脊椎反射あるいはパブロフの犬
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「さて、この話はここまでということで良いかな?」
爽が冷ややかな笑みを浮かべて城の重鎮たちを見る。
アルカナの守護者はアルカナ剣士の頂点に位置しアルカナの強さの象徴でもある。
城の中でもそれなりの発言権もあり、ある程度の権限もある。
しかし、それは剣士としてである。彼らの持つ政治的な影響力は小さい。
他国に比べれば剣士の立場が強いとはいえ、政治の世界の真ん中を悠然と歩いてきた城の重鎮に物申す事などほぼない。そもそも関わりもほぼ無いのだが......。
人当たりがよく世渡り上手な爽がこの重鎮たちとやり合うなど決してあり得ないと誰もが思っていた。
しかし、可愛い弟弟子が彼らの政治の駒にされる、あまつさえ捨て駒にされるなど看過できない。
爽は無謀とも言える勝負に挑んだのだ。
(周......。兄さまはそりゃあもう、頑張ったんだよ。帰ったら褒めておくれ。)
聖火候補まではもう仕方ない、でも選考には慎重に......。当人の意思も含めて、少なくとも数年はじっくり検討する。
我ながら、よく引き出したと褒めてやりたい。
こんな、たぬき爺さんとの駆け引きなど金輪際ごめん被ると爽は思う。
「ときに、ちび助。アルカナ三将は王子宮へフリーパスだぞ。」
爽の横でニヤニヤと成り行きを見守っていた。凱が絶対に口にしてはいけないパワーワードを周に耳打ちする。
「.......。」
周は大きな目をこれでもか見開いて凱を見つめている。
(大丈夫、勇を通じて、周には言って聞かせてある。決して「はい。」とは答えるなと。)
爽は内心の動揺を悟られない様に言葉を急ぐ。
「この話はもう終わ......。」
「それは、我が君のプライベート空間にと言う事でしょうか?」
周が見事に食い付いた......。
(あっ。終わった。)
爽は自分が積み上げたものが一瞬で瓦解したことを悟った。
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最悪だ、先程まで反対していたツケが全部回ってくる。
次代の守護者の教育権を重鎮たちが要求してきた。
乗り気で無い猛火様に任せるのは申し訳ないらしい。
何を考えているのか凱は楽しそうにかかかと笑う。
(すまない。周、兄さまはもうお前の防波堤には、なってやれないかもしれない。)
爽が諦めかけたその時、今日の議事録を担当していた文官の中から声がした。
「守護者候補おめでとう。私も上司として鼻が高いよ。」
愁だった。
側の文官に何やら指示を出し、愁は集団の中から歩み出る。
前髪を整え、トレードマークの眼鏡をかけ直し凱と周の間に身を滑り込ませて、周のその肩に手を置く。
一拍おいて。
先程の文官が皆に書類を配る。
書類を持つ狸もとい重鎮たちの手が震える。
「さすが、仕事が早いね。
皆さんこれでいかがですか?」
愁が聖火就任の正式書類をピンと指で弾く。
「ふふふ。王都管理局、王都管理室所属アルカナの守護者、聖火。就任おめでとう。周くん。」
重鎮達も黙るより他なくなった。




