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アロエの茂みで内緒の話(後編)

扉を開ける。

建具いっぱい、ぎゅうぎゅうのアロエの押し寿司しか見えない。

扉を閉める。

閉まらない、頑張ってギューと締める、なんとか閉まった。


「店主さま、あれは何ですか?」


「アロエだね。」


「ですから.....。いえ。

どこか俯瞰的に裏庭の見えるところは有りますか?」


「切り替えが早いね。」


店主が驚きながら二階へと案内してくれた。


「引き受けた事はきちんと致します。」


それが、当たり前だと周は言うが、凡にはちょっと納得がいかない。


ーーーー

二階の窓から眺めるとアロエの茂みは互いに葉や茎を絡み合わせて、とんでもない密度で裏庭を占領していた。


もう隣の家の庭に出ているものもある。


「雪で越冬できないのですよね?」


「あー、ちょっと改良したらね。耐性ができちゃった。」


へへっと笑う店主へ周が引き攣った笑顔を向ける。


(どうして、改良中の効果の分からない物を地植えにするのですか?)


言いたい事は山程あるが、感情に流されてはいけない。

周は出来るだけ雑にならないように店主に問いかける。


「店主さま。このアロエの改良時期や増え方の特徴など教えて頂けますか?」


「改良か.....。去年かないや一昨年か

なんか毎年倍々に増えるんだ....。」


ふふふと何だか楽しそうに笑う店主に周はふと既視感を覚える。


もしかして、側から見る私ってこんな感じなのでは?と。


(詩.....。こんな気持ちだったのかなぁ。)


ーーーー


「先ずは株分けから。」


店主から借りた園芸セットを手に、手近なアロエを地道にチョキチョキ。


地面が見えたところでショベルでガッポッと土ごと抉る。


適当な大鉢に放り込んで終わり。


終わりったらおわり。


この後が控えているのでここは、アロエの生命力に期待しよう。周は次の作業にかかる。


身動き出来る場所の確保。


手近なアロエをチョキチョキ。

チョキチョキ......。


「にいちゃんにもハサミを貸して!手伝うから。」


凡が見てられないと割り込んでくる。


二人でチョキチョキ......。


(......。)


二人でチョキチョキ。


「その......。凡さん、どうして剣を使わないのでしょう?」


「えっ?」

ーーーーー


色々と説得と面倒な約束を交わして、周は凡の剣を借り受けた。


(やっと作業が捗るな。)


周は剣を下段に構え、腰の位置を更に低く保つ、丁寧に気を剣にやどし、一振り。

庭全体に広がったアロエがほぼ一掃された。


「凄い......。」

凡は目を剥いた後に思い直す。

そうだ、あの信様の愛弟子だ、これくらい普通のことなのだと。


凡の驚愕をよそに、周はまた地味な作業に戻るハサミでチョキチョキ。ショベルでガッポッガッポッ。


(おい。)


周の足元で声がする、チョキチョキ。


(おい!)

無視してガッポッガッポ。


(無視はするな!)

周が嫌そうに手を止める。


(急いでいるのですが?)


(普通に話せば良かろう?何故念なのだ。)


(変に思われるからです。)


(.......。変わっているな、お前。)


(よく指摘されます。本題をどうぞ。)


(......。)


周は作業に戻る。


(待ってくれ。)


(どうぞ。)


(ワタシはずっと人の為に存在してきた。

前の土地でもここでも、増え過ぎたことも道から外れたことも認めるが。

不要な物と扱われるのは我慢がならん。)


アロエがポツポツと自分語りを始めた。


医者要らずと呼ばれて家庭で大事にされた。

更に大きくなり村の胃腸を守った。

もっと大きくなり村の怪我を癒した。


大きな山火事の後は自身が丸裸になるほどプルプルを提供して村人の火傷を癒した。

株分けされてここアルカナに来てからの苦労。

霜と雪への耐性の取得。

そして.....。あまりに大きく異次元の生命力を得て、アロエの異端となってしまったこと。


(これがワタシだ。お前なら、このはみ出し者の気持ちも、わかるだろう?)


(同情はしますが.....。分かるといわれましても。)


(待て、お前だって異端ではないか?)


(見ればわかる!魂の形が成すべきことの大きさが既に人外ではないか。)


アロエは叫ぶ。


周が顔をしかめる。

脳内で叫ばれると地味にうるさい。


(異端同士の情けでワタシのささやかな希望を聞き入れる心がお前にはないのか!)

アロエも必死だ。


周は、一まとめにされたアロエの茎や葉に目をやる。


(あれは、きちんと後から使いますよ。)


(信用ならん!ワタシの意識のあるうちに使って見せてくれ。)


根まで粉砕されて自我が消えてからでは判断できないと言うことらしい。


(そんなに焦らずとも、自身で確かめれば良いではないですか?)


(だから根まで粉砕.......。されないのか?)


周が大きく首を縦に振る。


(勿論これ以上増えないように庭に細工もします。

あなたの中の理も少しいじります。)


でも完全に駆除するつもりはない。と周はアロエに伝える。


(......お前。本当に変わってるな。)


(......よく言われます。)


周は苦虫を噛み潰したような顔で答えた。


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