周、見つかる
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王都管理室
本日の予定に書き込まれた
[17:15 来客]が周には光り輝いて見える。
怒鳴り込まれる事は多いが来客の少ない室長室に来客の予定。
大した客じゃない普通の茶とお茶請けで十分と愁は言うが、周としては最大限にもてなしたい。
やはり、お客様は少ないよりも多い方が良い。勝手に茶葉のグレードをあげると愁に叱られてしまうのでいくつかの工夫で周はお客様の満足感を上げていくつもりだ。
しかし、
お煎餅はお顔お見てから軽く炙ってお出しすれば良い。海苔などを添えればなお文句なし。
問題は茶器だ、王都管理室の茶器は正直言ってイマイチだ。ヤカンもアルマイト製の軽い汎用型だ。
できれば南部鉄瓶くらいは欲しかったが無いものねだりしても仕方ない。
とにかく、現状で一番美味しいものを.....。来客が嬉しすぎる本日の周はいつもより少しだけポンコツだ。
だから、うっかり見落としていたのだ、茶の数と椅子の向きが妙な事を。
「周くんお客様にお茶だって。」
室長が言ってたよと鈴に言われて周は驚く、お客様の来室を見落としてしまった。これではお煎餅を炙っている時間も茶器を温めておく時間もない。
それどころか既にお客様をお待たせしているだなんて、なんという失態だろうか、周は手早くお茶を用意して室長室に向かった。
軽く声をかけた後、愁の許可を待って入室する、今日の応接家具の配置はやはり変だ、お客様の姿が入り口からでは全く分からない。これでは男女の区別すら直前まで分からないな、と周は溜め息をついた。
「さあ、周くんこっちまで来て。」
珍しく奥の方の椅子を選んで座った愁が周を手招きした。
奥の方から茶を出せと言うのだろう。
周は言われるまま室長室の奥へと足を踏み出す。
衝立と観葉植物で妙に見えなかった、お客様の姿が周からも見えるようになる。
爽がこっちを見ている......。
(......!)
周は踵を返す。
「何故、逃げる?」
爽がその肩を捕まえる。
「お離し下さい。爽あ...爽様。」
周が逃れようともがくが、両手で持っている盆が邪魔をして、爽の腕を払い除けることができない。
周が言い放った自分への敬称に爽の表情が悲しげに歪む。
「周、とにかく落ち着きなさい。」
爽の指の力が強くなる。掴まれた両肩がじわりと痛い、周は逃げる事を諦めた。
ーーーー
室長室の一番奥の椅子に押し込むように座らせられて、周は真正面に座る爽に両手を握られている......。
卓はいつの間にか部屋の隅に片付けられている。
どこに待機していたのか、出入り口は勇が無言で護りを固めている。
これでは、まるで危険人物では無いか。周の気持ちは複雑だ。
「さて、周。事と次第を詳しく教えてくれるかな?
兄様に......。」
気不味く長い沈黙の後、爽の冷たい声が響いた。
ーーーー
「.....。」
「言いなさい。」
「.....。」
「言っておくれ、兄様の一生のお願いだ。」
周の手を握る爽が、周の肩に額をつける。微かに声が震えている。
(言ってしまいたい...でも....。)
「ご迷惑が掛かります。お二人の剣士の道に影など...落としたくは、ありません。
どうか、お捨て置き下さい。」
出来るだけ平たんに何の感情も乗せずに周は言葉を返す。
(二人の為だ、胸が痛いのは、一時だけ.....。兄さまと勇の為だ堪えろ私......。)
ところが、事態が急変する。
勇が愁に掴みかかったのだ。
不意を突かれた愁は衝立や茶器を巻き込んで卓に倒れ込む。
周が声にならない悲鳴を上げる。
(なんて事をしてくれるんだ、勇!
室長は剣士じゃないんだ、そんな力任せに。怪我でもしたら管理局の仕事が回らなくなるではないか!)
周は素早く、愁のもとに駆け寄りたい、しかし、爽が手を離してくれない。
その間にも勇は倒れ込んだ愁の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。
周はパニックに陥った。何をどうすれば良いのかが理解できない。
「勇!待って。室長が怪我をしてしまう!落ち着いて!お願いだから、ちょっと、こっちに来て!」
身動き出来ないのだ。声しか使える手段がない.....。
何とか勇を宥めようと、言葉を探しているうちに違和感に気付く、やっと。
勇から闘気を感じない?
周はすぐ横の爽に目をやる、
(騙された......。)
これから長い尋問が始まるのだろう......。
周は自分が三人に嵌められたことを悟った。
お付き合い頂き、ありがとうございました。




