秘めると隠すは似て非なり
目に留めていただきありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
「相変わらず、癪にさわる勝ち方ね?」
「え?でも。ちゃんと(詩が言った通りに)3数えてから打ち込んだよ?」
「初め!123。殲滅。
終わり!
じゃ、見せ場も何にもないでしょ!」
何のための合同練習会だと思ってるの?詩がおかんむりだ。
何で現状一位の詩があんなにぷりぷりしているか、周には判らない。
本日の合同練習会は北の山で行われている。
お題が魔物の殲滅。
西の山からの参加が周・詩・勇の3人だ、ここ数回の定番と言っても過言はない常勝無敗の信の道場の布陣である。
「勝つにしても、負けるにしても、もう少し丁寧な試合をしなさいって言ってるの!分かる?」
いくら手数を出しても審査員の目に留まらなけば、無かったのと同じだと。
おや?なんか今回の(魔物は)弱かったなあ。で見過ごされるのだ、と詩はい言う。
そもそもが早過ぎるのだと。
詩のお説教が止まらない。
言っていることはわかるが、魔物相手は時間との勝負ではないのか?もたもたして仲間でも呼ばれれば、全滅するのはこっちなのだ。
それに......もし、まかり間違って詩が怪我でもしたらどうするのだと、周は思う。
口げんかで詩に勝てる気がしないので言葉には出さないが。
「あんた絶対に反省してないでしょ?」
(あ、詩に見透かされてしまった。)
周はおにぎりを頬張りながらそっと詩から目を逸らした。
午後
「驚いたね。」
あの一瞬に斬撃と防御結界に再生不可の言霊まで叩き込んでいたとは!
各々の道場の引率者たちが大絶賛している。
午前中とやっている事は一緒なのに評価のされ方がまるで違う。
何故、少し精度を落とした方が評価が大きくなるのか?
周は困惑を隠せない。
これは剣士全体のスピードへの耐性が落ちているのかもしれない。
帰山したらお師匠様か爽兄様に相談してみよう......。
周は色々と考えを巡らす。
が、詩は上機嫌である。
「やれば出来るじゃない。そうよ相手(審査員)のレベルに合わせて臨機応変に!覚えておきなさい。」
遠くの待機場所まで聞こえそうな大きな声で詩が労いの言葉よこす。
やめてほしいと、周は内心思っている。
大きな声で審査員の先生方をさらりとディスる詩が本当に怖い。
しかし、真の敵は後から訪れた......。
「どうよ!
うちの周は!
さすが師匠の....あれ?
何だっけ?
ほら、あっ!
隠し子!隠し子だ。
へへん、聞いて驚け
周は西の山の信師匠の隠し子だ!」
鼻たかだかに勇が口にした恐ろしい言葉に、あたりが凍り付く。
え?
あの信さまが隠し子?
いやしかし年齢が。
いやいや英雄は色を好むと……。
子供の前で何を言い出すんだ。
大人たちが勝手に大変なことになっている。
勇、それを言うなら秘蔵っ子だ、師匠の立場を悪くするのは、本当に勘弁してくれ。
周は心の中で毒づくも、自分から秘蔵っ子ですと大声で言い出すのは、恥ずかし過ぎるので黙って勇を羽交締めすることにした。
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