池の精が周を構う理由
お越し下さりありがとうございます。短いですね、ごめんなさい。
西の山、信の道場裏の大きな池にて。
「そうか、まあ......。知恵を授けてやっても良いが、あまり面白いことにはならぬぞ。」
池の精が珍しく渋る。
しかし、周も引くわけにはいかないのだ、この結界が完成すれば、皆の安全な日常の確保。
これが画期的に容易になるのだ。
あの手この手のプレゼンの末に周はどうにか池の精から妥協案を勝ち取った。
帰り際にふと気になり、池の精に周は聞いてみた。
何故ここまで良くしてくれるのかと。
池の精は一瞬面食らった様だったが直ぐに気持ちを切り替えた様で、ニヤリと笑いながら短く答える。
「顔。」
今度は周が固まる。
「.....えっ?は?顔?」
何を言い出すのかと周が混乱していると池の精が言葉を続ける。
「そうじゃ。顔じゃ!」
「お前の顔は古い知り合いを思い出す。その瞳も髪もな。」
池の精の言葉に周が心底嫌そうな顔をする。
それは、黒衣の魔女の事ではないのかと。
その言葉に今度は池の精がイラリとしながら答える。
「あんなモノと一緒にするでないわ、痴れ者が!」
池の精の感情に呼応する様に水面が騒めく。
「良いか、あれは魔力の圧縮が瞳を金に光らせているのじゃ。それに、髪は黒いでなく暗いじゃ。どちらも紛い物じゃ。間違えるでないわ!」
池の精がぷりぷりと怒り続ける。
仕方なく周が理解した合点がいったと相槌を打つ。
見え透いた相槌じゃと言いながらも機嫌を直す池の精。
「ところで、お前、髪を伸ばしてみる気はないかえ?」
「はあ?」
本気で変な声が出た。
「良いじゃろ?せめて肩まで、いや、腰あたりまで。
絶対に似合うぞ。」
池の精の誰だか知らない知合いへの推しっぷりに少々げんなりしながら周は池を後にした。
お付き合い頂きありがとうございました。とても短いのでもう一話、今日中上げますね。




