時のドラゴン
お越し下さりありがとうございます。
「ほう。己で断った案件を、のこのこと引き受けに来たと......?」
ドラゴンが面倒そうにこちらを向く。
(珍しい。)
いつもこちらを見ることもなく適当なことを一方的に語り続けているドラゴンが、今回に限り自分を見ている。
「魔女を打ちます。お力添えを。」
「物には時分というものがある。
お前はそれを逃した。
今回は諦めよ。」
「っ!」
悔しいが返す言葉がない。
何故自分はこうも最適解を選び取れないのだろう。
「案ずるな。あれを打つことはいずれ出来よう。」
「いずれでは......。いずれでは遅いのです。それでは......。」
「それでは、我が君が死んでしまう!か?」
「......!」
「どうしようも無く青いな。」
ドラゴンがやや苛立ち始めた。いかに古き友の愛し子と言えど、それ以上は許さぬと。
そんな緊張した空気に不似合いなマイペースな声が後ろから聞こえた。
「面倒くさいやつよのう?
一度断られたことに傷ついたと言えば良いだけのことを......。格好つけおって。」
「な!お主は?」
予期せぬ来訪者にドラゴンが目を剥く。
「久しいのう。時の......。」
池の精がそこに居た。
「えぇ?」
周の喉がおかしな音を立てた。
「おお。相変わらず良いリアクションじゃの。」
池の精はご機嫌だ相変わらずどこか生活感のない気配を纏い、偉そうな物言いに似合わない気さくな表情で周に語りかける。
「ふふ。どうじゃ、何も面白くはならなかったじゃろ?」
防御結界の事を言っているのだ。
「禍いから守る結界が禍いを引き寄せると、お分かりになっていた。と解釈しても?」
駄目だこんな聞き方、この方がどれだけ力添えして下さったことか......。
「そう......。可能性じゃな。あれは縄張り意識が強いゆえ。」
そこで言葉を区切り池の精は周の瞳を覗き込む。
「おや、珍しい。少し気力切れか?
ならばこちらから融通してやろう。
ふふふ......。思い出すのう大根畑を......。」
「何故、そんなに楽しそうなのですか?」
「お前が全力で、挑もうとしておるのがな、心地良い。」
周が面食らっているうちに池の精は時のドラゴンに向き直る。
「お主には見えておるのであろう?
ならば、ささっとなすべき事をなせ。
面倒臭い。」
「すでに、時分を逃したのだ。」
星のめぐりが悪いとドラゴンは唸る。
「めぐりの良い地点にお主が導けばよい。出来ぬとは言わせぬぞ。」
池の精も引かない。分かっているのか?
時分、時分と言って時節を見誤るな。と......。
二人は意味深な目でチラリと周を見る。
まだまだ話し合いは続く。
周が何もせずに立っていることにそろそろ疲れ始めた頃二人の表情が柔らかくなった。
どうやら、
ようやく結論が出たらしい。
「では、
今から時渡りの話をしよう。」
「えっ......。」
周の直立不動の時間はもう少し続きそうだ。




