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ifー周が防御結界を作らなかったら......。

お越しくださりありがとうございます。


活動報告でも書いてますが、魔女の逆鱗に触れる結界をもし周が作らなければ、離宮の凶事は起こらず、頼は存命で、優が記憶も身体能力も失わず、結果的に周はこの世に存在しない。

存在しない周が結界を作れる訳がない。おや、平和じゃないのアルカナ......。

まあ、そんなに単純では無いのでしょうが......。

そんな訳で

本編と似ているようでまったく違うような.....でも、干渉し合ってるのかな?

パラレル・アルカナです。

お楽しみください。

 王都、アルカナ城近くの一等地。

敷地はさほど大きくは無いが、妙に頑丈な作りの屋敷の屋上で頼は槍を構えて空を見上げる。

上空で雁の群れが寝所から食餌場へと向かって飛んでいる。

頼が無造作に空中に槍を放つ。


咲き誇る花々を愛でながらそれらに水をやっていた優の右肩をかするように槍に射抜かれた雁が落ちてきた。


「......。」

優がため息混じりに屋上に視線をやると、小鼻を膨らませてこちらを覗き込む頼の期待に満ちた視線とぶつかる。


優は溜息を噛み殺し、老いてもまだ現役気分の抜けない祖父、頼に話しかける。


「お爺様。これで何羽目でしょうか?もう鳥鍋には飽きてしまいました。

料理人のことも考えてあげて下さい。」

優は雁を持って厨房に消えて行った。


「昔はもっと、はしゃいでくれたというのに、反抗期かね。」

頼は誰にともなく言葉を吐く。


ーーー

色とりどりの野菜と雁の燻製が並ぶ食卓


この雁は数日前の頼の戦利品だ。


ちなみに本日のものは厨房の軒で血抜き中である。


昨日の戦利品は本日王城で陽光殿下の料理人へ押し付け.....もとい、お譲りしようと優は考えている。


「お爺様、今日の夕飯は陽光殿下と済ませるので、お一人でお願いします。」

もりもりと燻製とレッドキャベツを頬張る頼に優がふわりと笑う。

「.......。」

その胡散臭い笑顔に頼の危険センサーが警報を鳴らす。


「どこに、何をしに行くつもりだい?」

獅子の瞳を思わせる金の瞳が優を射抜く。


「な、なんのことでしょう?」

ふわふわパンにバターを塗っていた優の琥珀の瞳が忙しなく動く。


「爺さんを騙すにはまだまだ甘いな優。」

気の流れで隠し事があるくらいは判ると頼がニヤリと笑う。


( 敵わないな。)


優は今晩の肝試しについて説明を始める。

ーーーー

「護衛は?」


「え?」


「殿下とお前だけで臨む気か?」


「......陽光殿下はアルカナの守護者、凱さまから筋が良いとお墨付きを貰っているのですよ?

私は文官ですが、その陽光殿下にひけをとりません。」


誰が護衛に来ても必要ないと優は懸命に抗弁する。


「まったく。甘やかしてしまったか......。」


(剣士として育てていれば......。恨むぞ景。)


頼は朝食を切り上げて、優を伴い屋上に上る。


「打ち込んでこい。」

剣を握る優に丸腰の頼が言い放つ。


戸惑いながらも、優が青眼の構えから頼に向かって鋭い打ち込みを放つ。


14歳の少年としては上々の打ち込みだ。


しかし、教科書通りの面白みに欠ける綺麗すぎる打ち込み、さらに次の打ち込みが続かない。


「何故、二打三打と続けん?」


「え、何故ですか?」


「お爺様は敵でも魔物でもないではありませんか。」


登城の時間だと出て行った優の背中を見送り頼はため息をついた。


(もし、手加減してもらっている事も理解出来ていないなら問題だな。)


ーーー

先程の屋上での出来事を優は反芻していた。


(何故、お爺様はあんなに危機感を募らせていたのだろう?)

そういえば、私の渾身の打ち込みを受けても、お爺様の足は微動だにしなかった.....。


踏ん張る必要も無い打ち込み......。


もしかしたら、私は大きな勘違いをしていたのか?


優は嫌な結論に達してしまった。


ーーーーー

王城、陽光宮にて、


「今日の肝試し。楽しみだな!夜の王墓なんてドキドキだ。」

陽光がキラキラと緑の瞳を輝かせて話しかける。

「殿下、誰か護衛を付けましょう。」


ドキドキに水をさす優の言葉に陽光は腹を立てる。


「なんだよ、優、俺の剣技とお前の言霊で無双だろう?

昨日も話したじゃないか?」


「いえ、まあ、そうなのですが.......。何か引っかかるのです。せめて、場所を変えませんか?」


剣呑とした空気を割るように戸口で声がする。

「明周殿下がいらっしゃいました。」



「あ!叔父上。」

大好きな叔父の久々の来訪に陽光の声が弾む。


「殿下、あまり距離をお詰めになりませんように。」

駆け寄る陽光を右手で制し優は二人の間に身を滑り込ませた。


そう優は知っている明周殿下はとても人柄の良い王子だ。

ーーー

しかし、優はこぶしの下での出来事をちゃんと覚えている。

あの時はあまりの衝撃にしばらく治癒の言霊が使えなくなったほどだ。

ーーー

(普段はともかく、この男は幼い自分のおでこにチューをした変態だ。この変態から絶対に主人を守り抜く。)

優は今日も謎の使命感に燃えている。


二人の王族にお茶とお菓子の用意された日当たりの良い席を勧めて優は陽光と明周の間の空間に収まる。


二人の何気ない会話に聞き入るでもなく無視するでもなく、やわらかい笑顔でそこに控えている。


つもりだった。


「そういえば、陽光。今晩が肝試しだって?」


「そうなんだ、優と二人で王墓に行って来る!」


(......!)

殿下、変態になんて情報を......。優はそっと天を仰いだ。


「俺も付いて行こうかな?」


「結構です!」

王族の言葉を即答でぶった斬る優に皆が目を剥く。

しかし、優に引く気はない、主人を守り抜くのは側近の使命だ。


「いや、二人は危ない.....。」


「三人の方がはるかに危険です。」


「えっ?」


「危険です!」


「まあ、俺は鈍臭いけど......。大人だぞ?」


(だから危険なんだ!)

「承知しております。どうぞお引きください。」


「いや、でも。」


「大丈夫です!」


「心配なんだ、せめて誰か護衛を.......。」


「結構です!........えっ?」

(同じことを考えていた?)

優の思考が一瞬止まる。


ーーーーー

夕方、明周宮より差し向けられた剣士を見て優は明周の人選を恨んだ。


金髪に緑の眼の少年剣士、多分強者だ。

しかし、なんというか......。話がまるで通じない、もう致命的だ。


「王墓だな、っしゃ行くか!」


「何故、殿下を差し置いて、貴方が決めるのです?」


「誰が言い出しっぺでも構わねーじゃん。」


「......。」


「頭硬いなお前、禿げるぜ。うちの師匠みたいに。」


「自分の師を愚弄するな!」

優の瞳が金に光る。


「うぉ。あぶねーな。」

金髪の少年剣士の左手が優の口を塞ぎ右腕が優を抱え込んだままその手の動きを封じた。


「師匠で知ってんだよ印と言葉でお前ら言霊使いは無双するだろう。」

得意げに少年剣士が続ける。


「だから手っ取り早く無効化するんだよ。こうやってな。」


少年剣士の腕の中で優は歯軋りした。


「ところで、お前、名は?」

王墓までの道すがら、陽光が少年剣士に尋ねる。


「勇。西の山、信の道場の勇だ。」


(その名には憶えがある......。剣士の採用試験で歴代最高を塗り替えた剣士がいると。)


「お前は?」

勇が優を見る。


「優。」

渋々といった感じで優が答える。


(......。)


勇が一瞬固まる。


「めんどくせーな。お前文官だよな?じゃあ文官の優で、文優な。」

雑に呼び名を決められた優も黙っていない。


「じゃあ、お前はなんだよ?武官だろう?」


「うっ。」


「文優と武勇じゃあ、何も解決してないじゃないか。」

優がニヤリと笑う。


「違う!ぶ、武官じゃなくて、け剣士だ!」

勇が顔を真っ赤にして言い返す。


「ふーん、いいよ。文優に剣勇ね。」

先程の敵討ちができていくらか機嫌の戻った優に陽光が腹を抱えて笑い出す。


「お前らそのまま演芸会に出てはどうだ?めちゃくちゃ息の合った喧嘩漫才じゃないか。」


「「.......!」」

二人が同時にそっぽを向いた。


ーーーーー


「お爺様.......。」

優が言葉を失う。


王墓の入り口に頼がいた。


「こっちへ来なさい。」

問答無用で無表情の頼が手招きをしている。


(やはり、朝の私の思い違いを怒ってるんだ......。だって、あんな顔、見たことがない。)

優はたった一人の肉親の逆鱗に触れてしまったと思い、酷く後悔した。

王国の剣となり盾となるアルカナの守護者、それが優の祖父頼だ。

先代の陽威様を我が君と決めて一心に支え、護り続けるアルカナの生きた伝説。


(どこかで私は間違ってしまったのだ。

勉強も剣技も作法も、もちろん言霊だって、頑張ってきたのに。くだらない慢心のために......。)


優はとぼとぼと頼の元へと歩を進める。


「こっちへ来なさい。」

そんな優を頼がさらに急かす。


「はい、今すぐに参ります。」


(嫌われちゃうのかな?)


たった一人の肉親の豹変に心がついていかない優を勇が乱暴に引き止める。


「おい、文優、行くな!」


優が振り返ると勇が鯉口に手をやっている。


(......!)

肉親に剣を向けられて平気な者などいない、優も素早く印を結ぶ。


『言霊』


「あれが、何に見えているんだ?」

勇が眉間に皺を寄せて優を見る。


「えっ?」

優がもう一度王墓の方を見る。

唯ならぬ瘴気がそこで渦を巻いていた。


(まずい!)


『障壁』

優が陽光を背に庇い、障壁を張る。

間一髪渦巻く瘴気は優の障壁に阻まれた。

しかし、障壁はただの壁、瘴気を全て防ぐことはできない。


「優。俺も戦う!」

陽光が前に出ようとする。


「ダメだお前はそいつの結界の中にいろ!」


「おい浄化を俺の剣に掛けろありったけだ!重ねに重ねろ!」

押し寄せる瘴気を剣圧でかろうじて吹き飛ばしながら勇が叫ぶ。


(結界?浄化?意味がわからない剣勇は何を.......。)


それでも困惑の中、優は覚悟を決める。


我が君の国を護らなくては......。


なんの国?

いや、今はそれどころじゃ無い、目の前に集中しなくては。


大丈夫、言霊はイメージだ。あの瘴気は汚れだ。綺麗に拭き清めれば良い。

大量の綺麗な水で不浄なものを囲い込み消し去るイメージ。

そして言霊を重ねるなら。


印はこのまま......。言葉だけを重ねる......。


言葉は何が良い?


『加えて』


『浄化』


勇の剣が強く金色に光る。


『加えて』『浄化』

陽光、優、そして少し前方に居た勇の周りに局地的な浄化が発動する。


王墓の入り口の頼は姿を消し、辺りの瘴気も霧散していった。


そして夜が明ける。


実感は無いが三人は夜通し、中の山を彷徨っていたようだ。


ーーーー

後日

「剣勇、重ね掛けのヒント、それに浄化も、助かった、ありがとう。流石、西の山だね。思い付きもしなかったよ。」

優が剣士棟に向かう勇を引き止めた。


「なんのことだ?」

勇がきょとんと優を見た。


お楽しみいただけたら幸いです。

来週の火曜日から本編再開します。お待たせ致しました。

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