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空港と機内のジャンクフードザアタック

 十九歳の安藤めぐみは、アメリカに単身赴任でいる父の元へ行く事になった。

 「あー、楽しみだな」

 めぐみは、ターミナルのコンビニからチョコレート菓子と清涼飲料水のペットボトルを持って来て待ちきれない様子で言った。

 めぐみは、英語を流暢に話せるバイリンガルだった。

 幼少期に帰国子女の父から英語を教わっっており、英会話塾にも通っていたので英語を話せる事が出来た。

 めぐみは、今日は、一ヶ月間父のいるアメリカに行く事にした。

 めぐみは、高校卒業後は、海外関係の仕事に就く為に今は、フリーターの身であった。

 資金面は、めぐみが高校生の時にバイトで貯めた貯金と母の援助金で行く事が出来た。

 母も若いうちに行く方が良いと後押ししてくれた。

 今日は、めぐみは、いよいよ憧れのアメリカという世界最大の文明の大国の地に足を踏み入れるのだ。

 しかし、今日同伴するのは、めぐみだけじゃない。

 「おーい!めぐみー!」

 ターミナルの席に座って手を振る八十代くらいのスキンヘッドの老夫がめぐみに手を振っていた。

 「おじいちゃん!」

 めぐみが老夫に手を振った。

 老夫は、めぐみの母方の祖父。

 名前は、石原勉。

 勉は、めぐみの事が心配で一緒に同行する事になった。

 勉は、たった一人の孫娘が可愛くて仕方がなかった。

 勉は、息子と妻を病気で亡くしていた。

 息子も妻も病気で亡くしていた。

 息子は、タバコを大量に吸い、酒も大量に飲んでいた。

 息子は、その不摂生の影響が原因なのか癌で亡くなった。

 妻は、ジャンクフードばかり食べて医者嫌いで病院にも行かず、肥満体だった。結局心筋梗塞で亡くなった。

 勉は、息子と妻にも先立たれて、酒もタバコも全くせず、野菜や魚中心の生活を送っていた。

 勉は、甘いお菓子や清涼飲料水も一切食べない。

 勉は、今めぐみとめぐみの母と三人で暮らしている。

 「まだ飛行機には、乗れないのか?」

 勉が聞いた。

 「まだだよ」

 めぐみが勉の隣に座って言った。

 袋に入ったチョコ菓子を食べ始めた。

 そして、清涼飲料水のボトルの蓋を開けて、飲もうとした。

 「こら!そんな物ばっかり食べるな!」

 勉は、声を荒げてめぐみが手に持っているチョコ菓子と清涼飲料水のボトルを取り上げた。

 「ちょっと!おじいちゃん!何するの!」

 めぐみが目を見開いて驚いて声を上げた。

 「こんなのを食べたら健康に悪い!」

 勉は、チョコ菓子と清涼飲料水のボトルを近くのゴミ箱に捨てた。

 「ちょっとせっかく食べようとしていたのに!」

 めぐみが少し苛立ったように声を上げた。

 「めぐみ。こんな砂糖だらけの物食べて死んでしまったらどうする?」

 勉が顔をしかめて心配そうに聞いた。

 「砂糖だらけって…」

 めぐみが苦笑いして首を傾げた。

 「こんな砂糖だらけの食べ物食べても健康に悪いだけだ。野菜食べろ!野菜!」

 勉が念を込めた力強い声で言った。

 そして、コンビニへと背を向けて、紙パックの野菜ジュースとパックに入ったサラダを買って、めぐみに渡した。

 「え?」

 めぐみは、困惑して勉を見た。

 「食べなさい!早く!」

 勉が野菜ジュースとサラダを食べるように急かした。

 「…、ありがとう…」

 めぐみは、苦笑いした様子で野菜ジュースをゆっくり飲み干して、サラダを食べた。

 勉は、孫娘が食べる姿を微笑ましそうに見ていた。

 めぐみは、野菜は、嫌いではないが好きでもなかった。

 めぐみは、微妙な様子で勉に作り笑いを見せて食べていた。

 飛行機に搭乗前にめぐみは、母と電話をしていた。

 「めぐみ、おじいちゃんの事よろしく」

 母が微笑んで言った。

 「うん。お母さん。まあ、気を付けて行ってくるね」

 めぐみも微笑んで言った。

 「おじいちゃん元気そう?」

 母が少し心配そうに聞いた。

 「元気だけど。ちょっと、変わっている。私が買ったお菓子とかジュース捨ててきたし、野菜ジュースとサラダ買ってきて、食べるように言われたけど…」

 めぐみが苦笑いして言った。

 「ハハハハハ!おじいちゃん健康オタクだからね!」

 母が高笑いして言った。

 「お母さんも一人だけど気を付けてね」

 「うん。大丈夫よ。おじいちゃんの事お願いね」

 「うん。それじゃあね」

 めぐみは、そう言うと、通話を終了した。

 「おーい!まだか!」

 勉が大声でめぐみを呼んだ。

 「まだだよ。フライトの時間は、まだだからね」

 そう言うと、めぐみは、勉に駆け寄った。

 スーツケースを手に持って、保安検査場へと向かった。



 勉とめぐみは、飛行機に乗り、座席に座っていた。

 「アメリカまでだいぶ時間かかるのか?」

 勉がめぐみの方を見て聞いた。

 「そうだよ。十三時間かかるよ」

 「ニューヨークだよな」

 「そうよ」

 「アメリカ…か。楽しみだな…」

 勉が顔を膨らませて嬉しそうに言った。

 「おじいちゃんは、海外旅行には、行った事あるの?」

 めぐみが聞いた。

 「中国に行った事ある。若い頃」

 「そうなの。何しに?」

 めぐみが聞き返した。

 「パンダ見に行く為に」

 勉が自慢気に言った。

 「パンダ?」

 めぐみが目を見開いて驚いて首を傾げて聞き返した。

 「パンダだ。パンダが好きだからな」

 勉がにやりと笑って言った。

 「…へぇ…なるほどね…」

 めぐみが苦笑いして頷いた。

 「ワシは、パンダが好きだからな。アメリカにもパンダはいるのか?」

 勉が興味そうに聞いた。

 「…、分からない…」

 めぐみが首を傾げて言った。

 「そうか。それは残念だな」

 勉が肩を落として、残念そうな顔をして言った。

 「それより、今日は、何でアメリカに行こうと思ったの?おじいちゃんも」

 めぐみが怪訝そうに聞いた。

 「うん?何で?それは、めぐみの事が心配だからさ。たった一人の孫娘の事が心配だから一緒に来たのさ」

 勉が真顔で言った。

 「…ハハハハ。ありがとう…」

 めぐみは、勉の余計なお世話に少し不快な気分になっていたが自分を心配してくれる祖父の気持ちが分かると安堵して嬉しくなった。

 飛行機が離陸して、飛び立ち、定期飛行に入り、搭乗客も座席の前の画面で映画を見たり、ゲームをしたりしていた。

 勉は、難しそうな健康本を手に持って読んでいた。

 めぐみは、座席の前の画面でゲームをしていた。

 客室乗務員が機内食を運んで来た。

 「機内食どうですか?ライスが良いですか?パンが良いですか?」

 客室乗務員が座席の間の狭い通路を台車に乗った機内食の弁当を積んで搭乗客に聞いた。

 「ライスでお願いします。後、ジュース下さい。オレンジジュース」

 めぐみが手を上げて言った。

 「はい、かしこまりました」

 客室乗務員が機内食とコップに入ったオレンジジュースをめぐみの座席のテーブルの上に置いた。

 「おじいちゃんは、何が食べたい?」

 めぐみが祖父に聞いた。

 「うん?」

 勉が台車の上に乗った機内食を見た。

 「どうしますか?ライスですか?パンですか?」

 客室乗務員が聞いた。

 すると、勉は、機内食が肉中心である事が分かると顔を真っ赤にして鬼の形相になって、客室乗務員を睨み付けた。

 「ちょっと!これじゃあ肉ばかりじゃないかい!野菜入れろ!」

 勉が目を吊り上げて、客室乗務員を指差して声を荒げた。

 「え?あの…?」

 客室乗務員は、困惑して首を傾げた。

 周りの搭乗客も勉の怒鳴り声にどよめいた。

 「サラダ入れてくれ!サラダ!野菜!キャベツ!人参!大根!」

 勉が命令口調で客室乗務員に言った。

 「え?その…は?」

 客室乗務員は、どうすれば良いか分からず困惑していた。

 「野菜ジュースある!早くしてくれ!野菜中心の弁当出して!頼むで!早くしてな!早く!」

 勉が強い口調で急かすように言った。

 客室乗務員は、仕方なく、機内食の弁当にサラダを上にまぶして勉に渡した。

 「あかん!こんなのダメ!もっと野菜入れて!肉はいらない!」

 勉は機内食のハンバークとコロッケを取って、台車の上に乗せた。

 「え?あのお客様…は?」

 客室乗務員は、目を見開いて困惑していた。

 「もう、おじいちゃん!静かにして!」

 めぐみが勉の肩を叩いて、辺りを見渡して気まずそうに言った。

 周囲の搭乗客は、勉の様子を見て驚きと好奇な眼差しを向けていた。

 「もっと野菜入れて!こんなの体に良くないだろ!体壊して死んだらどうするの!」

 勉は、声が段々と荒げてきた。

 「…え…あの…」

 いつしか客室乗務員は、顔を歪めて祖父に激しい拒絶反応を見せていた。

 「キャベツ!人参!大根!キャベツ!人参!大根!」

 勉が何度も執拗に連続で言葉を繰り返すように大声で言った。

 その様子を見てめぐみは、顔を赤らめて気恥ずかしそうにうつむいていた。

 これから、おじいちゃん

と頑張っていけるか不安だな…。

 普段は、優しいおじいちゃんだけど、時々暴走するからな…。

 めぐみは、先が思いやられていた。

 この先アメリカで祖父と共に過ごせるのか…。

 めぐみは、いつしか不安になっていた。


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