琥珀のピアス
お越しくださりありがとうございます。
ちょっと乙女チックなアルカナの風習です。
お楽しみください。
「周、ちょっとこっちにおいで。」
久々に西の山を訪れた爽に手招きされて周が寄っていくと。
爽が小さな包みを開いた。
「?」
「どうかな?周の色に近いと思うのだけれど。」
「美味しそうですね。」
爽の手の中でお日様を浴びたその石は蜂蜜の様にキラキラと光っていた。
「ハハ。そうくるかい?」
少し情緒が食欲に偏っていないかい?と爽が笑う。
「まあ良い。ではこの美味しそうな石を周にあげよう。」
そう言って爽が周の耳たぶにピアスを通した。
一瞬の痛みと不思議な違和感。
周が見上げると爽の優しい瞳が見えた。
「もう13だったかな。周も自分の色を身につけないとね。
少し遅れたけれど成人の前祝いだね。皆が貰っているのは知っているね。」
やっと周に渡せたよと爽が笑う。
アルカナでは10才を過ぎれば親族から自身の瞳の色のピアスをもらう
周の年ごろで耳に穴が開いてないのはかなりまれだ。
爽はもう何年も前からコレを用意していたのだが、信からの許しがでなかったのだ。
理由はピアスのもう一つの使い道のせいなのだが。
このピアス、子供の耳のものは同じ石で左右一対だが、大人になると片耳づつ違うことが当たり前になる。婚約や結婚で片方を相手と交換する習慣があるのだ。
周にはまだ早い。と、
頑なに首を縦に振らない、過保護の弟子馬鹿を説得する事三年。
爽はどうにか、世間から変に見られる年ごろギリギリで周の耳にもピアスを付けてやることが出来た。
「痛かったかい?」
「大丈夫。」
と答える周の頭をポンポンとして爽は王都に戻って行った。
ここに長居して信の口撃を受けるのは出来れば避けたいと思ったからだ。
数日経ってーーー
「周、それ.....。」
「あ、詩。兄様に貰っちゃった。」
周が嬉しそうに笑うと詩の顔がほんのちょっと曇った。
「ふーん。」
詩は何か思案している様子だったが唐突にとんでもないことを言い出した。
「周。それ、ちょだい。」
「えっ?」
「だから、それ。一つ私にちょうだい。」
「でもね.....。詩。」
詩は爽のことが大好きだ。勿論、周も爽のことは大好きだが。
自分だけがプレゼントをもらって浮かれるなんて、しかも自慢げに見せびらかすなんて、自分はなんて軽率なんだろう。と、周は深く反省した。
「何度も言わせないで。渡しなさい。」
そんな周の気持ちを見透かしたように詩がもう一度声をかける。
後ろめたさも手伝って周は首を縦に振ってしまった。
「じゃあ外すわよ。」
言うが早いか詩は周の左の耳から琥珀を抜き取り自分の左の耳につけると。
「穴が塞がっちゃうのも勿体無いからコレ付けてあげる。」
と先程まで自分がしていたアメジストのピアスを周に付けてくれた。
「これで大丈夫。」
何やら達成感に満ちた表情で台所を後にする詩を周は見送った。
その変化に信が気づいたのはその日の夕方であった。
(.......!)
信は周をチラリと見た後ため息混じりに問いかけた。
「ピアスの色が変わっているようだが?」
「あ、詩と交換したんです。詩、爽兄様からのピアスが羨ましかったみたいで。」
近ごろ自分ばかり爽からプレゼントを貰っているのでコレでおあいこと笑う周に信は複雑な思いで茶をすすった。
(だから早いと言ったんだ。三日も経たずにもう片耳の色を変えてしまったじゃないか。)
「お前なんであんな、めんどくせーことするんだよ」
勇が問えば
「あんなぼんやりした子、放って置けないでしょ。虫除けよ。どうせ気付きもしないんだから大丈夫よ。」
すずしい顔で詩は答える。
「うわー。お前やっぱ、怖えーわ。」
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