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頑張ってね、小林君!  作者: もう無理だよ
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148_私とヒロ君と不協和音の小鳥たち


私の名前は花崎詩織。23歳、女、独身、彼氏なし。



11月16日――


小鳥の交流会、個人戦も終わって、そろそろ会も終わるかなと芽衣ちゃんと他愛もない話しをしていると、リーダーの市川菜月さんに呼ばれる。


「花崎さ~ん、いたいた、ちょっと来てくれる?」


「いいですけど…何かあるんですか…?」


「えっとね…来月の大会に花崎さんが出場するからって『ウグイス』に話したら一部が怒っちゃって…ちっちゃいよね…人として色々とさぁ~」


歩きながら市川さんが説明してくれる。私の後ろには芽衣ちゃんが影のようについてくる。


「だからね、そんな一部を黙らせようと思って…手っ取り早く対戦してくれる?」


両手でパチッと叩くしぐさは可愛いのに、まるで小さい虫を叩き潰す、というようなメッセージにも見える。


「対戦はいいですけど…誰とですか?」


かなり前に市川さんと対戦して勝っている。だけどあの時は、芹沢さんが後ろからアドバイスしてくれて勝てた。


今の私の実力だと市川さん、杉本さんにはまだ勝てないと思う。




「対戦相手は私よ!」


『ウグイス』の皆さんが集まっている輪の中に入ると、桜井未来さんが腰に手を当てて私を睨みつける。だけど背が低くてツインテールだなんて可愛いと思ってしまう。


「ミク…愛想良くして?」


市川さんが笑いながら怒っている。


「嫌よ、愛想を振りまくのは男子の前だけにしろって、ひいおばあちゃんの遺言だから…」


「どんな遺言よ…それに美紀の前じゃいっつもヘラヘラしてるじゃない」


「美紀さんは特別…だってカッコイイじゃないですか!」


「ハッ、男子みたいにカッコイイってこと?そうねぇ、女子にしとくのもったいないものねぇ~」


「菜月…聞こえてるんだけど…声も馬鹿デカイのね…」


杉本美紀さんが細い目を細める。


「あら~何もかも小さい美紀に比べたら…大きい方がいいわよねぇ~?」


私に同意されても困る。曖昧に答えていると、高橋星羅さんが仲を取り持ってくれた。ゴタゴタしている間に、後ろにいる芽衣ちゃんにコソッと話しかける。


「桜井さんとの対戦…手加減ナシでいいよね?」


「わ、私には分かりません。あんまり早くゲームを終わらせるのは…どうかと思いますけど…花崎さんならいいのかな…?花梨に聞いて来ます!」


言うなり芽衣ちゃんはどこかに走って行ってしまった。


「そろそろ対戦を始める?」


「あ~……は~い」


マネージャーの高橋さんに言われトレバトの台に移動する。このまま対戦を始めてもいいけど、どんな風に戦っていいのか分からない。


「じゃあ、こっち側に座って…いまミクを呼んでくるから…」


「はい…あっ、あの…」


よく見ると高橋さんは指を怪我している。


「怪我されたんですか?結構グッサリ切れてますね」


「あぁ…これ?これね…」


高橋さんが説明する前に、後ろにいたミーシャさんが教えてくれた。


「さっきの休憩中、差し入れのケーキをミクが切ろうとして…そしたらケーキじゃなくて星羅の指を切ったのよ、菜月と美紀がカンカンに怒って…」


いまだにケーキは切れてない。キレたのは市川さんと杉本さんだと、ミーシャさんが爆笑している。


「はぁ~~なるほど……」


(このチームって烏合の衆って感じがする…チームの結束力が感じられない…バラバラな人達をルールで支配しているだけっていうか…どうしてこんなにまとまりがないんだろう…?)


対戦前にも関わらず頭が痛いと思っていると芽衣ちゃんが走って戻ってきた。


「花梨に聞いて来ました!花崎さんが気を遣っても未来さんにはすぐにバレるし、そんなことしたら未来さんはもっと怒る…とのことで、普段通りのプレーでいいそうです」


「オッケー、ありがとう」


対戦前にアドバイスが聞けて良かった。


「頑張って下さいね!」


「ガ…うん、頑張る」


いつものように、拳を出して「ガオー」と言いそうになったけど、ここは小鳥チームだと青色のリストバンドが教えてくれた。




交流会の次の日、会社に出社し、いつも通り仕事をしている。


私の配属先は総務部だった。ヒロ君と同じ部署になれたら良かったのに…と思うけど、これ以上は望まない。同じ会社に入れただけでも自分を褒めてあげたいと思っている。


お昼に入る前、後ろから男性に呼ばれる。めんどくさいなと思って席から立ち上がると目の前にいたのはヒロ君だった。


「仕事中に悪いな…これ…部署の年度末調整を集めて持って来た」


ヒロ君はカウンターに書類を置く。


「ヒ…小林さん…ありがとうございます。それじゃ、ここに人数分の数字とチェック欄の記入をお願いします」


「はい」


ヒロ君は部署の中で一番年下なので、雑用は全てやる必要があると記入しながら教えてくれる。


「花崎が小鳥チームでやってる雑用に比べたら、俺なんて大したことないけど…」


「そんなことないよ、これだけの人数分を集めるのって大変でしたよね?ありがとうございます」


「いいえ、俺の仕事ですから…」


記入が終わってボールペンをスーツにしまっている。


「俺…このままお昼に行くけど…久しぶりに一緒に食べない?…予定が合えば…だけど…どうだろう…?」


「う…うんっ、行く!少し待ってて…すぐに準備します」




お昼を一緒に食べながら、眠れる森の小鳥についての話しが止まらなかった。


「…それでね、桜井さんと対戦して勝ったから、来月の大会に出場できることになったんだよ」


「トレバト冬季本選大会か…俺も観に行く予定。応援してます」


ヒロ君はカレーを食べながら聞いてくれる。


「本当に?嬉しいな~」


(やっぱり小鳥チームに入ってからの方がヒロ君と話す回数が増えた気がする)


「うん…あと…大会が終わったら…どこか遊びに行く?今度は俺が計画立てるって約束してただろう?」


「…うん…行く…。大会が終わった後だから12月21日以降だね?」


「そうだな、都合のいい日にちを教えてほしい。メールでも電話でも、いつでも大丈夫なので…」


「うん、分かった!あとさ…来月の小鳥の交流会が終わった後も…電話していい?ヒロ君に聞いてもらえると気分が楽になるんだよね」


「はは…聞くだけしかできないけど…コーヒーの準備して待ってます」


ヒロ君が笑ってくれた。来月の交流会も楽しみだな、とお弁当を食べ進める。





12月7日――


12月の小鳥の交流会に参加する。私は『飛鳥』に所属しているので、集合時間より20分前に到着しなければいけない。

ちなみに『ひよこ』は、30分前に到着が必須だった。


「花崎さん、こんにちは、今日もよろしくお願いします!」


芽衣ちゃんが深々とお辞儀をしてくれる。


「こちらこそ、よろしくね。さっそくだけど、『飛鳥』の雑用を教えて下さい」


「はい、説明します」


『ひよこ』の時は掃除したり椅子を並べたり机を出したり…という感じだったけど、『飛鳥』の雑用は全然違った。


「このあと来る『朱雀』のメンバーがすぐに作業できるようにパソコンの準備をします」


『朱雀』のメンバーの役割は他のチームのデータ収集が主だという。その集めた情報をPCに入力するための準備を『飛鳥』が行うらしい。


「『飛鳥』のメンバーが準備をする理由は『朱雀』に上がった時に、少しでも早くメンバーに溶け込めるようにするためです」


「なるほど…色々とあるんだね…」


PCの配線を手伝いながら芽衣ちゃんの説明を聞く。


「『朱雀』を統括しているサブリーダーが花梨です。だから、花崎さんが『朱雀』に上がって困ったことがあったら花梨に聞いて下さい。もちろん、お世話係の私が全力でフォローするつもりでいますが…」


「うん、分かった!ありがとう」



交流会が始まる――


集合時間に『ウグイス』が全員集まらなかったけど、市川菜月さんはメンバーを一か所に集合させる。


「今日の交流会の主旨を説明します。再来週の大会に向けて、出場するメンバーは『朱雀』と一緒に戦略を練ります。『飛鳥』は、『朱雀』の補佐、『ひよこ』は『飛鳥』の補佐をして下さい。大会に出場するメンバーを発表します」


市川さんの隣にいる高橋さんがメンバーを読み上げる。


「1番手は市川菜月、2番手は杉本美紀、3番手は花崎詩織、マネージャーは私です。補欠組として、桜井未来、早川実紗、の2名を登録しました」


金髪ポニーテールのお人形さんの名前は「早川実紗」さんと言うらしい、初めて本名を知った。私はずっとミーシャが本名だと思っていた。


「質問はありますか?」


私は隣にいる芽衣ちゃんにコソッと質問する。


「今日は個人戦ないの?」


「個人戦はありません。個人戦は2ヶ月~3ヶ月の間、一度だけ行うんです。毎月はやりません」


(そうなんだ…じゃあ、私は当分の間、『飛鳥』なのかな…?)


腕のゴムバンドを見る。すぐに『ウグイス』になれると思っていたけど仕方ない。


「質問がなければ、さっそく大会の対策会議を始めます。まずは階級ごとに集まって準備をお願いします。花崎さんと芽衣はこっちに来て下さい。以上です」


市川さんの掛け声でサッとメンバーが動く。




私は芽衣ちゃんを連れて、『ウグイス』が集まる輪に入るとリーダーの市川さんが私に気づく。


「少しだけ待っててくれる?準備しちゃうから。そっちの椅子に座ってて」


はいと頷いて、私は指定された椅子に座る。芽衣ちゃんは予備の椅子を持って来て、私の後ろに座る。


「いつも思うんだけど…どうして桜井さんとミーシャさんって交流会に遅れて来るの?」


私の質問に芽衣ちゃんが後ろからコソッと教えてくれる。


「ミーシャさんが極度の方向音痴で…ミーシャさんのナビ担当がミクさんなんです。家も近いので、一緒に来るように任命されたんですけど…」


「えっ?ミーシャさんと桜井さんって仲が悪くなかったっけ?」


「そうです…2人は同じ高校に通っているんですけど…本当に仲が悪くて…いえ、前は仲良しだったんですけど…ここ最近は仲が悪いというか…それで言い争いながら来るので…遅れると言いますか…」


言い争ううちにバスを乗り過ごしたり、電車を乗り過ごしたり、となかなか到着しないようだ。




私と芽衣ちゃんがコソコソ話していると、パソコンを持った最上花梨さんがやってきた。


「お待たせしました、対策会議を始めたいと思います」


(対策会議ってどんなこと話すんだろう…?)




2008年12月7日、小鳥チームは徹底した情報を元に大会に臨んでいるらしい。トラのマーチの情報がどんなものか興味深々だった






交流会が終わってヒロ君と電話中――


「それでね、徹底したデータの元、大会に臨んでいるんだよ」


「へぇ~すごいな!」


「…ヒロ君は大会で気になる人とか…いたりする?」


「そうだな…俺はドッグタグのライア君かな…」


「ドッグタグの…ライア君?」


「そう、鈴木來亜君っていう子で…昨日、優斗とトレバトで対戦したんだけど、いい勝負しててさ…もう大会に出られる実力かもしれない」


「ふぅ~ん…」


(ヒロ君が気にしている子…優斗君ならライア君って子、知ってるのかな?今度、探りを入れよう…)


「ライア君って礼儀正しくて、カッコ良くて、絶対に花崎も好感が持てると思う。この前なんて…ペラペラ…」


「ふぅ~ん…」


(すぐに優斗君に電話してライア君って子の情報を聞き出そう…)



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