579:セトリの中身を決め切りたい。
ファミレスに入った私たちは、店員さんにテーブルを案内してもらい、食べたいものをそれぞれ注文する。
「ほんでから、バレーボールの大会のセトリやけど、〈シンデレラストーリー〉は最後にするやんか。もし、これ、ストーリー性を求めるんやったら、偉いことになる気がするんやけど、どうする?」
「それは、帰ってから考えてもいいんじゃない?急ぐ必要はないし、スペシャルライブって言っても、各部3曲だけだからさ、そこまで深く考えすぎる必要はないんじゃない」
「まぁ、そうか。でも、ストーリー性は持たせたいって思ってまうんよな。いつもやってるから」
「まぁ、そうだけどね。でも、たまには、盛り上げる曲だけで構成してもいいんじゃないかなって思うんだよね」
「あぁ、確かにそれもひとつか。それも考えるか。事務所戻るまではなんも考えんようにしようかな」
「そのほうがいいんじゃない。運転に集中してほしいし。私もこの話はしないようにするし。このあとは、後ろに乗るね」
「まぁ、別に助手席でもかまへんけどな」
翔稀はそういうけど、たぶん、そう言いつつも翔稀の頭の中は、セトリのことでいっぱいになるんだろうな。
それなら、安全のためにもここでセトリの案を組み切ってもいいかもしれないな。そんなことを思いながら、注文したものが運ばれてくるのを待つ。
「翔稀、休憩時間を長めにとって、セトリはもう組んじゃおう。そのあと、帰っても全然遅くならないし、むしろ、打ち合わせが速すぎたって言うのもあるしさ」
「そうか。まぁ、そっちの方がええか。そっちの方が変にモヤモヤせんで済むか」
そのタイミングで、注文していた料理が届き、先に食べ始める。
食事をした後からでも考える時間はある。たぶん30分も要らないと思う。食べ終わってからスマホを開いて、メモアプリに入れている曲リストを翔稀に魅せるつもりでいる。
そんなことを思いながら、注文したパスタのセットを胃の中に収めていく。
そして、私も翔稀も食事を終わらせた後、食器を少し端に寄せて、翔稀にスマホを見せる。
「一応、曲リストはここにあるから、ここから選んでもいいんじゃない?私の聞いた直感のジャンルをメモしてるだけだけど」
とはいいつつも、簡単に「バラード」とか「ハイテンポ」とか「ユーロダンス」とか書いてるだけだけだけど。
「丁寧にしてんな。でも、これだけあれば、セトリ考えるんも楽になりそうやな。俺もこうしたいからさ、グループチャットに張り付けてや。これ見ながらやったらセトリ決まんも速いやろ」
「そう?それならそうするけど。とりあえず、セトリ案を早く決めちゃおう」
「あぁ、そうか。それやったな」
そこから、翔稀は、私のスマホを覗き込みながら、ナプキンに〈シンデレラストーリー〉とだけ書き込んだ。
そこから、スマホの画面を上下させながら「うーん」と唸りながら、盛り上がりそうな曲をピックアップしていった。
「これさ、田村さんにお願いして、ハイアスちゃんの〈Connect〉って借りられへんやろうか。あれさ、バレーボールの曲やったやろ?」
「今からは無理でしょ。さすがに、振り付けも覚えないといけないし、それだけじゃなくて、歌詞割も歌詞も覚えないといけないのに。そんな中途半端なステージにはしたくないかな」
「あぁ、まぁ……そうか。さすがに、それだけの時間がいるか。あとあれか。ステージの使い方も考えなあかんから、圧倒的に時間が足らんか」
「それもあるかな。だけど、せっかくミアシスを呼んでくれているんだから、ミアシスの中で盛り上がる曲をチョイスしたい」
私がはっきりそう言うと、翔稀も納得した顔をした。
「ほんなら、どないすんねん。〈フラトゥ〉は絶対入れるとしても、〈フラトゥ〉から〈シンデレラストーリー〉に繋げる曲って言うたら、なんかあるか?」
「まだそこまでは考えてないけど……」
少し言葉を濁してから、テーブルに置いている自分のスマホのメモ帳をスクロールする。
「そうか。それでもいいのか」
「なにがや?」
思わずつぶやいた声が翔稀にまで届いていたみたい。
「これさ、盛り上げるんだったらさ、思い切って〈BEAST〉を入れてもいいんじゃないの?」
「……あぁ、なるほどな。そういうこともできんのか。それなら、なおさら派手になるな。でも、さすがに派手過ぎるな。さすがに、試合後のパフォーマンスは変えるやろうけど」
「それはそうだね。ラストまで上げ続ける意味がないから、さすがに〈フラトゥ〉も〈BEAST〉も外して、〈シンデレラストーリー〉を置き続けるほうがいいと思うけど」
「いや、それやったら、最初のパフォーマンスに〈シンデレラストーリー〉は外してもええんかもな。セット間のミニライブで思い切って〈私が応援するわけ〉を入れて、そのあとに〈シンデレラストーリー〉で場内の熱を上げてもええんちゃう?」
あぁ、たしかに、それも一つか。負けていても勝っていても、〈私が応援するわけ〉で、「好きだから応援しているんだよ」というメッセージを込めたらいい。それが観客に乗り移って、場内をもっと盛り上げられたらいい。そんなことを思ってしまった。




