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体力勝負?いいえ気力の勝利です1

お越し下さりありがとうございます。

 剣士の執務室にしてはスッキリと配置された家具。

華美ではないが実用性一辺倒といった風でもない調度品。


この部屋の主、爽は机の前で頭を抱えていた。


「あの子はまだ17だぞ.....。」


王命だった。


これまでも爽は水面下でかなり、この類いの話を握り潰してきた。


しかし、王命となれば話は変わる、受けるより他に道がないのだ。


アルカナの守護者ーーアルカナ三将は現在二人、業火(ごうか)の凱(がい)と猛火(もうか)の爽(そう)。

聖火(しょうか)は長らく空席だ。


この空席の補充に周の名が上がる......。


聖火ーー初代言霊使いにして最強の守護者。


言霊を自在に扱い。剣技に長けた者。

アルカナの民が抱く聖火のイメージに

周はあまりにも近い。


だからこそ、まだ早いと爽は思う。


このタイミングで明周殿下の信奉者である周がアルカナ三将など、政治利用の匂いしかしない。


そして、あの子は.....。殿下の為と耳打ちされれば、一瞬で全てを投げうつ。


どうしろというのだ。爽は窓の外に目をやる。


周の聖火候補の噂に真っ先に猛反対したのは意外にも剣士達だった。


あんな性悪文官を俺たちは認めんぞ!

また、何か小細工したに違いない!

正々堂々!正面突破が我らの誇りだ!あの小僧だけは認めない!


兎に角、酷い言われようである。


本来なら反対派の爽には追い風の剣士の反発.......しかし、爽の心中は複雑だ。


(周.......。何をどうすれば、ここまで嫌われるのだい?)

この嫌われ方は愁よりひどいと、爽はまた頭をかかえる。



ーーーーー


「剣士なら己の居場所くらいその剣で示せ。」

いつになく凱が楽しげだ。


「私は反対なのだよ?しかし、拝命するしかないこの状況で、ここまで仲間から嫌われていては......。」

爽が悔しげに凱の提案を周に伝える。


現役のアルカナの守護者二人に囲まれて周は曖昧に笑うくらいしか出来ない自分を自覚する。


ーー小うるさい蝿など自分で払え作戦ーー

自身の部下を蝿に喩えるのはどうかと周は思う。


ーーーー

「......対総当たり戦ですか?」


「そうだ!代表とかじゃ納得出来ん!」


「その何日かに分けて。」


「却下!」


「千人くらいですよね。」


「却下!」「却下!」


「ルールが決められ.....。」

「却下!」


何をいっても、被せ気味に却下されてしまう。

お前の口車に乗って、どれだけ酷い目に合って来たと思っているだと。今後絶対にお前の言葉になど耳は貸さんと剣士たちは頑なだ。


さて、どうしたものか。


周は剣士たちとの会話の結果を書き留めていく。

1対総数、施行期間一日?.....。


「勿論、禁止、ですよね?言霊......」

「認めるに決まっているだろう!」

食い気味に剣士が叫ぶ。


「ふふ。」


言霊は使用可能。

周は条件の項に一行書き加える。


(思考実験成功。)

周の口角が上がる。


剣士の拳が震える。


ゴツン!

「そういう、ところだよ!何で今やる?」


勇が周の頭にゲンコツを入れ、爽が納得と同時に頭を抱えた。


「議論できるか否かの確認は大事ではないですか。」


頭頂部をさすりながら周が抗弁するが、勇どころか、爽までもがお説教をはじめようとする。


「兄さまが間違っていたよ。お前の対人スキルはいびつだ......。」

これが片付いたら、みっちりとお勉強会の時間を設けようね、周。と妙な使命感に燃え始めるしまつだ。


ーーーー

交渉を買って出てくれた勇に剣士のことは任せて、周は引っかかっていた質問を爽と凱にぶつけてみる。

この試合に二人は参加するのかと?

凱が大乗りで頷く横で爽は首を横に振る。任意なら自分は出ないと。


「久しぶりのちび助の本気だ。

勿論受けて立つとも!」

今回はバインダーとかでなく真剣なのだろうなと。


「流石にこの人数をバインダーでは捌けません。

私を何だと思ってらっしゃるんですか?」


(バインダー?)


爽は何気なく聞き流していた凱と周の話の中に不似合いな単語が飛び交っている事に気づく。


爽の視線に気付いた周が嬉しげに自身のバインダーを爽に見せながら語り出す。


「あっ、これ凄いんです。」


気を纏わせて強度を極限まで上げると

盾にも使えるし 打ち込めば結構な破壊力で.....。


ーーー

凱がうんうんと頷く横で愛犬の素晴らしさ可愛さを語る愛犬家の様に、バインダーの武器利用の素晴らしさを語り出す後輩剣士......いや......傍目には、悪辣文官以外の何者でもないな。


現役剣士がバインダー片手の文官に容赦なく叩き伏せられる様......。

これは遺恨が残る.....。


周、お前はこの数年、何をやっていたのだい?


うっかり目を離した自分が悪いのか、世渡りの基本の基を教えなかった師匠を恨むべきなのか、爽は分からなくなってしまった。

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