アロエその後
剣士棟の食堂にて
大量のアロエを横目に周と勇が湯を沸かしている。
ここまでアロエを運ぶのを手伝ってくれた凡は勇を見るなりどこかに行ってしまった。
「これが胃腸に良い?」
「らしい.....。」
「なんだよ歯切れが悪いな?」
「苦味がね下宿の方でも色々試したけど。
食堂で飲んでたお客様達がね、皮ごとバリバリいっちゃって。苦さで走り回るものだから......。
おばさんに営業妨害だから剣士棟でやれって、追い出されちゃった。」
失敗しちゃったと周は笑うが、勇は落ち着かない。
周が美味くないものを出してくる時はだいたい何か企んでいる......。この前の薬湯のように。
(そうだ!薬湯だ。)
「おい、お前。ああ言うの辞めろよな。なんか馬鹿にされたみたいでムカつくから。」
勇がちまちまとアロエのトゲを外す。
(やっぱり、バレてたんだ.....。)
周はプルプルをさっと湯通しして冷水で冷ます。
「でもね。正攻法じゃ、兄さまも室長も引いてくれないでしょ?」
「煽りに煽ってケムに巻くのが一番かなって......。」
周はポツポツと話し出した。
どうしても凡を悪者にはしたくなかったこと.....。
王都管理室の仕事にやりがいを感じている事。
少しずつ構築されていく人間関係に学びの機会を見出した事。
剣士の道に未練がない訳ではない。ただ、人の役に立つ方法は一つではないと自分は考えていると周は言う。
勇は頷きながら、相槌は打たずに周の言葉をきく。
「それにね、うまく言えないんだけどね.....。」
「もし、試験で推薦状が無事で、剣士になっていたら。
私は自分達が戦いやすいように場を整えてくれている存在に気付けたのかなって....。」
「鈴さんや他の皆さんの、室長の苦労も知らずに、魔物の討伐に向かって、感謝もせずにアルカナの安寧は守りきった。とか思ってたんじゃないかなって。」
立場の違いから来る視点の歪み、そこからくる認識の齟齬そして対立の構造。これをもう少し理解するまでは文官でいたいと周は言う。
正直言って周が言っていることは半分も理解できないが、本人が懸命に考えて出した答えなのは分かる。
だから勇は頷きながら聞くことしかできない。
あく抜きしてもアロエはやっぱり苦かった。




