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30.魔王と聖女の協力

まさか聖女が協力を申し出てくるとは思わなかった。

これは非常に都合が良い。


「初めまして、レイアード伯爵令嬢。ニアと申します」


綺麗なカーテシーね。

彼女は戦闘力の乏しい魔物であり、魔物の中でも階級はかなりの下だ。教養も礼儀作法も知らない。

森の奥で野を走り回って好きに生きることを生き甲斐にしている魔物だから。


この完璧なカーテシーは聖女の時に叩き込まれたのでしょう。


「そして、魔王陛下、謝ってすむことではないと重々承知しています。どのような罰でも受ける覚悟です」


そう言ってニアは私の目を真っ直ぐと見てきた。


「前世で、何も見ようとせず、何も聞こうとせず、ただ魔物というだけで私たちがあなた方に行ったのは卑劣な虐殺行為であったと今は認識しています。申し訳ありません」

「・・・・・」


魔物に転生してのなら、魔物の歴史を知ったのだろう。

聖女時代、幾度か戦ってきた。彼女が誠実で心優しい、まさに聖女と呼ばれるに相応しい人柄をしているのは知っている。人間に対してのみ発動されていたけど。


そんな彼女が魔物の歴史を知ったのならさぞ生きづらかっただろう。


「始まりは人間からだった」

「っ。はい」

「でも、魔物こちら側に罪がないわけではない。どのような理由であれ、魔物が人に手をかけたのも事実だ。お前一人の罪ではない」


それにエルディルの話しが事実ならば、聖女も被害者だ。


「それでも罪滅ぼしがしたいというのならあの島が安住の地になるように協力して欲しい」

「ええ、そのつもりよ」


聖女の協力が得られるのなら思ったよりも研究が早く進むかもしれない。


「私は何をすればいいの?」

「魔王にも破れない結界石を作って欲しい」

「・・・・・結界石」


本来なら魔物から人を守るために教会が開発した特別な石。それを人から魔物を守るために使うことで難攻不落の島を作り上げるためね。


「ああ。聖女であったお前ならその知識も豊富だろう」

「ええ。でも、当時の段階では魔王が破れないほどのものなんて存在していなかったわ」

「当時わね。でも、あれから何百年も経ってる。研究はかなり進んでいるわ。もちろん、それでも魔王に対抗できるほどの結界石はまだ作れていないわ。だからこそ、あなたの知識と今の知識を合わせた作り上げて欲しいのよ。最強の結界石を」


幸い、私の魔力量は魔王に匹敵する。人間の体では扱うことができないけど。それでも結界石に私の魔力を吸わせて、その共同を試すこともできるし、私の魔力と彼女の知識を合わせれば不可能も可能にできるはず。


「場所と現在の結界石の知識はエルディルが提供してくれるわ」

「エルディルが?」

「ええ。彼は公爵であり、教会にそれなりの支援をしているわ。顔も効くの。そうでしょう、エル」

「ああ。俺の部下が何年も前から教会に潜入しているから機密事項でも手に入れることは可能だ」


教会関係者、神の使徒、でも所詮は人間

どこにだっている。欲深く、金で動いてくれる便利な人間は。


「どう?やってくれる?」

「ええ。必ず、成し遂げるわ」

「そう。じゃあ、お願いね」


彼女はおそらく、裏切らない。

魔物とはいえ、彼女にとっての今世の両親だった者たちを殺された憎しみと悲しみ。そして、本来ならば聖女であることがバレた時点で魔王(私)に殺されてもおかしくはなかったのに、同胞だというだけで殺されなかった。

言えわば、私は命の恩人。


実質そうだろう。

だって奴隷商に捕まり、どのような末路が待っているかも分からない所から私は彼女を助け出したのだから。


それに魔物としての歴史を知り、人間側にも非があったことを知った彼女はきっと罪悪感でいっぱいだ。

誠実で、心優しい聖女様は弱者を見捨てられない。

島には彼女の友人もいることだしね。


守るためなら、私は何だって利用するわ。もう二度と失敗はしない。


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