爺さんたちの夕食(ゆうげ)
お越し下さり、ありがとうございます。
本気で勘弁して欲しいと、勇がウンザリした様子で信の部屋を睨んでいる。
王都から、信の友達を名乗る老人達が遊びにやってきたのだ。
昼間から始まった宴会は、夜もどっぷりの今もまだ続いている。
そのせいで、うるさくて眠れないのだ。
「そうだね。少しお声を小さくしてもらえるようにお願いして来るよ。」
仕方ないので周がお酒のおかわりを持って行きがてら、声掛けをすることになった。
中庭の前栽が美しく見える縁側で3人の老人が楽しそうに飲み食いをしている。
「お酒のお代わりは如何ですか」と、傍でお酌をすれば。
「おお、ゆう。大きくなったなあ!」と頭をポンポンされる。
駄目だ。
もう私か勇かの区別もついていない、皆さまそうとう出来上がっていらっしゃる。
周はため息混じりに曖昧な笑顔を浮かべてお酌を続ける。
少しお声を小さく。がなかなか言い出せない。
そのうち老人たちの関心が徐々に自分に向いてくるのが分かる。
「いいかい。ゆう、お前の爺さんはそれはそれは女の趣味が悪かった。」
綺麗なら何でもいいとか。
ほんとにバカじゃないのか。
何度注意しても美人局に簡単に引っかかるわ。
遊郭に行けば......。
美人のお姉さんばかりのここで一生暮らすとか。
「ゆう、聞いているのかい?」
見るにお前も少しそういう傾向がある。
とか......。
友人の祖父の黒歴史を延々と際限なく、聞かされる。
この混沌とした酒宴はなんなのだろう?
周はウンザリした気持ちが表に出ないよう、生返事を続ける。
周から見るに勇は少々感情優先なところはあるが、女性を外見で判断するような軽薄なやつではない。
まあ大変モテるので、見ようによってはそんな誤解も出てきそうではあるが。
それと、勇のお爺様がこんなにお師匠さま方と懇意にしていたのも驚きの発見だった。
口では文句を並べているが皆の目が愛おしいと雄弁に語っている。
ああ。
うるさいとは言えなくなってしまったな。
「そろそろ、夜も更けて参りました。『少し音が漏れないように』致しますね。」
せめてあちらで眠っている仲間たちの安眠を妨げないように。
周は言霊で防音の結界をはる。
「そう。そこなんだよ!」
何が面白かったのか、また老人たちのお説教が始まる。
いいか!ゆう、何事も程々だ。安定こそが正解なんだよ!それなのに、あいつときたら......。
ゆう!おまえはお前だけは長生きするんだ。畳の上で死ねるようにな......。分かっているのかい、ゆう?
とかなんとか言いながら、今度は周に抱きついたり、しがみついたりしてオイオイと泣き出す始末。
周のまわりの湿度......不快指数が爆上がりする。
ああ本当に、このくそ爺ども......。
絡み酒も大概にしてくれ。
もう本当に勘弁して欲しい。
何度も言うが私は勇じゃない。
周にしがみついたまま爺さんズが寝入って、やっと周が解放されたのは東の空が白み始める頃だった。
翌朝
「師匠たちに言ってくれたんだな。おかげでぐっすりだよ。」
「へー。それはよかった。」
気持ちよく目覚めた勇が、昨晩の礼を台所に立つ周に言えば
何だかやさぐれた感じの周がこっちを見て乾いた笑顔を浮かべた。
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