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部活彼女  作者: 瀧元用管
2/6

剣道部 柳美穂 その後

部活終わりのガタピシ言う部室の扉を、なんとなく開けたあの瞬間。

……いや、本当は少し気になっていたんだ。「美穂、まだ片付け終わってないのかな」って。だから、わざわざ様子を見に来てあげたっていう、親友としての優しさのつもりだった。

 

なのに、なんだあれ。

ロッカーに綺麗に追い詰められて、真っ赤になりながら必死にキスを飲み込んでる美穂と、それを余裕のありそうな顔で見下ろしている遠藤くん。

思わず「青春真っ最中の方じゃーん!」って茶化して、その場は勢いだけで切り抜けたけどさ。

廊下に飛び出した私の心臓は、ぶっちゃけ自分でも驚くくらいバクバク言ってたわけよ。

だって、あの美穂だよ?

学校じゃ自分の影を踏まないようにみたいに縮こまってて、私がいなかったらクラスの端っこで空気みたいに息を潜めている、あの子だよ。

それがなんだ、あのとろけきった顔は。男の胸にしがみついて、恥ずかしさで涙目になりながら、でも自分から離れようともしないであんな甘ったるい声を出すなんて……。私、あんな顔の美穂、今まで一度だってみたことない。

 

……ずるくない?

いや、もちろん怒ってるわけじゃない。むしろ、心の底から「よかったね」って思ってる。

あいつがどれだけ遠藤くんを目で追ってたか、私にはお見通しだったから。クラスの隅でボソッと「遠藤くんって、今日の授業のとき……」なんて呟くときの、あの切なそうな横顔を、私は何十回も見てきたんだから。

だからこそ、あいつが報われてよかったって、親友としては手放しで乾杯したい気分なんだよ。

でもさー、同時にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、面白くないっていうかさ。

 

だって、剣道着を着て竹刀を振っているときの美穂は、誰よりも凛としてて、隙がなくて、かっこいい。私があれだけ「剣道部においでよ!」って勧誘しても、「私なんて無理だよぅ……」って恥ずかしそうに首を振るくせに、いざ道場に立てばあんなに頼もしい背中を見せる。

そういう「強い美穂」も、私の自慢の親友だったわけ。

なのに、遠藤くんの前に立った途端、あの剣道着の凛々しさはどこへやら、一瞬でただの「恋する女の子」に逆戻りだ。耳たぶまで真っ赤にして、制服の上から腰に手を回されただけで腰を抜かしかけてさ……って、おいおい、どんだけチョロいんだよ美穂! 私が知らない間に、すっかり遠藤のペースじゃない。

でもまぁ……あいつのあの怯えたような、でも嬉しそうな顔を引き出せるのが、他の誰でもない遠藤くんで良かったのかもね。

 

あの日、私の茶化しに真っ赤になって「もう帰って……!」って泣きつきそうな顔で睨んできたときの美穂の目。あんなに感情をむき出しにして、必死に恋する女の子の顔をするあいつを見て、私はなんだかすごく安心したんだと思う。

いつだって守ってあげなきゃいけない「か弱い親友」だと思ってたけど、あいつはもう、私とは違う場所で、ちゃんと自分の居場所を見つけて、大事な人と手をつないで歩き出してるんだって。

 

……ま、いっか。

あんなに見事現場を押さえちゃったんだし、これからは堂々と「公認カップル」としていじり倒してあげるのが、親友としての役目ってやつよね。

 

「続きはまた明日、部室の鍵閉めとく代わりに外から見張ってあげよっか?」

 

あのとき私が放ったセリフに、本気で泣きそうな顔をしてた美穂の顔、今思い出してもちょっと面白かったな。

明日学校に行ったら、絶対冷やかしてやるんだから。

「ねえ美穂、昨日の続き、どこまで進んだわけ?」って聞いて、またあのトマトみたいに真っ赤になる顔を間近で堪能してやろうっと。





 

――で、実際に翌日。

部室のあれこれを聞き出すために美穂を問い詰めたら、もうボロクロになって白状しやがった。もちろん、トマトよりも真っ赤になってね。

「ちょっと前に告白された」って聞いてないよ?私。それになによ、「お嫁さんになってもらう」って……。

ゲロ甘っ!!!

 

大人しめな遠藤くんが、いつの間にそんな肉食系の必殺技を隠し持ってたわけ? いやもう、参りました、部長の完敗です。

 

こうなったら、今日の放課後に捕まえて、「お嫁さんにするってどういうことですか〜?」って、徹底的に詰めてあげよっと

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