28.魔王の気遣い
「・・・・カルメリアが魔物に転生してる?」
やっぱり驚くはよね。
自分が転生しているのだから、その可能性がなくもないけど、仮に転生していても会える確率なんてゼロに等しい。
しかも、自分は人間なのに聖女であった彼女は魔物
二重の驚きになるだろう。
「彼女のことはあなたに任せるつもりよ。元聖女だってバレたら他の者たちに何をされるか分からないからね」
「シアはそれでいいのか?憎い相手だろう?」
「あなたも含めてね」
エルディルは私の言葉に傷つくわけでもなく、激昂するわけでもなく苦笑して受け止めた。
自覚があるのだろう。
いくら現世で婚約者を名乗っても敵同士だったと。
とち狂って味方だの、婚約者だのと訳のわからない状況になってはいるが。
「けど、任せると言われても難しいな。魔物だからこそ、下手に島から出せばまた人間に狙われるだろう。俺の邸の人間だって魔物に対していい感情は抱いていない。シアには悪いけど」
「それが当然の世界になってしまっているから構わない。その責任は当時生きていた人間と魔王である私にあると思っているわ」
「ならば俺も一緒だよ」
前世では人のために戦い、死んだ聖女が今世では魔物に生まれて、人間社会では生きれないなんて数奇なことだ。
「本人にどうしたいか聞こう。今まで魔物として魔物の中で生きてきたんだ。ならば、下手に俺が関わるよりは魔物として魔物の中で生きた方がいいだろう。お前が聖女の面倒を見たくないと言うのなら別だが」
「何の感情も湧かないわけではないわ。でも、前世は兎も角今は大切な同胞よ。ならば、魔王として守るだけよ」
「そうか」
少しホッとした様子を見るにやはり前世の元仲間のことだから心配していたのだろう。
***
「あ、あの、何のご用でしょうか」
同胞の前でできる話ではないので彼女一人だけをエルディルの邸に呼び出した。
だからと言って同胞の前で呼び出しても、呼び出す理由が言えない以上、言い訳を考えるのも面倒なのでみんなが寝静まった後、彼女だけを呼び出すことにした。
私が出ても怖がらせるだけなので対応は邸で働いてくれているオルテンシアの兄弟たちに任せた。
まぁ、全員人間なので怖いことに変わりはないだろうけど魔王よりマシだろう。
「用があるのは俺だ。久しぶりだな、カルメリア」
「えっ、えっ、うそ、レオン」
said.エルディル
顔見知りが魔物に転生していた。しかも、俺と同じ造られた存在であるカルメリアが。
前世の俺は感情が乏しかった。それは環境だったり、そもそも造られたである俺は最初から感情が欠落していた。
前世では人のフリをした。感情に理解を示しているフリをしていた。
同じ造られた存在でもカルメリアとは違う。
だから同胞意識はない。
人間に生まれ変わった今でも大して変わりはなかった。
ただ、シアが気遣ってこの場を設けてくれたから仲間としての役目を果たそうと思っているだけ。
薄情な存在なのは理解している。きっと、これが俺の本質なのだろう。
「今、魔物だけが暮らせる場所を作ってる」
「・・・・レオンが?」
「俺じゃなくて、オルテンシア・レイアード伯爵令嬢が。君を助けた人だよ。俺たちと同じように転生した、元魔王陛下。ちなみに今の俺は勇者レオンじゃない。エルディル・オーウェン公爵だ。公爵でもエルディルでも好きに呼んでくれて構わない。君の今の名前は?」
「私は、ニア・・・・どうして魔王陛下と?敵だったのに」
聖女だった時は負けん気が強くて、ハキハキとものを言っていたけど今はその真逆だな。
魔物としての生活がそうさせたのか、奴隷商での生活がそうさせたのかは分からないが。こんなんで、元聖女であることを隠して魔物だらけになる島で暮らせるのだろうか?
だからといって、今の彼女は人間社会で暮らさせる方が危険だし難しい。
「レオ、エルディルも知ったの?どうして魔物が人を襲うのかを。だから魔王に協力しているの?罪滅ぼしで?」
「違うよう」
これを言ったら聖女である彼女は俺に幻滅するだろうな。
「俺はね、シアに、魔王に惚れたんだ。だから彼女に協力をすることにした」
カルメリア、ニアは異質なものを見る目で俺を見ている。まぁ、自身が造られた存在であったことも、前世の幸せな家族との思い出も、家族を殺された魔物への憎しみも人によって植え付けられたものだと知らない彼女は人への憎しみはない。
幸せなことだとは思う。
羨ましいとは思わないけど。
「魔王は、その、知っているの?あなたが勇者だったって」
「ああ、知ってるよ。それでも彼女は魔王として何が最適かを考え、俺と協力することにした。俺はそんな彼女の心を利用して側にいる」
「・・・・・エルディル、それは」
「酷い?」
ニアは口を噤んだ。自分でも分かっている。最低なことだって。
ただ、理解だけはどうしてもできない。人の反応を見て、何がいいかを選択することはできる。勇者の時はそうしていた。それが人の中で生きる方法だったから。
ただ、魔王に会ってそれを止めただけ。
理解は求めない。
「まぁ、俺の話しはいいだろう。今日、ここに呼んだのは、ニアはどうするってことを決めて欲しくて」
「どうするって?」
「魔王はこれ以上、魔物の犠牲を見過ごすことはできない。だからこそ、歴史を繰り返すつもりもない」
「その為の、あの島?」
「ああ。君には生きづらい島になるんじゃないか?魔王は君の正体に気づいている」
「っ」
体は強張り、顔は青ざめている。
シアが魔王時代のように戦えないように、ニアも今は戦う術を持っていない。
「魔王はお前に対して複雑な感情を抱いている。ただ、同胞である以上、守るべき対象だと判断した」
「それを、信用しろと?」
「決めるのはお前だ。俺に判断を委ねるな」
「・・・・」
「聖女だとバレたら魔物たちにどういう扱いを受けるか分からない。だから、あの島で生きるのか、それとも別の場所で生きるのかを選べ。一応、俺は勇者だったし、お前の仲間だったから、お前の支援を言われている。だからあの島を出るのなら、お前の安全な場所を用意するつもりだ」
「私は・・・・」
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