やわらかい結界の構想1
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西の山。
「ほう、聖火の資質を示せと?」
王都からひょっこり帰ってきた周の話を聞いて信の表情が変わった。
「お師匠様、好都合なのです。」
周はふわりと笑いながら話を続ける。
以前からやりたいと思っていたことを実行するだけだと。それを国が後押ししてくれるなら、むしろ好都合なのだと。
「......。」
「自立稼働型の結界を作りたいのです。」
まったく機嫌を直す気配すらしない信に周は説明を続ける。
「お二人とも、そんなに怖い顔をしていては、子供達の箸が進みません。」
難しい話は後にして、食事を済ませろと桃が笑顔で圧をかけてくる。
周が王都へ巣立った後の信の道場の内回りの仕事。
これを、仲間と協力してこなしてきたのが桃だ。
元々幼い時から周に着いて回っていた桃がそのやり方を受け継ぐのは自然なことだった。
もっとも、
周が好き過ぎる桃が遂には言霊まで取得してしまったことは、周囲の予想を超えていたが。
何より、
道場の日常はつつがなく回っているのだ、文句など言ってはいけない。
穏やかな笑顔で道場内をじわじわと自身のテリトリーに変えていく桃と、その手管を無自覚に伝授した周を眺めて信は茶を啜る。
(一体誰に似たのやら......。)
ーーーー
子供達が就寝した後の台所。
桃と周それに信が囲炉裏を囲んで話しをしている。
「すごいね桃は言霊使いになったのだね。」
周が桃を褒める。
「......前のようにぽんぽんとはしてくれないのですか?」
桃が不服そうに頭をこっちに向けてくる。
(あれ、良いのかな?
鈴さんは、むやみに女の子に触れるものではないと教えてくれたけど.....。)
更に頭を突き出す桃に負けて周は桃の頭をぽんぽんした。
「よく頑張ったね、桃。」
「はい。もの凄く頑張ったのですよ。」
桃が満面の笑顔を返してくれた。
ーーーー
「私も菱が良かったのに.....。」
カンカンと沸騰するヤカンに水を足す周に桃が愚痴る。
「はは、菱は両手印だから、剣士が授かるには少し扱いづらい印だよ。」
周が宥める。
「だってー。あー兄様と一緒が良かったんだもの......。」
桃が言霊使いらしくない言葉使いで盛大にアルカナの神々に悪態をつく。
恋する乙女の気持ちくらい汲んで欲しい。
あー兄様がどれくらい鈍ちんかわかって欲しいものだと、桃はぐずぐずと周に愚痴る。
「それに、私は剣士にはならないし。」
桃がどこか達観した表情でポツリと呟いた。
眠気が過ぎてぐらぐらと船を漕ぎだした桃を布団に寝かせた周が、囲炉裏側の信のところに戻ってきた。
二人の話はまだ続く。




