王都大騒ぎ、その後、毒鍋。
お越しくださりありがとうございます。
よくこんな会食が実現したものだと爽は思う。
剣士棟の一画、凱の執務室。
そもそもがアルカナ最古参の名家出身者である凱の執務室は、爽のものとは扱いが違う。
面積も大きく隣接する部屋数も多い。執務室、仮眠室、資料室、道具部屋などは普通だが、個人のキッチンやダイニングまで揃っているのだ。
ほぼ自宅のようなそこに、がちがちに防音と侵入不可の防壁を張り巡らせた会場。
そこに、明周、陽光、勇、そして爽と部屋の主である凱がいる。
それに給仕の周を入れた6人と王族の側近数名がゆったりと寛げる大きなテーブル。
その中央で周が上品な良い匂いのする土鍋料理を作っている。
皆に箸と取り皿を配り、薬味とポン酢も勧める。
「道場の宙先輩から送られた素材を鍋にしてみました。淡白でいながらも味わい深く魚とは思えない噛みごたえが魅力のフグという毒魚だそうです。締めには雑炊が最適とのことです。」
美味しいですよ、たくさんお上がりくださいね。
しっかりと処理しているつもりですが、万が一痺れを感じたらお知らせくださいね。命に関わりますから。
周は火の加減をしながら笑顔で皆に鉄砲鍋を勧めた。
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「殿下先ずはそちらの勇が食したものから召し上がってください。」
「え.....それって毒見?」
「ハハハ、兄さまは白菜から貰うとしよう。」
「勇!タンパク質好きだよね。沢山よそってあげるよ。」
テトロドトキシン怖さに、恐る恐る始まった会食も箸を進めるうちに怖さより美味さが勝ってくる。
同じ鍋を突きながら雑多な話に花が咲く。
明周と陽光も腹を割って話が出来たようだ。
そんな中、凱が給仕をする周に静かに声をかける。
「ちび助、あまり驚いてなかったな?」
「凱様が我が君と対極にいたことをですか?」
凱のお椀におかわりの雑炊をつぎながら周が答える。
「いつ気付いた?」
それを受け取り刻みネギと海苔を散らしながら凱が問う。
「えっと.....ずっと前から.......。と言えば良いのでしょうか。」
味変の七味を進めながら周がふっと遠くを見る。
「懐いていると思っていたが。」
七味は好かんと断りながら凱が呟く。
「好きですよ、今も。尊敬もしています。
でも、凱様は我が君の味方ではないのだろうな、とも思っていました。」
凱が無言で理由を促す。
「あなたは私を周とは呼ばない.....決して。」
周がじっと凱の顔を覗き込む。
「ほう.....。やはり惜しいな、あの火事の日に何故お前の側にいたのは、そこのボンクラ次男坊なのだ。」
凱が忌々しげに明周に目をやる。
そんな凱を見て周は首を振る。
そう単純な話ではなかったのだと。
「火事場で子供に名前を与えた、だけではないのです。
大火事の後に、あるいは凶事の根元かもしれない者に声を掛けてくれたのです。
それは、誰にでも出来る、安い善意ではないと思いますよ。
それに、
名前だけではありません。
あの日、私は我が君より全てを賜ったのです。
存在も未来も生きる意味さえ......。」
「内緒ですよ。」
あまり忠義が重いと嫌われてしまうそうなので.....。
周が凱にふわりと笑う。
皆様、次回も付き合い下さいね。




