やわらかい結界の構想2
お越し下さりありがとうございます。短いですが、お楽しみください。
信の部屋にて。
慣れた手つきで茶を注ぎながら周がぽつりぽつりと自身の考えを綴る。
「元々考えていたことなのです。
アルカナの地は人が落ち着いて暮らすには過酷過ぎると....。
もし、お師匠様が倒れたら?西の山の結界が破られたら?
勿論私も全力で事態の修復に努めるつもりですが......。
懸念はそれだけではありません、王都の神の加護の薄さもです。
もっとも大地の女神に近いはずの王都がなぜあんなに神の気配が希薄なのですか?
アルカナの民を愛してやまないと言われる女神が何故?もうずっと前から言霊を授けてくださらないのですか?
大地の印はここ20年近く誰も授かっていないではないですか。」
周は疑問を吐きだす。
(今いる大地の印の言霊使いの言霊もどこか大雑把で、予め決められた目録をなぞる様な融通の効かない仕様が多い。
私の言霊も異質かもしれないが、大地の印の言霊使いの言霊も異質だ。)
「お前は.....。そんなことを考えていたのだね。」
信が静かに笑う、少し困った様に少し誇らしげに。
ーーーー
「私は、偉大な誰かが居なくても機能する護りを要に据えたいのです。
お師匠様、その為にお力添え下さい。
西の山の....。お師匠様の気で強化され神域と化したこの辺りの神もどき。
アルカナ全土に点在する土着の小さな神達。
そういった局地的で小さな力を丁寧に繋ぎ補いあう。
繋ぐ力は人々の信仰心ではなく。日々の感謝の心です。
これにより、相乗的に力を増幅させて、
今、アルカナに有るものだけで末永く回る護りのシステムを構築したいのです。」
自分の言う、やわらかい結界とはそういう物なのだと周は信に訴える。
「......何を言っても、もう引く気はないのだろう?
反対する気もないのだがね.....。
好きに動きなさい。ここはお前の故郷ではないか、皆お前に好意的だよ。」
「ありがとうございます。」
許しを得たと同時に一礼だけ残して周は部屋を後にした。
信は短いため息をつく。
生真面目で一途な弟子を案じずにはいられない。
「周、どうか約束しておくれ。決して自分を後回しにしないと。」
誰も居ない空間に、信はポツリと呟いた。




