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陽光くんはお年頃

王都大騒ぎの別視点ですよろしければご覧下さい。

さて、現在。

 明周宮からもう少し奥まった陽当たりと風通しのよい東の一角に陽光の私空間は有る。

座学よりも身体を動かす事、剣術を好む快活な彼はアルカナ剣士が思い描く強い王族が顕現化したような少年だ。


ーーーーー


俺は陽光、アルカナの守護者を夢見る14歳だ。

そんな俺が、

顔も覚えていない父上の盛り過ぎの思い出話をする母上といるより、現役のアルカナの守護者である伯父上との稽古を楽しみにしてしまうのは仕方ない事だと思う。


伯父上はいつも筋が良いと俺を褒めてくれる、だから俺は少し天狗になっていたのだと思う。

空席の聖火はきっと俺になるんだって.....。


俺にはもう一人叔父上がいる。

明周叔父上だ。優しくて何でも知っていて大好きな叔父上.....。最近は疎遠なんだよな、側近たちが言うには政治的配慮とかいうらしいが、はっきり言って俺は寂しい。


(俺が早くアルカナの守護者になったら叔父上とも、もっと沢山遊べるかな?)


その日、練習場で俺が目にした現役アルカナの守護者同士の死闘は俺の想像を超えていた。

人はあんなに速く動けるのか?

あんなにしなやかにそして力強く剣を扱えるものなのか?


伯父上は手加減していてくれたのだ。


少し悔しさもあるが俺は気を取り直し事の成り行きを眺めてた。


白黒の決闘、かっこいい漢の決着の付け方だ、爽も凱伯父上も実力者だ。しっかりと見て今後の糧にしなくては。


(俺賢い......。)


隣に明周叔父上がやってきた、とても顔色が悪い。


ああ、そうか。

叔父上は剣術音痴だった、きっと剣士の本気に当てられたんだ。


(お気の毒だなぁ。)


励ましてあげたいけれど側近に止められた。重鎮が見ているからお利口にしていなさいだってさ。


重鎮の意見って伯父上や叔父上の意見より強いんだな?年上だからか?


(つまんないなぁ。)


この時の俺は、そんな俺の常識を全部ひっくり返す魔王の出現を、まだ知らなかったんだ。


白黒の決闘が最高潮に盛り上がろうとした時、不意に練習場に人が入ってきた。

黒い髪に黒っぽい灰色の文官服を着た奴だ。


『言霊』『加圧』


いきなり立って居られなくなって倒れかけた俺を庇ってくれたのは側近ではなく運動音痴の筈の明周叔父上だった。


「来ると分かっていれば。まあ、俺でも多少は役に立てるさ。」

俺の下で叔父上が笑ってくれた。


ーーーーー

そこに居る全ての人が地面に這いつくばる中を、ゆっくりと黒髪の文官が中央辺りまで移動する。


「これがアルカナの政治ですか?」

重鎮たちが震え上がっている。


(なんでだろう?ちょっと気が晴れる。)


「今、アルカナがどれ程不安定かは、先日のプレゼンで説明しましたよね?」


「よりにもよって、白黒の決闘などと。

何故、兄さまか凱様が剣を握れなくなったタイミングで、脅威が膨らむと

想像出来ないのですか?

王位継承?

すり替えないで下さい。

勢力争いですよね?


王族を、剣士を、お前たちの玩具(おもちゃ)にしないでいただきたい。」


(うわー なんかこの文官......怖いけど、凄くかっこよくないか?)


「今すぐ、この茶番をやめさせろ。


やりたければ、お前たちが自分の身体を使ってやれば良い。」


(魔王だ。魔王が降臨したんだ!かっこいい......。)


「それから、わが.....いえ、明周殿下。陽光殿下。おふたりには口も耳も無いのですか?」

「どっちが主力でどっちが支えるか、くらい自分達で話し合って下さい!」


(そうだよな!俺も叔父上ともっと話がしたい!)


その時俺は気付いたんだ。


(コイツ本当に文官?あれ?なんか普通の文官と装備が違う?

何で帯剣してるんだ?)

これが俺と魔王、周のファーストコンタクトだった。


ーーーーーー


「殿下、物には順序と言うものがあります。明周殿下の最高火力に殿下が接触となると.....。」


俺は魔王に何とか渡りを付けたくて側近にお願いしたんだ。

でも、帰ってくるのはこんなありきたりでどうでもよさそうな返答ばかり.......。


もうどうでもよくなって、やぶれかぶれで本人にお願いしようと叔父上の宮に出向いた。

叔父上の宮は何というか、簡素だ。

スッキリしていると言えば聞こえはいいが、異常に物が少ないんだ叔父上って城で大事にされてないのかな?


「おや陽光。ちょうどよかった......。

周の提案で、今度凱のところで昼食会をするんだ、一緒にどうだろう?」

(え?叔父上が伯父上のところで昼食?そんな素敵なイベントに俺も誘ってもらえるの?)

俺は本当に嬉しかったんだ。


ーーーーー

毒鍋?

待ちに待った昼食会に魔王の姿はなかった。

それでも和やかに始まった昼食会、割烹着にあねさん被りの料理人が手際良くフグ鍋をこしらえていく。

食欲をそそられるよい匂いだ。

「皆様、しっかりと処理しているつもりですが、

痺れなどありましたら、教えて下さいね命に関わりますから......。」


一瞬思考が止まる。

伯父上を見た、苦虫を噛み潰したような顔で、料理人を見ているが、それ以外の動きはない。

叔父上を見る、ぽかんとして料理人を見た後、気まずそうに目を泳がせている。

爽を見た、引き攣った笑顔で料理人を凝視している。


この無礼極まり無い料理人を注意する大人が誰もいない。


「殿下、そこの勇が食したものからお召し上がりください。」

側近の声に俺は小さく頷く。


「それは、毒見.....。」

叔父上が困惑している。俺たちは王族なのだから当たり前のことじゃないのか?


「あ....兄さまは白菜から頂こうかな......。」

爽の一人称が妙な事になっている。


「勇、タンパク質好きだったよね!」

料理人が勇に毒魚をふんだんに入れた皿を勧めている。


(あれ......?なんかこの料理人......。いや、でも、魔王はこんなに小さくない筈だ!)

(だって魔王だぞ?凱伯父上や爽に膝を着かせた最強がこんな俺より小さいとか.....。)


俺は料理人を凝視した。


「陽光のイメージと普段の周は乖離が大きかったかな?」

毒魚が入った皿を手にした明周叔父上が困った笑顔で俺を見ていた。

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