22.生きるための準備
「誰か来ていたの?騒がしかったようだけど」
騒いでいたと言うよりも物凄い殺気が下から感じた。
思わず戦闘態勢に入りそうになったけど、すぐにソカルのものだと気づいたので放置した。
「目障りな虫が入り込んだだけです。オルテンシア様が気になさる価値もありません」
「そう」
ならいいや。
今夜、同胞を救出する。今はそれに集中したい。
「この島、なんてどうかしら?」
救出した魔物を住まわせる島の選出もしなくては。
私がいなくても島全体を隠せる結界を作れる道具の制作も急務ね。
「かなり本国から離れていますね」
「ええ。それに、島の周りは断崖絶壁だから容易く侵入できないと思うの」
「そうですね。それでも随所に見張り台を建てて警戒は常に必要になりますが、以前よりも安心できるかと」
同じ国、同じ土地に住んでいた。私たちと人間を隔てるものは何もなかった。
強いて言うのならば魔物は森の奥に住んでおり、人間は森の外に住んでいた。
だから人間は森の奥に入ることはなかった。私たち魔物の領分だから、入れば命の保証がないことを知っていたから。
しかし、魔物狩りが始まった。
もう随分と昔の話だ。
人間は人間同士で殺し合いをしていた。飽きもせず、何度も何度も。
そして、より多くの人間を殺すために猟奇的で狂気に満ちた武器を開発し始めた。
その結果、魔物に手を出し始めたのだ。
鉄よりも軽く、しかし鉄よりも鋭く硬い素材
ミスリルよりも手軽に手に入る素材なのも魅力の一つだったのだろう。
だって、森の奥に入って殺せばいいのだ。
人間を殺すことを当然と思っている人間が自分たちと異なる存在を殺すことを躊躇うはずがない。
そして始まった魔物狩り。
需要が高まる分、魔物の素材はより高額で売買されるようになり、さらに魔物を求めて森に侵入する人間は増えた。
必要なのは人間に侵犯されない領土だ。
「値段も手頃ね」
「需要がありませんからね。早速手配をしておきましょう」
「ええ、お願いね」
魔物の権利を取り戻せればいいのだけど、なんでも一朝一夕にはいかない。まずは焦らず、目の前のことから。
だから、今夜まず一つ目の奴隷商を襲撃する。
新月でちょうどいい。
戦力は多い方がいいけど、同時に秘密を知る者は少ない方がいい。ルーファスは戦力として申し分ないけど信用はできない。行くのは私とソカルだけにしよう。
エルディルは、どこまで信用していいか分からない。言えば無理矢理にでもついて行こうするけど、私たちはきっと連携して戦うことができないと思う。それは、いざという時に致命的になる。
「やはり、ソカルと二人で行こう」
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