かりんとうアラカルト
お越し下さりありがとうございます
今年も沢山の砂糖大根が収穫された。
(そう言えば初めて採れた砂糖大根で糖蜜を作った時は詩が珍しくずっとニコニコしていたな.....。)
周は何年も前の思い出にクスリとしながら砂糖大根を洗った。
甘党の詩のことだから、王都で甘味処巡りなどを楽しんでいるのではないだろうか。よく切れる包丁で皮を剥いたそれを賽の目状に細かく刻む。
そう言えば.....勇は詩に会えたのかな?
刻んだ砂糖大根を沸騰させない様にゆっくりとヒタヒタのお湯で煮る。
それにしても勇は凄いよね、お題を全部トップ通過だと言ってたものね。
甘味の溶け出した煮汁と大根本体を分けてゆっくり煮詰めていく。
来年か再来年には私も王都へ行けるといいな。
周は煮詰まってとろりとした糖蜜を壺に移す。
さて、今日これで後輩たちの喜びそうなお菓子を作ってあげよう。
かりんとう......詩好きだったな。
周はパントリーに小麦粉と胡麻油を取り出しに向かう。
アルカナ城
「詩、かりんとうが好きだと言っていたよな。」
明周が詩に休憩しようとやってきた。
半年前に義妹になった詩は目を離すと直ぐに無理をする。
怒りっぽい詩の逆鱗に、触れないように気を遣いながら、休憩を進めるのが明周の最近の日課だ。
侍女に入れて貰ったお茶を飲みながら二人でかりんとうをボリボリとかじる。
無言でかりんとうをかじっていた詩が、不意に口角を上げる。
「ん?何かあったのか?」
明周が聞くと。
「ふふ。随分前に友達がかりんとうを作ってくれて......。」
それを思い出したら笑っていたと詩はいう。
「そうか......。」
いつもどこか張り詰めた空気をまとい危う気だった義妹ーー詩が初めて見せた柔らかな笑みに明周は少しだけ安堵した。
アルカナ王都中央広場
袋いっぱいのかりんとうを買込んだ勇がほくほくと宿舎に向かう。
「おや、勇。そんなに沢山のかりんとう.....。いったい、どうするんだい?」
爽が声をかける。
「あ、爽兄。西の山にこれ、送ってやろうと思ってさ。」
勇はニシシ笑う。
「うーん、勇。言いにくいのだがね、道場に着く頃にはかりんとうは湿気てしまうよ.....。」
送るなら何か日持ちする物にしなさいと爽が苦笑する。
「うぇ、俺これを一人で片付けなきゃいけねーの?」
渋いお茶がいっぱいいると唸る勇に、爽の肩が震える。
なんの事はない日常です。もう三人で馬鹿をする事は叶わない、優しいけれどちょっと切なさ残る。もと西の山の剣士トリオの普通の日です。
お楽しみいただけたなら幸いです。




