剣士棟の台所
お越し下さりありがとうございます。
最近食堂のメニューのグレードが上がった。
特に野菜の鮮度が見違えるほどに良い。
何となく味も濃い様な気がする。
何はともあれ、飯が美味いのはいい事だと仲間は言うが、勇の目は騙されない。
周だ。
あいつが絶対に絡んでいる、王都管理室の雑用(?)をこなし、剣士たちを適当にいなし、最近はあのボンクラのお守りまで買って出て、寝る間もないほどに忙しい周がなぜ食堂にまで手を出す?もしやあいつは過労死がしたいのか?
勇は首を傾げずにはいられない。
「こんにちは。」
今日のは少ないのですが.....。
調理場の勝手口から、周が顔を出すと剣士棟の食堂のおじさんが待ってましたと、駆け寄ってくる。
先日
アルカナ城外周の果樹園でタワワに実る柿を採っていた、食堂のおじさんの足場の脚立が外れてしまった。
注意して足場を選び倒れないよう気を付けていたのだが、倒れたものは仕方がない。
自分だってアルカナ男子だ、この程度、飛び降りて降りられないこともない。
柿の木の枝からおじさんは地面を見る。ただ、ほんのちょっとだけ腰や脚首の心配をしてしまうだけだ。
誰か通り掛からないかと待つこと数分。骨折覚悟で飛び降りるかと思った時に彼は現れた。
頭より高く積まれた書類の山を抱えながら、迷いなく柿の木に向かって歩いて来る文官の少年?
「少しお待ち下さい。今、足場を作りますね。」
少年というには大人びた、青年というには世間擦れしていない、純朴げな青年が脚立を固定して。
おじさんに降りて来ても大丈夫だと声を掛ける。
ーーー
おじさんが柿を採っていたと理解すると
その青年ーー周は手伝ってくれるという。
おじさんから必要な数を聞きふわりと木の枝にとぶ。
「あんた魔法が使えるのかい?」
おじさんは驚愕する。
「えっと.....跳んだだけですよ。」
困惑げに答える周に、なんの予備動作も溜めも無かったとおじさんが詰め寄よる。
すると、大きな声では言えないが、対人戦の対策なのだと周が教えてくれた。
大きな前動作が有れば、相手に次の動作を教えているようなものだと笑いながら。
近ごろの文官は仮想の敵を想定して行動するように教育されているようだ。
読んでいただきありがとうございました。もしよろしければ、評価やブックマークなどもお願いします。




