対等で行きましょ!
お越しくださりありがとうございます
「なんならハンディー戦にするか?」
勇と遙が詩を見る。
「はあ?あんた達、ずいぶん強気ね?
槍を持ったあたしに本気で勝てるとでも?」
詩が苛立たし気にかえす。
「だって、周だぜ?」
「連携とか無理じゃん。」
二人が気まずそうにちらりと詩の後ろを見る。
相棒殺しの周ーー最近、周に付いたあまり有り難くない二つ名である。
入門したての頃の壊滅的な非力はなくなったものの、やはり周は同年代の中では体格も小さく力も弱い......。
しかし、理由はそれだけは無い、個人戦では善戦する周が、複数......特にペアになると極端に勝率が落ちるのだ。
昨日の模擬戦ーー
「勇が来る!行くよ周。」
詩が右に槍を構える。
「....詩姉様。行ってもいいですか?後ろからーー」
周が何かいい終わるより先に遙が詩の背後に切り掛かる。
一歩遅れて周がそれを受ける、力負けする上にタイミングも外れたそれは遙の驚異にはならない。
詩の肩に遙の攻撃が当たるギリギリで詩が遙の剣をかわす。
遙の攻撃で崩れた体制のまま繰り出された詩の突きに普段の生彩は無い......。
言霊で身体能力は向上していた筈なのに......。
ーーー
「周......。敬称とか確認を辞めなさい。」
「えっ?でも......。」
「勝率が下がる。」
「....申し訳ございません。」
「違う!そうじゃない。」
詩がイラりとしながら周に近づく。
「あんた、遠慮してるよね?私や勇、それに遙にも。」
それが敗因だと詩が言う。
「勝ちたいでしょ?あたしは勝ちたい!
あんな体格と力だけでしか強さを量れない馬鹿男子になんて遅れをとりたくない。
だから、遠慮はするな、呼び捨てで行け!」
詩が悪い顔で周に囁く。
「それと、強化、自分に掛けられる?」
色々キャパオーバーで目を白黒させる周に、詩が悪魔の提案を持ち掛ける......。
「あたし、あんたの剣術は悪くないと思うのよ。
時々、びっくりするくらい嫌なタイミングでフェイントとかするし、急所の狙い方も的確でしょ。
でも、なんだろう.....。あんたの身体の使い方ってなんだかチグハグなのよ、頭のイメージより身体能力が酷く低いって言うの?」
「頭の中のイメージをなん段階か下げれば、いいの?」
「鍛錬ならね。」
「でも勝負の時は違う。
正反対、頭の中に現実の方を合わせるの、言霊で。分かるね?」
詩が黒い笑顔で周を諭す。
勝ち筋を拾うために。
「え......。自分に言霊を?」
周にはその概念が存在していなかったようだ、ともかく知恵と工夫でタイミングよく、相手の力を利用する。
そういった物理的な正攻法しか思い付かなかったらしい.....。
こんなに力が弱いのになんでそこに気が回らない?
詩は首を捻った。
「とにかく、あんたはあんたに強化を掛ける!分かった。私は自力で十分だから。」
詩が開始と同時に繰り出された雑な遙の攻撃に牽制を仕掛ける。
「えっ、そんな仲間外れはしないよ?」
詩が飛び出す、と同時に周は気を練る。
『言霊』ふわりとまわりが周の色に染まる。
『強化』詩のまわりの気がやや濃くなり、全身の筋肉が元気になった感じがする。
(あの馬鹿なんで私に掛けるの!作戦が台無しじゃない。)
遙の剣を槍でいなしながら、詩は周の理解力のなさに怒りを覚える。
刹那、
『加えて』もう一段気の密度が増す。
『強化』
(まさか.....二度掛け?)
視界の端に勇の攻撃をするりと受け流し、その間を詰める周が見えた。
(予想外だけど、上出来ね。)
詩が満足げに怒りを霧散させ、代わりに闘気を纏う。
「ふふ。もう十分。実力で行くから、覚悟しなさい遙。」
この筋肉馬鹿どもに思い知らせてやらないと。
ーー
遙の剣が空高く舞うのと、勇の剣が地面に叩きつけられるのは、ほぼ同じだった。
試合後
どんな戦術を使ったのかと詰め寄る二人に詩が小鼻を膨らませて得意げに勝因を語る。
二人がウンザリするまで。
その側で周がせっせと道具を片付けている。
そんなシュールな光景を眺めながら、茶を味わったのも良い思い出だと信は目を細めた。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
次回もお待ちしております。




