29.罪滅ぼしといつかの未来のために
『聖女だとバレたら魔物たちにどういう扱いを受けるか分からない。だから、あの島で生きるのか、それとも別の場所で生きるのかを選べ。一応、俺は勇者だったし、お前の仲間だったから、お前の支援を言われている。だからあの島を出るのなら、お前の安全な場所を用意するつもりだ』
「ニア、どこに行っていたの?心配したのよ」
「・・・・・キャロル」
狐の姿をした魔物である彼女は奴隷商で知り合った友人だ。彼女も親を人に殺されている。
みんなが寝ている時にこっそりと連れ出されたから心配していたのだろう。
キャロル以外の魔物も私の元に集まってきた。きっと、私の姿が見えないから探してくれたんだと思う。
聖女だった時は魔物にこんなにも心があるなんて知らなかった。
私はそんな彼女たちを殺しまくったんだ。それが正義だと信じて。
「ごめん、今後のことを少し考えたくて。キャロルはあの人のことをどう思う?本当に魔王で、魔物(私)たちを助けてくれると思う?ここを魔物(私)たちの安住の地にしてくれるって信じられる?」
だとしても聖女(私)はそれを受ける資格はない。
だって私は聖女だから。聖女だったから。
「人間の言葉など信じられるわけがない。ましてや魔王様を語るなど」
見ただけで私があの人を魔王だと判断できたのはおそらく前世で因縁深い相手だったから。
「ニアはあんな人間の言葉を信じたの?」
キャロルの人間に対する憎しみは強い。私も彼女と同じように人間に両親を殺された。
憎しみがないわけではない。ただ、聖女だった時の記憶を持っているからこそ憎みしみきれない。
魔王も同じなのだろうか。
「・・・・分からない。でも、少なくともあそこよりはマシな生活を送れている」
魔王は人間に対してどのような行動をするか分からないし、信用できない。でも、同胞に対してだけは慈悲深い女神のような存在になるのだと思う。だから、ここが魔物にとって安住の地になるというのは信用できる。
元聖女の私に言われても嬉しくはないだろうけど。
「はっ。そんなのいつまで続くか分からんだろ。これだって、罠の一つかもしれないだろが」
「ザガン」
大半が彼と同意見なのだろう。そして何も言わないキャロルも。それでも魔王は彼らを守ることを決めた。
憎まれようとも、たとえ人間に転生しようとも魔王としての責務を果たす。そんな彼女を悪と断じて殺した私たちはどんな魔物よりも罪深い。
「それでも私は彼女にかけるわ。私はここがみんなにとっての安住の地となることを信じて。どうせ、ここからは自力では出られない。ソカル様があちら側についている以上、それは揺るがぬ事実。仮に出られたとしても、また人間に狩られるだけよ。ならば、ここで腐るよりも自分の手で安住の地を作れるかもしれない状況を利用すればいい」
『聖女だとバレたら魔物たちにどういう扱いを受けるか分からない。だから、あの島で生きるのか、それとも別の場所で生きるのかを選べ。一応、俺は勇者だったし、お前の仲間だったから、お前の支援を言われている。だからあの島を出るのなら、お前の安全な場所を用意するつもりだ』
『私は・・・・・』
「私は彼女と協力して、ここを安住の地にする。私はもう二度と、大切な誰かを失うのも、殺される恐怖を味わうのもイヤ。彼女が信用できるかは分からない。でも、少なくとも、あの地獄から救ってくれたのは彼女よ」
「ニア」
「キャロル、心配してくれてありがとう。でも、私はもう決めたの」
聖女が魔王に協力する。こんなことになるなんて前世では想像もできなかった。
聖女と魔王が協力できる今があるのなら、きっといつか人間と魔物が共存できる未来だってきっとあるはずよ。今は無理でも、いつか必ず。その為の架け橋を作れたらと思う。
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