お使い2
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王都への帰り道、周はずっと里の、機織り女たちの事を考えていた。
絲は言った。
うちの里の女性は代々短命なのだと。
里から出ることの少ない彼らは自身の老いが他より遥かに早いとは自覚していない.....。
機織りの腕が良い者ほど短命なのは、機織りの女神に
愛され過ぎているから......。
短命はむしろ誉れ.......。
こんな事があって言い訳がない。
さて、どうしたものか......。
誰に相談すべきか......。
相談ではないな、あの人には計画書の方が有効か......。
周は愁に目標を絞った。
翌朝。
「室長ちょっと良いですか?」
目の下の隈が大変な事になっている周が出勤と同時に愁に声をかける。
「ここで良いのかい?奥なら美味しいお茶も用意出来るかもしれないよ?話もゆっくりと聞けるしね。」
内心の動揺を上手に隠し愁は周を軽くあしらってる風を装う。
近頃、王都管理局は、周に掌握されつつあるともっぱらの噂だ。これは何としても払拭しておきたい。
「お茶なら私が用意してから伺います。先ずはこちらをご覧下さい、どうぞ。」
(彼にしては珍しく性急な事の進め方だ。なにを焦っているのやら。)
「ではミーティングの後でね、周くん。美味しいお茶を待っているよ。」
愁はいつもの場所に立ち朝のミーティングを始めた。
(やられた......。)
周は焦りすぎていたことを反省した。
この人に感情論は通用しない、ここからは絶対に主導権を握られないように注意なくては。
ーー機織りの里 作業効率最適化計画(案)ーー
またおかしな物を.....。愁は資料に目を通す。
(まあ、一見筋は通っているように見えるが......。)
絵空事だ。行間から里の人を助けたいという思いが滲み出ている。
全くお人好しなことだ......。
愁はため息を吐く。
ーーーー
「糸に吸われる、機織り職人の気と生命力を、里のまわりの山野からの流用でまかないます。
それなら、
職人の寿命も伸び生産者としての寿命も伸び、結果的に生産性も上がります。
また、
反物になるまで、効力のなかった従来品にくらべると、この方法で作られた物は、糸の段階である程度の効力を持ちます。
今までとは違った切り口で、剣士の防御力を補えるアイテムが作れる可能性があります。
それに、
糸引きの際の湯にも、少量ながら力は移ると考えられます。
冷まして桑に散布すれば、生命力の循環にもなると考えられます。」
一気に捲し立て、我に返った周は頭を抱えた。
私は馬鹿なのだろうか、あれほどシュミレーションして、いざ事に臨むとこの有り様だ。
ほら、愁室長が目を細めている......。
「もっともらしい事を並べているが......。根本的な問題として、どうやって山野の力を流用すると?」
愁が冷ややかな笑みを浮かべて口を開く。
「えっ?」
今度は周が愁の認識に驚く。祝詞で神意を問えば良いだけの事ではないか。
二人の平行線の会話はもう少し続く。
「では確認するが、君は神意を問うことは普通の行為だと解釈していると。」
「しかもこれが君の郷里での常識だと.....。」
周は大きく頷いているが、俄かには信じ難いと、懐疑的な質問を続けるちょっと楽しそうな愁。
お昼になっても出てこない二人を心配して様子を見に来た鈴が見たのは、上司のそんな姿だった。
昼食を軽く挟んで再開された話し合いで、穴だらけの周の計画を何とか実現可能なところまで持って行った愁が溜め息混じにこぼす。
「まったく、機織り職人たちを救いたいならそう言えば良い物を.....。随分と回りくどいやり方に出たものだ。」
「......感情論では、室長に届きませんので。」
そう言って柔らかく笑う部下を見て愁は目を細くした。
これではあの噂は大きくなる一方だな......。愁は自分の中の小さな高揚感に少しだけ驚いた。
お付き合い下さり、ありがとうございました。




