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王都大騒ぎ

お越し下さりありがとうございます。前話がとても短い物だったので、もう一話どうぞ。

「多分......書けない何かが起こったんだよ。」

「何だよ、それ。」

「分からない、でも急ごう。」


唐突に届いた理由も記されていない帰城の要請に勇と周は王都に急いだ。


道すがら考えを巡らすがこれと言った答えは見つからない、ただ焦燥感だけが募る。


ーーーー


「陽波陛下が 崩御された?」


「後継者の指名が曖昧なままで......。」

「声が大きい、言葉も選びなさい。」


現在候補は二人


お一人は

明周殿下、陽波陛下の次男。


お一人は

陽光殿下、亡き天陽殿下の長男、陽波陛下の孫。


明周殿下は陛下のお子とはいえ、アルカナ王家の長子に贈られる陽の字を持たない。これは真の後継に在らず。


陽光殿下は後継の証し陽の字をお持ちではあるが陛下のお子ではなくお孫様。


明周殿下は運動オンチだが人柄は良く勤勉。

陽光殿下は剣術に長け利発だがやや年若い。

決め手に欠ける二人の後継者。


臣下の意見が二つに割れる、互いに引かないばかりか不毛な足の引っ張り合いまで始める始末......。


ーーー白黒の決闘ーーー

どちらが次代の王に相応しいか、己が剣で示せ。

剣士の国のアルカナの己が正義の示し方。


陽光陣営は怪気炎を上げ。

明周陣営は窮地に立たされた。


何とか巻き返さなくては.....。

代理で良いだろう。大事な次代を怪我で失う訳にはいかない。

明周陣営も必死だ。


代理の剣士。

陽光陣営からは凱......。


爽.....。しかいないか。

明周陣営はやはり窮地に立たされる。


ーーーー


勇と周が王都に着いたのは、まさにそんなタイミングだった。

いつもと変わらない大通りに魔物の急襲なのではないことに安堵しながら二人は城へ急いだ。


「周くん.....。」

城に着いた周達を出迎えてくれたのは鈴。

泣きそうな顔で遅かったと、剣士棟の方を指差す。


「ごめんな、にいちゃん何にもできなくて......。」

剣士棟までの道すがら凡は白黒の決闘が行われている事を教えてくれた。


「はあ、白黒の決闘だって?まじかよ。」

勇が盛大に驚く横で周は押し黙っている。


「負けたら、腕か脚の腱を切るやつだろ.....。誰だよ、そんな馬鹿げたことするやつは?」


「凱様と爽様です。」

凡が勇の怒気に怯えながら、助けを求めて周の方に目をやり更に青くなる。


「理由は?」

見たこともないほど冷たい目をした周がそこにいた。


ーーーー

凱が大剣を爽めがけて振り下ろせば、爽はそれをギリギリで交わし長剣を凱の喉元めがけて突きつける。

凱が爽の突きを交わすとその姿勢のまま横一文字に爽の首を狙う。

ーーーー


アルカナの守護者がお互いに、相手の命を刈り取るつもりで繰り出す攻撃、あってはならない死闘が今、目の前で繰り広げられている。

理由は王位継承.....。


アルカナの守護者同士が削り合っているのだ、この不安定なアルカナで......。


アルカナの安定の礎である筈の存在がアルカナの護りの力を半減させる、最悪は無効にする。

そんな愚行を犯させられている......。勿論、本人たちの意思では無い...筈だ。


(重鎮たちは、馬鹿なのだろうか?)


周は自身の中の何かがぷつりとちぎれた感覚を覚えた。


ーーーー

『言霊』 『加圧』

練習場の空気の重さが変わる。


前回の加圧とは比べ物にならない圧力が広範囲に加わる。


爽や凱が立っていられない圧力が、重鎮や側近、あろう事か王族にものしかかる。


「これがアルカナの政治ですか?」

周が重鎮たちに目をやる。


「今、アルカナがどれ程不安定かは、先日のプレゼンで説明しましたよね?」


「よりにもよって、白黒の決闘などと。

何故、兄さまか凱様が剣を握れなくなったタイミングで、脅威が膨らむと、想像出来ないのですか?

王位継承?

すり替えないで下さい。

勢力争いですよね?


王族を、剣士を、あなた方の玩具(おもちゃ)にしないでいただきたい。」


周の瞳が鈍く金色に光る。


「今すぐ、この茶番をやめさせろ。


やりたければ、お前たちが自分の身体を使ってやれば良い。」


重鎮たちはただ血の気の引いた手で悔しげに地面をかいた。



「それから、わが.....いえ、明周殿下。陽光殿下。おふたりには口も耳も無いのですか?」

「どっちが主力でどっちが支えるか、くらい自分達で話し合って下さい!」


先程よりは幾分トーンダウンはしているものの、周の憤りは収まってはいない。


そもそも、周の概念に政治的駆け引きなどというものは、ほぼ存在しない。


小学生が学級委員長と副委員長を決めるように、次期王とそれを支える王族を決めろと迫る、周の自論は無茶苦茶だ。


しかし、その怒気と物理的な気圧で二人の王族もその側近達も息をするのもやっとの状態。

反論の『は』の字も出せない。


そんな中違を唱える声がした。


「詭弁だ!」

凱が立ち上がっていた。


腕や足どころかこめかみの血管まで盛り上がっている。


圧力を精神力と筋力で凌駕したのだろう。


「お前はそこの次男坊にしか支(つか)える気はないだろう。


次期王が、我が陽光殿下になった時、お前は今と同じ気持ちでいられるのか?


お前の我が君が他者に首を垂れる現実を受けれ入れられるのか?」

凱の正論が続く。


周が笑う。


「何を笑う?勝者の余裕か?」

憤る凱に周が首を振る。


「我が君の忠誠心ごと、肯定するに決まっているではないですか。」


「....やめなさい。」


「我が君が王を望むならそれに従って我が君の道を整えます。」


「周、やめなさい。」


「我が君が陽光様の臣下にとお考えなら私はそれに従ます。」


「それ以上、喋らないでくれ!」

『言霊』 『強化』

爽が立ち上がる。


「勇お前もサボってないで立ちなさい。」


「えー、やだよ.....。めんどくせー。」


重力に抗うことなく寝そべっていた勇が強引に引き起こしてくる爽に反抗する。


(あれがこれ以上不穏なことを口走る前になんとしても撤収しなくては!)



「ただし、陽光様が我が君に害意を向けるなら.....。

遠慮なく片付けますが。」


何を当たり前の事を聞くのだと、平然とした顔で周は凱を見る。


(ああ、なんて事を!)

爽が周を羽交締めにする。


「何なのですか?兄さま。私は、凱様とーー。」


「良いから。黙りなさい!」


「勇!笑ってないでこの子の口を塞ぎなさい。」

勇がへいへいと言ったふうに周の口をその手で覆う。


「......!」

周はバタバタと手足を動かすが、爽と勇に抑えられては、大した反抗すらできない。


(この危険物を何とかここから遠ざけなくては!)

「凱、私は少し用事を思い出した。後の始末は、頼んでも良いかな?」


「ん?あっ....ああ、そうだな、分かった......。」

すっかり毒気の抜かれた凱が返事を返す。


爽に引きずられながら練習場を後にする周は何か言いたげに爽を見上げているが、爽は周の意見など全く聞く気は無いようで。

そのまま回廊へと歩を進めて行った。


程なくして、練習場の圧力は平常値に戻ったが、その事に皆が気づくには更にもう少しの時間がいるようだ。


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