幕間 王墓の決戦数日後の攻防inアルカナ城
幕間2、お楽しみ頂けたら幸いです。
王墓からの帰還後、眠り続けていた周の意識が戻って数日。
周は自身の腕に抱えられた沢山のお菓子に困惑していた。
今回の作戦の結果報告に王都管理局を訪ねれば、椅子を勧められてお菓子をもらう。
ちょっと身体を動かそうと訓練場に顔を出せば、木影に誘導されてお菓子をもらう。
それでは何かお手伝いでもと食堂にやって来たら、邪魔だからこれを持って帰れとお菓子をもらった。
流石に持ちきれなくなってきたお菓子を腰のポーチから取り出した風呂敷に包み込んで周はお針子さんたちの作業部屋に向かった。
先日の作戦でぼろぼろになってしまった装束がそろそろ修理されている筈なのだ。
本当は自分で破いたものは自分で繕いたいのだが、お針子の皆さんに仕事を奪うなと懇願されたので、お任せすることにした。
「お忙しいところ失礼致します。」周がそっと扉を開けて声を掛けると。
お針子さんの一人が対応に出て来てくれた。
そろそろ聖火の装束が出来ている頃かと思い、受け取りに来たと言えば一瞬固まってからそのお針子さんは窓際の椅子を勧めてくれた。
「今お持ちします少しお待ち下さい。」
そう言ってここでも沢山のお菓子をもらってしまった......。
仕上がった装束を出すだけにしては妙に長い待ち時間を周は大人しく待っていた。
「お待たせ致しました。」
先程よりずっと年嵩のお針子さんが真新しい鉄紺の装束を持って現れた。
(あれ?)
修理に出したのに新品が返ってきて周は困惑したが、今は立場上あまり感情を表に出してはいけない。
らしい......ので、
黙って説明を待つも、お針子さんも口を開こうとしない......。
(我慢比べ?.....え?)
「......ありがとうございます?」
沈黙に耐えきれず声をかけたのは周だった。
「こちらの装束ですが......。ご存じとは思いますが、大層特殊な生地を使って仕上げております。」
こちらの反応に説明が足りないと思ったのか、お針子さんは長々と話を始めた。
主に苦情なのだが......。
こう、月に何度も再生不可能な程に欠損がございますと......。
とかなんとか。
「申し訳ございません。」
少し釈然としないが周は丁寧に謝ったあと、ダメになった前身ごろだけの交換や継接ぎでも一向に構わない。と伝えると、そんなことを言っている訳ではないと、更に、キレられてしまった。
どうしよう。お針子さんたちの逆鱗がわからない......。
「良いですか?」
アルカナ三将はアルカナの剣士の強さの象徴だと。みすぼらしい継接ぎなど言語道断だが、あなたはそれ以前だと、まず略式は普段着。
今着ていない事が大問題だと。
そうはいうが、こんな、なんでもない日にあんな立派な物を着ていては、直ぐに擦り切れてしまう。と抗議すれば、その為の自分達なのだと睨まれてしまった。
大人しく周が針子の皆さんの二周目の抗議を聞いていると。愁がやって来た。
「ああ。盛り上がっているね。
やっと捕まえられたよ。周くん......。
感心感心、ちゃんと条件を満たせたのはここだけだね。」
などと妙なアイコンタクトを針子さんたちとしている。
「これで 来年の新人確保権は優先的に回させてもらうよ。縫製部の諸君。」
愁の一言に針子さんたちがガッツポーズをしている。
周はすっかり置いてけ堀だ。
「ああ、周くん少し腕を出してくれないか。」
そんな周に愁が近付き、にっこりと提案してくる。
言われるまま周が腕を出すと。
これまた、上機嫌に乳白色の腕輪を取り出し、それを周の腕にはめる。
「室長?」
腕輪の乳白色は淡く光り出す。
(......!)
と同時に周の身体が軋む。気で活性化させていた身体が、普通の状態に戻ってしまったのだ。
胸の辺りが熱く息がしにくい......。
「ああ、すごいだろ。ドゥーラ製の魔力を吸い取る腕輪だ。」
これで当分は君も上手く気が操れなくなる筈だ。怪我人らしく自身の療養に専念すると良い。
しかし、アルカナの守護者たる者もう少し疑う事も覚えるべきではないかな?
私は少しこの先が心配になるよ。
などとドヤ顔で周に敗因を語り出す。
「へー、今朝から皆さんがおかしかったのは全部室長の指示ですか?」
「ふふ。どこも人材確保は切実な問題だからね。
しかし結果を出せたのは縫製部のみだったね。
どいつもこいつも詰めが甘い。」
「なるほど、この城の中で平常運転は食堂くらいですか?」
「ああ......。あそこは早々に君を追い出していたね。本当に協力するつもりが有ったのか無かったのか。来年のあそこの予算は少しいじっても良いかもしれないね。」
「さて、周くん大人しく病室に戻ってもらうよ。」
「そうですね、ここまで皆さまに迷惑をかけては、流石に気が引けますね。」
周があたりを見回してにっこりと笑う。
「でもその前に......。室長は私が剣士であることをお忘れの様ですね。」
周が腕輪のはめられた腕を愁の方に向ける。
そして、まるで粘土細工を曲げるようにそれを外す。
「......!」
「ドゥーラ製の金具など普通に外せますよ?」




