爽(そう)の焦燥、勇(ゆう)の困惑
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周が王都のどこかで働いているらしい......。師匠の信より手紙でもたらされた情報に爽も勇も混乱していた。
周が王都で働くなら剣士の一択.....。何故、何の情報も上がってこない?
一昨年の勇の時のように、考えようによってはそれ以上に大きな話題になる筈の話しではないか。
言霊使いというだけも希少。言霊を操れる剣士ならなお希少。
そして言霊の重ね掛けなど......。
あんな出鱈目な技、もはや伝説級だ。周がその実力の片鱗だけでも見せたなら、王都じゅうの剣士が大騒ぎするレベルなのに.....。
師匠の信に問うても、要領を得ない繰り言ばかりで埒があかない......。
「勇、新人の中に周は本当にいないのだね?」
爽が確認すると勇も同じく爽に答えを求める。
「爽兄こそ、どこかの特殊部隊とか任務とか、そういうのはどうなんだよ?」
二人は唸るよりほかに出来ることがない。
あれから数日、爽も勇も暇を見つけては周捜索に力を注いでいる。
一向にはかどらない捜索活動に二人の焦りは募るばかりだ。
「意図的にあの子が我々を避けている?」
「それでも、爽兄の索敵なら......。」
「おや、勇は知らなかったのかい?あの子の気の扱いの上手さは常識はずれなのだよ。」
周に本気で避けられたら自分では探し出す事は不可能に近いと爽は言う。
周が自分を避けている......。信じられない可能性に激しく動くこの感情が不安なのか不満なのか、勇にはわからない。
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文官仲間にゆるやかに広がる悪評ーー剣士を激昂させた性格と素行に問題のある新人。
剣士の中で一気に広がりあっという間に普遍化された悪評ーー嘘つき文官。
素行が良いか悪いかはさておき、周には嘘をついた覚えも、剣士に喧嘩を売った覚えもない。
小さな行き違いと誤解の積み重ねで起こったこの事態を、周は焦らずに解きほぐす積もりでいる。
まずは、小さな一歩から、王都管理室の皆さまと仲良くなろう。
皆さまの好みや仕事内容を正確に理解して、それからお話しの回数も増やそう。
あっ、今は西の山も道場も話題にしてはいけない、この事も頭に叩き込んでおかなくては.....。
爽兄さまや勇にまで迷惑をかけてはいけない.......。この悪評が鎮静化するまでは、爽兄さまや勇には決して会わないようにしなくては......。
できれば他人のふりでもするべきなのだろうか。
嘘は吐きたくないな......。
大丈夫、二人の気はよく覚えている、うまく躱しながら生活するくらいは、さほど難しい事ではない。
今回も、お付き合い頂き、ありがとうございました。




