幕間、そうだ。蟹がいる!
お越し下さりありがとうございます。
アルカナ王都、長寿苑。
裏庭はいつものように凛とした落ち着いた風情を漂わせている。
そこで人知れず神楽を舞い去っていく青年。
その後に追い縋る何かの声.......。
『周、あ・ま・ね!何故無視をする?
嘘を吐くな!聞こえない訳がないだろう。』
アロエは力の限りに叫び続けるが周にはなんの変化も感じられない。
そして、裏庭の木戸が閉まる。
『嘘だろ、周........。』
数日後、西の山。
蟹がアロエの子株に捕まっている。
「お前はあの金髪頭と意思を通わせられるのだろう?」
「まあな、生前からの縁のなせる技だ。」
「なら頼む!周に伝えてくれ。いや勇に伝言を頼む。」
「絡むな、棘が痛い。」
「お前には分からないのだろう。大恩ある相手との繋がりが薄れる物寂しさが!」
「そうだ!我にも言わせろ!我はもっとあれに色々と自慢をして、崇め奉られたかったのだ。」
アロエに加勢する人外がもう一体。
つぶらな瞳のトカゲだ。
「......!」
蟹とアロエが畏怖の念から一歩下がる。
本物の神格と神格もどきでは格が違う。
「あー、それはいい。トカゲで来たのだ楽にしろ。」
「だから、言ったであろう?我らは邪魔じゃと。」
池の精が面倒そうにこちらに向かってくる。
蟹もアロエも緊張でおかしくなりそうだ。
しばらく話し込んでいた彼らは勝手に結論に辿り着く。
「心配せずとも、あれがしばらく修行に精を出せば、いずれは戻ってくる。」
「それもそうか。」
池の精とトカゲが話はこれで終わりと立ち上がる。
「まあ500年ほどの辛抱か......。」
「待ってくれ!500年、人の寿命はそんなに長いのか?」
「......。」
池の精とトカゲが肩をすくめる。
「蟹、お願いだ。周に神楽も祝詞もしかと受け取った、この先も助力を惜しむつもりはないと伝えてくれ。」
「神楽.....とな?」
ずっと飄々としていた池の精の気配が変わる。
「我には一度も神楽など.......。」
トカゲが一瞬、大きくなりそうになる。
「落ち着いて下さい。最高位の神楽と祝詞は対話の出来ない周なりのワタシとの対話方法で.......。」
「ほう。しかも、最高位.....とな。」
「アロエよ。随分と仲が良いようじゃな」
二体に詰められてアロエはあおい体を更にあおくする。
「頼むのは良いが、緑眼の主人はそうそうは俺に会いになど来んぞ。二、三年後、それでも良いか?」
蟹が池の藻を駆除しながら皆に問う。
ーーー
「うぉ.....なんか、西の山に無性に帰りたくなってきた。」
「おや、勇。お前もかい?どうしたんだろうね。私もどういう訳か西の山で神事を執り行わなくていけない......。そんな気がしてしかたないんだよ。神事などした事もないのに......。」
勇と爽が謎の会話を繰り広げている剣士棟に、明周が転がり込んできた。
「大変だ!数百年ぶりに北の神殿に御神託が降りた。」
楽しんで頂けたなら幸いです。またのお越しをお待ちしています。




