体力勝負?いいえ、気力の勝利です。3
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徐々に土埃が収まり凱の居た辺りが皆に視認できる様になってきた。しかし、うず高く積もった礫に邪魔されて、そこにいる筈の凱の姿が見えない。
「あぁ.....。」
剣士たちが膝から崩れ落ちた。
言いようのない無力感が剣士たちの中に広がる。
「凱様、降参でよろしいですか?」
周の緊張感のない声がむしろ嫌みに響く。
(魔女め......。)
剣士たちの明確な憎悪が周に向かう。
「ここまで寸分違わず、まわりを埋めれては身動きも取れん。降参だ!」
凱の大声が聞こえた。
「凱様?.....凱様!」
数人の剣士が、石のナイフの中に飛び込もうとする。
「ダメですよ。怪我をしてしまいます。」
少しお待ち下さい。と周が礫を消滅させる。
やっと身体の自由が戻ったと、跳ね起きた凱が大きく伸びをした。
その凱にしがみつきおいおいと男泣きする者が数名、まわりでその光景に安堵する者がその数倍。
(ああ、凱様は慕われていらっしゃるんだな。)
それを少し離れた場所で眺める周。
(さて、ここからだな。)
周は感動の生還劇を繰り広げる剣士たちを横に置き、その他の剣士に声をかける。
「皆さん、よろしいですか?」
出来るだけ、重くならない感じに明るめの声色で皆に棄権を促してみる。
「アルカナ最強と互角に渡り合う私と今でも本気で手合わせしたい方は何人くらい、いらっしゃいますか?」
実力を見るというなら、もう十分だろうと周は思う。
思った通り、ちらほらと試合はしなくて良いと言う剣士が現れて、それに釣られた者も巻き込んで志願者の数は随分少なくなった。
勿論そんな言葉が全く通用しない者達も居るが。
「このクソ文官。」「悪魔め」
意外なことに、凱のまわりのを固めていた剣士たちの闘志が高い。剣士たちは真剣での試合の申し込みを口々に叫ぶ。
これは、困ったな......。
「えっと......。大変申し上げにくいのですが、皆さまはもう失格になっていらっしゃますよ?」
なにせ剣士たちが自ら決めたルールだ、一対少数
団体戦は認めないと......。
明らかに大人数の彼らに事実を伝えるが凱のまわり剣士たちは聞かない。
周が困っていると凱が先ほどの礫の打ち込みについて話し出した。
身動き出来ない程にピッタリと打ち込まれた石のナイフ。
しかも、凱自身は怪我も無い。あの鋭い石ナイフをその様に自由自在に打ち込めたカラクリが知りたいと言うのだ。
「からくりも何も、きちんと見ていたからですよ。」
流石にアルカナの守護者に怪我をおわせる訳にはいかないと。
礫の一つ一つを全て手動で操っていたと、だから凱様から目を離せなくて、皆さまへの対応が雑だったかもしれないと周はいう。
凱のまわりの剣士の認識が少し変わる。
その変化をチラリと確認しながら凱が続ける。
今回はまんまとしてやられたと。
しかし、次回はこうは行かん、再戦の約束を周からもぎ取り。
「ちび助、うちに来い。」
本気で考えろ、と豪快に笑う。
お陰で、凱のまわりの剣士のややいびつな闘志も多少はトーンダウンしてくれた。
何故、凱が周を買っているのかは剣士たちには理解できないが、理解する努力は必要なのかもしれないと思い直してくれた様だ。
ーーーーー
どうにか人数を半分ほどまで減らしての一対総当たり戦。当初の予定ほど人数が減らなかったのは誤算だった。
アルカナの守護者を下せば、おおかたの剣士は手を引くと考えたが、強者と剣を交えたいと考えるのは、剣士の性なのだろう。
ーーー
開始の合図の時間が惜しいと一人退ければ一人加わる、そんな方法で試合は始まった。
剣士が間合いをはかろうとすれば一足先に懐に入りんでコツンと頭や首元に剣を当てる。
勢いよく斬り込んでくる剣士は軽くいなして体勢が崩れたところで背中に剣を軽く当てる。
周は比較的セオリー通りの動きで剣士の戦闘不能判定を稼いでいく。
隙なく護りを固めて間合いをはかる剣士これは少し厄介だ、夕暮れまでにこの人数をさばくのだから、一人に多くの時間は割けない。
経験豊富で実力の高そうな者をさり気なく避けながら、剣士の数を淡々と減らして行く。
だから、今周が対峙している剣士は皆、
実力の確かな者たちだ。
周は剣に気を纏わせる。
大技が来る!誰もがそう思い渾身の力をその筋肉に注ぎ込み身構える。
ーーーー
剣士としては、小柄でやや体力に劣ると考えていた周ーーもう文官などと呼ぶのは失礼だ彼は一級の剣士だーーの善戦にベテラン剣士は違和感を覚える。
もう息が上がってもおかしく無い頃合いだ。
大人数で余裕のある筈の自分達が、息の上がるのを自覚し始めたのだから。
若さか意地か目の前の周の息が上がっている様には見えない。
それどころかランダムに組まれた筈のメンバーはじわじわと未熟な者から戦闘不能判定を受け、間引かれて行く。ここに残ったメンバーは巧みに操作され意図的に集められたような気さえする。
気が付けばまわりは、自他共に認める実力者だけしか残っていない。
侮れない.......。
対峙する周が剣に大きな気を纏わす。
大技が来る!
歴戦の剣士たちは経験則から、渾身の力をその身にみなぎらせる。筋肉万歳!身体中の筋肉を一気に活性化させる。
異変が起きた。
(.....!)
いきなり身体から力が抜ける、体力切れ......何事だ?
訳が分からずまわりに目をやれば仲間の剣士は皆一様に地面に膝をついている。
手に馴染み身体の一部となったはずの愛剣が驚くほどに重い。
「皆さま、戦闘不能で構いませんか?」
周が悪い笑顔で声を上げた。
「降参する前に教えろ。何をした?」
「......訓練場の理を少しいじっただけですよ。
体力と気力を入れ替えた。ただ、それだけです。」
と周は笑う。
「最初から、皆さまは体力のつもりで気力を使っていらしたのですよ。」
「卑怯者!」
「なんと勝ち汚いことを......。」
「それでもアルカナ剣士か!」
方々から上がる非難の声に周は淡々と答える、当然だと言う様に。
「格好良い戦いをして、仲間を危険に晒すくらいなら、勝ち汚くても勝ち筋を狙います。」
気力切れで動けない剣士に、周はふわりと気力を譲渡してまわる。
(文官の手じゃない....。これは何年も鍛錬を続けた剣士の手だ。)
剣士たちにもそれはわかっている。ただ、気持ちがついて行かないのだ。
そんな剣士の変化を見ているのかいないのか、周は静かに思いを綴る。
「勝つためなら、何でも使いますよ。護るべきものと仲間の命以外なら。」
ーーー
さて、皆さん動けるなら、自力でここを空けてくださいね
私は残りの剣士の皆さんを少し煽ってこなければいけませんので。
屈託のない笑顔とともに残る剣士の方へと向かう周を見送りながら歴戦の剣士達は複雑な表情を浮かべた。
お楽しみ頂けましたか。またのお越しをお待ちしています。




