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アルカナ戦記の功罪

見ていただき、ありがとうございます。

馬鹿馬鹿しくも愛おしい子供たちの世界をどうぞ。

アルカナ戦記

 月刊アルカナで連載中の、子供向け、痛快娯楽歴史小説もどき。

とにかくここ数年、子供たちの心を、わし掴んで、いっこうに手放す気配がない。

虚構あり設定盛り過ぎありの、だったら良いなの盛り盛りファンタジー時代劇。

まるきりデタラメと言い切れないのが実にいやらしい。


このヘンテコ戦記の流行で迷惑を被っている老人が一人。


 そもそも私はこんな軽薄でも皮肉屋でもない。

ほんとに勘弁してくれ。

人生最終盤間近になってこんな赤っ恥小説のメインキャラクターにされようとは......。

せめて自分が死んでから関係者のいない世界で、そう100年くらい後に連載して欲しかった。

と信は密かに思っている。



今日も子供たちは、かの戦記ごっこに夢中だ。


俺、頼さま!

僕は信さま!

じゃあ王様でいいよー。


大人気はやはり派手なアクション担当の金の瞳に明るい赤毛の魔法剣士、(らい)

ニヒルな魅力の長髪の美男魔法剣士、(しん)である。


重要人物ではあるが、(けん)や主君の陽威(ようい)の人気はちょっと遅れを取る。

それでも各々が、お気に入りのキャラクターになりきり、小説の中の、たいそうなセリフを叫ぶ。


悪役も持ち回りだ。こっちの演技もなかなかで、大変悪そうである。


(あまね)、いつも有り難う、で今回も頼むな。この作戦(遊び)の成功も失敗も全てお前にかかっている!」


皆の熱い視線に周は大きく頷き返す。かなりやり甲斐を感じているようだ。


母屋の縁側にて

「師匠...あれは、なんですか?」


「ああ。子供たちがまた例の小説ごっこを始めたようだね。」


「いや、ですから。あの派手な演出は...。」


子供のチャンバラごっことはいえ、剣士の卵たちだ。殺陣は素晴らしい。

慣れているのだろう。

引き際攻めどころ全てにおいて安心感がある。

あれなら、勢い余って誰かが怪我をする事もまずない。

これは良い......。


ただ、まわりが、パノラマで繰り広げらるエフェクトが、すごい事になってる。

ただの棒っきれ同士のぶつかり合いに、カキンとかキィーンとかと金属音がする。

振ればゴォと音がしたり、風が巻き起こったりしている。


必殺!『蒼天破邪絶影剣』

最早これまでか!『天地鳴動・八百万雷神連牙』

もはや、何がしたくて、何を斬る技なのかすら分からない技名がいたるところで飛び出してくる。

大人の目から見れば意味不明なこの混沌の極みだが。子供たちのドヤ顔がこれが正解だと雄弁語っている。


悪役の子供たちも堂に入ったものである。


ふふふ、

見るがいい!これぞ奈落の抱擁!

ハハハ!かかったな。千夜絶望網発動!


何を抱いて、何を取り囲みたいのやら。


『言霊』 『可視化・共有』


誰かが手を天に向けて掲げれば、その周りの空気に色が付く。

棒を振り回せば、風が巻き起こる。


無数の閃光が放射線状に放たれる。

黒い稲妻が地面から湧き上がる。


これはもはや天変地異ではないか......。


ノリノリでチャンバラごっこをする、子ども達のまわりで

明らかにおかしい過剰演出が繰り広げられている。


多分、信の道場どころか、西の山全体がぼんやりと周の気に染まっているのではないだろうか。



近頃はこの悪ノリヒーローショーの見物に地域の住人がちらほらと現れたりもしている。

そのうちあの忌々しい編集部の連中もノコノコとやって来るかもしれない。



「注意するタイミングを少し逃してしまってね。」

子供の集中力を少し舐めていたのだよと、信は少し諦めたように冷めたお茶をすすった。


お付き合い下りありがとうございました。

アルカナ戦記......今は罪しか見えませんが、ずっと先の未来で大きな成功をもたらしてくれます。

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