を凝視して聞いた。
「ああ、そうだ。食べるぞ」
勉が笑顔で頷いて言った。
めぐみは、腕を組んで考え込んだ。
どうしよう…。こんな野菜ばかり食べても満足にならないのに…。
めぐみは、皿の上に乗った勉の作った豪快な料理に戸惑っていた。
父も戸惑っていた。
口に入れても害はないのは、確かだが食べる気持ちが湧いてこない。
健康度百パーセントなのは、間違いないが何故か覇気に圧倒される様な感覚だ。
「食べるぞ」
勉は、自分が作った料理を美味しそうにフォークとナイフで切り分けて食べていった。
めぐみと父は、勉が食べる姿をちらりと見ながらゆっくりと野菜を食べていった。
不味くはないが、野菜を炒めて塩味を効かしただけの味だった。
ツナ缶とも合うようで合わないような味付けになっており、どことなく微妙な味だった。
「やっぱり健康が一番!野菜が一番!魚は二番!ガハハハ!」
勉は、豪快に笑って炒めた野菜とツナ缶を一緒に食べていた。
めぐみと父は、苦笑いしながらその様子を見ていた。
食事を終えると、めぐみと父と勉は、家を出て、アメリカの街並みを散歩していた。
「アメリカは、広々とした街だね」
めぐみは、周りの家々を見渡したながら言った。
「うん。そうだね」
父が微笑んで言った。
「お父さん、アメリカ生活慣れた?」
めぐみが聞いた。
「ああ。もうすっかり慣れたよ」
「アメリカは、治安良い?」
めぐみが心配そうに聞いた。
「まあ、日本みたいに治安は良くないけど、悪くはないよ」
「そう。それは良かった。お父さんも気を付けてね」
「ありがとう」
父が頷いた。
「あんな物食べて大丈夫かいな…」
勉が路上でドーナツと炭酸飲料を食べる中学生くらいの金髪の白人の少年二人を見て言った。
勉は、立ち止まり、少年達を心配そうに見ていた。
「…、おじいちゃんどうしたの?」
めぐみが立ち止まってドーナツを食べる少年達を見て聞いた。
「あんな砂糖だらけの食べ物食べたら体に毒だ」
勉がドーナツを食べる少年達を見て敵意を向けるような眼差しを向けて言った。
「うん?」
父が立ち止まって少年達を見た。
すると、勉は、少年達に駆け寄った。
「おじいちゃん!」
めぐみは、慌てて勉を追いかけた。
父も慌てて勉を追いかけた。
「こら!そんな物食べるな!そんな物食べたら体に毒だ!ドーナツ何て砂糖だらけの悪い食べ物だぞ!こら!聞いているのか!」
勉が声を荒げて少年達を叱りつけた。
しかし、勉が英語は、話せず日本語しか話す事が出来ないので白人の少年達は、怪訝そうに見ていた。
「もう!おじいちゃん!」
めぐみが勉の肩に手を置いて慌てて呼び止めた。
「こら!聞いているのか!そんな体に悪い食べ物捨てないさい!野菜を食べなさい!」
勉は、めぐみの事など気に留めず少年達に叱りつけていた。
すると、少年達は、呆れ顔で深いため息を吐いて、背を向けて勉から離れていた。
当然ながら…笑
父は、苦笑いした様子で勉を見ていた。
「もう、おじいちゃんここはアメリカよ!変な事しないで!」
めぐみが呆れるように声を上げた。
「何で?体に悪いから注意しただけだろ?」
勉が怪訝そうに言った。
「だけど、おじいちゃんの言っている事は、日本語だから絶対に通じないから」
「日本語も英語もフランス語もアフリカ語も中国語も宇宙語も通じるわい!ガハハハ!」
勉は、冗談交じりに言って高笑いして、歩き始めた。
「ちょっと!おじいちゃん!」
めぐみが慌てて勉の後を追った。
父も慌てて勉の後を追った。
三人は、近くの公園に立ち寄った。
公園のベンチに座って一休みした。
「アメリカ生活は、慣れたかい?」
勉が父の方を見て空を見上げて嬉しそうに聞いた。
「はい。もう慣れましたよ」
父が頷いて言った。
「そうかい。アメリカは、大変だろ。色々。何かと」
「まあ、そうですね。日本とは、違い経済的にも違いますから」
「まあ、無理しなさんな。野菜食べている?」
勉が心配そうに聞いた。
「へ?」
父が首を傾げて聞いた。
「野菜食べている?毎日」
勉が真顔になって聞き返した。
「野菜…、まあ、時々…」
「時々…。普段は、何食べているの?
勉の表情が段々と強張ってきた。
やたらと怒りの色が見えた表情になってきた。
「まあ、シチューとかハンバーグとか…まあ、肉料理系とか…パンとか…」
父が、必死に思考して、言葉を振り絞るように出していた。
「肉…!もっと野菜を食べないといけませんよ!パンは、バター塗っていますか?」
勉がやたら怒り混じりに聞いた。
「バターですか…?塗っています…けど…?」
父が顔を歪めて言いづらそうにしながら声を振り絞って言った。
「ダメです!バターは、体に毒です!何も塗らなくても良いです!もし、味付けしたいなら蜂蜜を少し塗るとかジャムを少し塗るだけで良いです!バターは、体に毒です!」
勉が説教がましく激しい口調で言った。
「…はあ…、それは…すいません…」
父が苦笑いして、肩を落として、気まずそうに謝った。
「あなたが死んでしまったらめぐみが悲しみますからね!めぐみは、私の可愛い孫娘ですからね。その可愛い孫娘の大切な父が死んでしまったらめぐみが悲しみますから!お願いしますね!」
勉が激しく言い付けるように父に言った。
「…はい…」
父が申し訳ない様子で小さく頷いた。
「もう、おじいちゃん!やめて!ギャーギャーうるさく言わないで!」
めぐみが鬱陶しそうに金切り声を上げて叫んだ。
「…ああ、すまん…悪かったな…」
勉が苦笑いしてめぐみに頭を下げて謝った。
「おじいちゃんは、食事の時にうるさ過ぎるわ!別に肉を食べて何が悪いの!」
めぐみが腹立しそうに声を上げて強い口調で聞いた。
「それは、肉は油の塊だからな。油は、体に毒だ…。良いか。砂糖、塩…麻薬…。日本の三大白悪魔だぞ」
勉が真顔になって言った。
「何それ?」
めぐみが首を傾げて聞いた。
「砂糖は、体に毒…、塩は、取り過ぎたら毒…。麻薬は、絶対に体に入れたらダメ。塩は、少量なら大丈夫。これがわしの鉄則!ガハハハ!」
勉が見解深く言って、高笑いした。
勉の笑い声が公園に響き渡った。
その様子をめぐみと父が怪訝そうに見ていた。
すると、公園で清涼飲料水を飲む三人の幼児がいた。
黒人の幼児一人と白人の幼児二人だった。
その側で保護者らしき女性が微笑ましそうに見守っていた。
すると、勉は、幼児が清涼飲料水を飲む幼児に歩み寄った。
めぐみと父は、目を見開いて、勉の危ない行動をしそうな気配を感じ取り、胸騒ぎした。
「こら!そんな物飲んじゃいけない!」
勉は、幼児が飲むペットボトルを取り上げた。
保護者達は、勉が取り上げる姿を見て驚いて目を見開いて見た。
勉は、ペットボトルを逆さにして中身の液体を捨てた。
幼児は、呆然とした様子で勉を見ていた。
保護者達は、鬼の形相をして勉を睨み付けた。
「もうおじいちゃん!」
めぐみが怒りと呆れが混じり合った雰囲気を出して、勉に駆け寄った。
父は、英語で謝罪して、保護者に札束を一枚ずつ渡して、勉とめぐみと一緒に公園を後にした。
めぐみと父と勉は、家に帰宅した。
「もうおじいちゃん!良い加減にして!」
めぐみが声を荒げて怒った。
「へ?」
勉が素っ頓狂な顔をして聞いた。
「あんな事絶対に止めて!変な事件に巻き込まれたどうするの!」
めぐみが半狂乱な様子をして金切り声で叫んだ。
父は、顔を歪めて辛そうにめぐみと勉を見ていた。
「わしは、清涼飲料水飲んでいるから注意しただけだけど」
勉がめぐみに慌てて言い繕った。
「もう、アメリカは怖い国なのよ!殺人事件も多いし銃社会なのよ!もし目をつけられたら死ぬのよ!も、おじいちゃんの変な行動のせいで私やお父さんが死んだら責任取れるの!もうおじいちゃん何かアメリカに連れて来なかったから良かった!」
そう言うと、めぐみは、寝室に閉じこもった。
「え!めぐみ!」
勉は目を見開いて困惑した様子で声を上げた。
「すいません…、お義父さん…。めぐみも別にお義父さんの事嫌いじゃないので…」
「いやいや、すいません…。わしの方こそ悪かったよ…。余計な事言い過ぎてすまなかった…」
勉が苦笑いして頭を下げて謝った。
「…、僕もお義父さんの言う通りに野菜食べます…。肉ばかり食べていましたから…。ここに来てから…」
父が苦笑いして言った。
「ハハハハハハ!そうですか!」
勉が高笑いして言った。
「妻の手料理食べたいな…」
父が寂しそうに言った。
「…、そうですか…。いつ頃日本に帰れますか?」
勉が心配そうに聞いた。
「まだまだですかね…」
父が苦笑いして言った。
「そうですか…。娘も英也君の事いつも心配していますよ」
「そうですか。良かったです」
父が笑顔で頷いた。
「息子が癌で苦しむ姿を思い出すともうちょっと何かしてあげたかったと思うのですよ。タバコと酒ばかりしていましたから…。わしが何も言わず…ほったらかしにしてしまったからね…めぐみには、病気で苦しんでいる姿になって欲しくない…。だから野菜食べて欲しいのですよ…長生きして欲しいのですよ…」
勉が少し悲しそうな様子で声を震わせて言った。
「良いですよ。お義父さんの優しい気持ちで僕らも助かっていますから」
父が微笑んで頷いた。
勉も微笑んで頷いた。
その様子をめぐみは、寝室から聞いていた。
めぐみは、勉の思いを聞いて涙ぐんでいた。
夜、めぐみは、寝室から出て来て、家の庭に出た。
父が庭でバーベキューの準備を始めていた。
祖父も準備を手伝っていた。
父は、白人の高校生くらいの金髪の少女と楽しそうに英語で話しをしていた、
小学生くらいの金髪のメガネを掛けた少年も少女と父が話す様子を微笑ましそうに見ていた。
「お父さん誰?」
めぐみが聞いた。
「え?ジャクソンさん。隣の家の」
父が少女と少年を見て言った。
少年と少女が英語でめぐみに挨拶をして自己紹介をした。
少年の名前は、ジェームズ。少女の名前は、シャーロット。
めぐみも英語で自己紹介をした。
ジェームズとシャーロットは、どうやらよく父と住む家の隣の住人の子供でよく食材の交換をしたり、互いの家の庭を協力して清掃したりしていた。
めぐみは、ジェームズとシャーロットと仲良く話しをしていた。
勉は、その様子を呆然とした様子で見ていた。
「あの、この子達とは、知り合いですか?」
勉が父の方をちらりと見て聞いた。
「はい。知り合いです。ジャクソンさんです。隣の家の人でね。よく食材の差し入れとかしてもらっています。ものすごく助かっています。この肉もジャクソンさんから頂いた肉でして今日は、めぐみもお義父さんも来ているから一緒にバーベキューをしようと思いまして」
父が嬉しそうに言った。
「そうですか。どうも」
勉が日本語で挨拶をした。
しかし、ジェームズもシャーロットも日本語を話す事は出来ず、ポカンとした顔をして勉を見ていた。
父がバーベキューの網に肉を焼き始めた。
ジェームズとシャーロットも焼かれた肉を笑顔で見ていた。
「おじいちゃんも肉焼いてね」
めぐみがトングを手に持って言った。
「え?は?」
勉が首を傾げて聞いた。
「肉、焼いて!」
めぐみが声のトーンを上げて言った。
「ああ分かった。いや、肉ばかり焼くなよ。野菜もあるか」
勉が辺りを見渡して言った。
「お義父さん、野菜です」
父は、野菜が入った箱を持って来て言った。
「ありがとう」
勉は、キャベツと人参を網の上に焼いた。
ジェームズとシャーロットも勉が焼く野菜をぼんやりした様子で見ていた。
ジェームズとシャーロットとめぐみは、網の上に焼かれた肉を食べ始めた。
めぐみは、いつのまにかシャーロットとジェームズと楽しそうに仲睦まじく英語で話しをしていた。
勉も孫娘が楽しそうに話す姿を微笑ましそうに見ていた。
「めぐみ、そこの肉焼いてくれるか?」
父がめぐみの持っているトングを見て聞いた。
「了解」
めぐみがトングで肉を焼き始めた。
「あの、君達お父さんとお母さんは?」
勉がシャーロットとジェームズを見て聞いた。
しかし、勉は日本語で聞いているので当然ながらシャーロットもジェームズも返事をせずぼんやりとした顔で見ていた。
「あの…、お義父さん。シャーロットさんとジェームズ君には、お父さんいません。お母さんと三人暮らしです」
父が真顔で言った。
「そうなのか。それは、変な事聞いてすまない…」
勉がシャーロットとジェームズ君に頭を下げて謝った。
しかし、シャーロットとジェームズ君もにやりと笑って首を傾げていた。
「離婚していてね」
父が言った。
「そうなの?」
めぐみが目を目開いて驚いて聞いた。
「うん。お母さんは、家にずっといる」
父がジャクソンさんの家を見て言った。
「何でじゃ?」
勉が首を傾げて聞いた。
「それは…、まあ…、その…」
父が口籠った。
「何で?教えて?」
めぐみが強い口調で聞いた。
「…まあ、その…、ちょっと体調が悪くて家から出られないのさ。すまないね」
父が眉間に皺を寄せて、難しい表情をして言った。
めぐみも勉も意味が分からず首を傾げていた。
「さあ、肉を焼こう」
父に言われて、めぐみは、肉を焼き始めた。
「ほら!ほら!ちゃんと野菜食べる!めぐみも!君達も!肉ばかり食べないで!ベジタブルゴット!ベジタブルゴッド!野菜は、神様!」
勉は、豪快に野菜を焼き始めて、ジェームズとシャーロットに焼かれた野菜を紙皿の上に乗せた。
ジェームズもシャーロットも苦笑いして焼かれた野菜を見ていたが勉の熱い要求に嬉しそうに食べていた。
勉は、ジェームズとシャーロットは、自分が焼いた野菜を食べている姿を嬉しそうに見ていた。
めぐみもその姿を微笑ましそうに見ていた。
翌日父は、仕事に出社した。
めぐみは、近くの図書館や博物館に行っていた。
勉は、家に一人で閉じこもっていた。
何もする事がなく暇だった。
勉は、だらだらした様子でソファに横たわっていた。
仕方なくテレビを付ける事にした。
テレビ画面には、大柄な黒人男性が大きなハンバーガと食べてコーラを飲んでいる姿が映し出されていた。
「あんな物食べるな!体に毒ではないか!」
勉が声を荒げてテレビ画面に映る男性に向かって怒った。
「つまらないテレビしかやってないな…」
勉は、テレビを消して、ソファから起き上がって、台所で昼食の用意を始めた。
勉の今日の昼食は、ジャガイモとキャベツの炒め物とツナ缶だった。
勉は、昼食を作ると、美味しそうに頬張って完食した。
いつのまにか午後になり、勉は、そろそろ夕食の準備をしようと台所に立った。
すると、台所の窓からシャーロットとジェームズが学校から帰ってくる姿が見えた。
二人は、家の扉を開けて中に入った。
「…焼肉のお礼を言おうか…」
勉は、そう言うと、家を出て、ジャクソンさんの家の扉をノックした。
シャーロットが出て来た。
シャーロットが呆然とした様子で勉を見ていた。
「焼肉ありがとう。サンキュー」
勉が笑顔でお礼を言った。
シャーロットは、一瞬困惑した様子だったが笑顔で勉を家に入れてくれた。
家の中に入ると、リビングでは、テレビゲームをするジェームズの姿があった。
すると、どっかりとソファに座る大柄な真ん丸と太った金髪の丸顔の女性がいた。
体重は、百三十キロ前後はあるかのような体型だった。
女性は、勉の方を見ると、怪訝そうな様子で見ていた。
女性は、ドーナツとオレンジジュースを飲んでいた。
女性は、シャーロットとジェームズの母だった。
名前は、エマだった。
父がジャクソン家の母について教えなかったのは母が極度の肥満で動けないからそれを教えるのを躊躇ってしまったからであった。
その様子を見て、勉は、目を吊り上げて鬼の形相を向けた。
「そんな物食べては駄目!絶対に駄目!」
勉は、女性からドーナツを取り上げた。
取り上げたドーナツは、ゴミ箱に捨てた。
エマは、怒り混じりの悲鳴を上げた。
しかし、勉は、気に留める様子もなく、平然としていた。
シャーロットもジェームズも困惑した様子で勉を見ていた。
「野菜食べましょうね!ベジタブル!ベジタブル!」
勉が片言の英語でハキハキとした声で言って、勝手に冷蔵庫を開けて、キャベツとジャガイモとブロッコリーを取り出した。
勉は、野菜とサーモンを取り出して、フライパンの上で焼いた。
そして、塩を少量振りかけた。
皿の上に乗せて、テーブルの上に置いた。
勉は、冷蔵庫の中に入っているお菓子を捨てた。
そして、大量のコーラ缶とソーダ缶も流し台に捨てた。
冷蔵庫の中に入っている砂糖だらけのグミもチョコレートもゴミ箱に捨てた。
その様子を見てシャーロットもジェームズも怒り混じりの悲鳴を上げた。
しかし、勉は、構わず冷蔵庫の甘いお菓子類や清涼飲料水の缶を捨てた。
そして、油やケチャップも捨てた。
シャーロットもジェームズも母も勉の暴走に何も言えず困惑していた。
すると、勉は、ジューサーを発見した。
「よし、野菜ジュース作ってやるか!」
そう言うと、勉は、閃いたように嬉しそうに声を上げて、冷蔵庫から果物があるか探した。
しかし、果物はなかった。
「ちょっと待ってくれ」
勉は、家を出て、直ぐに父の家から冷蔵庫を開けて果物がないか探した。
りんごとオレンジとレモンがあった。
野菜は、ニンジンとキャベツがあった。
勉は、りんごとオレンジとニンジンを持って、ジャクソン宅に戻った。
勉は、早速ジューサーでりんごとオレンジとニンジンを混ぜて、特製のオリジナル野菜ジュースを作った。
少し濃いオレンジ色の野菜ジュースが完成した。
勉は、野菜ジュースをコップに入れて、シャーロットとジェームズと母に渡した。
三人共は、最初野菜ジュースを飲む事に抵抗があったが勉の熱いオーラーに圧倒されてゆっくりと一口飲んだ。
最初は口籠ったが美味しかったのかごくごくと飲み干した。
三人共満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。
「良かった…」
勉は、安堵して頷いた。
ジェームズとシャーロットは、勉が作ったワイルドな野菜料理を見た。
二人は、ジャガイモを一口食べて満足の笑みを浮かべた。ブロッコリーも一口食べて完食していた。キャベツも美味しそうに食べていた。
焼きサーモンの美味しそうに頬張っていた。
勉が作った炒めたジャガイモとキャベツとブロッコリーは、程よく火が通っていてこんがりした食感で食べやすかったのだろうか。
キャベツは、大きく半分にしか切らずそのまま焼いていたし、ジャガイモも半分にしか切っていない。
塩の味付けも程よく効いていて栄養満点だった。
エマも立ち上がって、勉が作った料理を食べた。
咀嚼した時、最初は、少し口元を歪めたが満面の笑みを浮かべて美味しそうに頬張った。
勉は、自分が作ってくれた料理を食べてくれて嬉しそうだった。
「ありがとう。食べてくれて…。また来るね」
勉は、笑顔でジャクソン家に手を振って家を出た。
ジャクソン家も笑顔で手を振って勉を見送った。
帰宅後、勉は、父とめぐみとジャクソン家の事について話した。
「わし、今日は、あのジョンソンさんの家に行ったのよ」
勉が自慢気に話し始めた。
「そうなの?」
めぐみが目を見開いて少し驚いた様子で首を傾げて聞いた。
「ああ。そうだよ。バーベキューのお礼の挨拶だ。野菜料理も振舞って上げたのさ。野菜ジュースも作ってあげた」
勉が嬉しそうに笑顔で言った。
「また余計な事して…」
めぐみが肩を落として、呆れるようにため息を吐いた。
「わしのの料理美味しそうに食べていたわ。野菜ジュースも美味しそうに飲んでいたよ」
「あの、お義父さん、ジャクソンさんの奥さん見たのですか?」
父が気まずい様子で聞いた。
「ああ。見たよ」
「そうですか…」
父が少し口元を歪めて言った。
「あそこのお母さん何であんなに太っているの?」
勉が少し心配そうに父に聞いた。
「まあ、あの…それは分かりませんが…。あの…ジャクソンさんのお母さんは、お金がなくて生活保護受けているのですよ…。娘さんもアルバイトしながら生活費を稼いでいますから。僕も色々と生活費とか大変ですから、ジャクソンさんから食材をいただいて何とか生活出来ていますから。僕もジャクソンさんにお世話になってばかりではいけませんから食材を差し入れしています」
父が真顔で言った。
めぐみは、父の言った事に感慨深そうに聞いていた。
「そうですかい。それならあそこの家族に何かしてあげないといけませんな」
勉がやけに嬉しそうに言った。
「おじいちゃん、また変な事考えないでよ」
めぐみが勉を睨み付けて警戒するように言った。
「分かっているわい。だけど、助けてやるわい!この頑固ジジィが!ガハハハ!」
勉が高笑いして自信満々そうに言った。
めぐみは、微笑ましそうにくすりと笑っていた。
父も勉とめぐみが嬉しそうに話す姿を微笑ましそうに見ていた。




