幕間 お見舞いエトセトラ
お越し下さりありがとうございます。勝手ながら、ちょっと短めなので、早めに投稿してしまいます。お楽しみ頂ければ幸いです。
「よう!今度は誰に捕まったって?」
勇が楽しそうに戸口をくぐる。
目を離すと作業を始めると周の病室の入り口の建具は昨日に撤去されてしまった。まったくプライバシーも何も有ったものではないと周は思う。
(そういえば先日の愁室長の魔道具もほぼ呪と変わらない性能の物だった......。私の仲間は私を回復させたいのか?トドメを刺したいのか判断に困る事案だ。)
覚悟を決めてひたすらに暇な午前を過ごしていた時の勇の訪問は周にとっても嬉しい時間となった......。
「人聞きの悪い......。お茶をもらいに給湯室を覗いたら、
接続金具が劣化してたから、ちょっと取り替えただけだし......。」
「で、ボンクラにそのまま報告が上がって、ベッドから降りるのも禁止ってやつかよ。
呆れてものも言えねーわ。」
「みんな神経質になり過ぎなんだよ。ちょっと肺にーー。」
「十分生命がけだからな!今でも絶対安静なんだよ。お前なんで普通に起きて喋ってんだよ?肺に刃物が刺さったんだぜ。」
勇のテンションがおかしなことになっていく。
「いくら囮でも、普通そこを狙わせるか?」
「私だって外すつもりだったよ......。でも我が君の軌道が......。」
あまりにも常軌を逸した短刀の扱い方で軌道が全く予測できなかったのだと周がこぼす。心臓ひと突き即死コースを避けるので精一杯だったと......。
「ブッハッ!何だよそれ。天災級の話。」
面白過ぎて死にそうだと勇が大笑いした。
取り敢えず暇なら外の植え込みのはっぱの数でも数えてろと言葉を残し勇は帰って行った。
葉の数なら朝からもう二回は数えている。
「あー兄さま!」
開口一番桃は周の胸に飛び込んだ。ほぼ条件反射である。
いつもなら優しく抱き止めて「桃どうしたのかな?」と言ってくれる大好きな周の声が聞こえない......。
恐る恐る桃が見上げると、少しだけ困った顔の周と目が合う。
「今、楽にして差し上げます。」
桃は印を結ぶ
『言霊』
『治ーーゆ』
「周くん危ない!」
誰かが桃の腕をぐいぐいと引っ張る
周くんから離れなさいこの刺客めと叫びながら。
鈴が仕事の合間に時間を作って周のお見舞いにやって来たのには理由がある。
昨日の帰り道に見つけた新しい雑貨店で
可愛い編みぐるみの本を見つけたのだ。
これなら入院中の暇つぶしに最適だと糸や綿ビーズなどの材料も一緒に購入し差し入れに来たのだ。
「あー兄さま。こちらは、どなた様ですか?」
桃の纏う気配が剣呑とする。
「周くん、早くこっちにいらっしゃい!」
危ないからその刺客から離れなさいと。
鈴がうるさい。
そもそも桃が刺客なら今頃、戦闘力皆無の鈴は生きていないのだか、不思議なほどそこには考えが及ばないらしい。
(大丈夫!二人とも落ち着こう)と周は声を出したのだが......
先程の桃の渾身のタックルのせいで息が上手く整わない......。
とにかく声を出したい......。周は気を練る。
身体の中を活性化させて弱った部分や足りないところは気の密度を上げてその力を補う......。
「鈴さん桃、落ち着いて下さい。
鈴さん、この子は桃、私の妹弟子です。
鈴さんは私の王都でのお仕事の先輩なんだよ。桃。」
二人の誤解が解けて少ししたところで鈴が本の事を思い出し手渡せば。
可愛い!桃が食い気味に反応する。
じゃあ仲直りのしるしにいくつか作っちゃおうか?と周がお節介を焼いて......。
二人は色違いのクマさんを手にほくほくと病室を後にした。
この後、巡回の看護師さんにこっ酷く叱られて、爽に涙ながらの説教をされる事に周はまだ気付いていない。
お付き合いくださり、ありがとうございました。
次回は火曜日になると思います。




