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頑張ってね、小林君!  作者: もう無理だよ
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133_俺と優斗と小休止_後編


「今日初めてGUNを見た時…お前を…優斗を初めて見た時のことを思い出した。線が細いが存在感がある男子高校生…幼い顔でさ、制服を着てなきゃ高校生だと思わなかったかもしれない」


優斗は静かに聞いている。もしかしたら俺と同じであの日を思い出しているのかもしれない。


「対戦して…優斗の圧倒的な強さに魅了された。ワクワクしてドキドキして胸の奥がぐぐぐ…と締めつけられた。俺はその時、平穏な毎日を送っていて…情熱を傾けるものを探してたんだ…そんな時に出会ったのが優斗で…俺はお前に…夢中になったんだよ…」


「夢中に…?」


「そうだよ…名前も知らない初対面の高校生に夢中になって…絶対に探し出すって思って…熱は冷めなくて…それで優斗が俺のチームに入ってくれたらって…大会に出場できるようになればって…どんどん夢が膨らんで…毎日がすごく楽しくて…こうやって夢を持つことができたのも優斗がいるからなんだ」


「僕がいるから…夢を描ける…?」


「そうだよ…GUNじゃなくて…俺の夢は優斗と大会で優勝することだって…ことだよ…言ってて恥ずかしい…」


「でも…交流会の活動を変更することで…大会に出られなくなったら…小林さんの夢が…」


俺の夢か…俺の夢のせいで優斗が悩んでいるなんて思ってもみなかった。


「俺はさ、大会に出られなくても優勝できなくても問題ないんだ。大切なのは、優斗が俺のチームにいてくれることだから…」


「それじゃ…本当にこのままで…問題ないんですか…?大会に出場できなくても…?」


「問題ない。交流会の活動はリーダーが決めることだ。優斗が望むとおりにやってくれたらって思う」


「…はい…」


「うん、俺が話したいことは話せたと思う。ありがとう、聞いてくれて…答えてくれて…」


「だって…ちゃんと聞くって約束しましたから…」


ティッシュを取り出して目元を拭っている。


「…小林さん…交流会の活動内容をちゃんと決めたいので…もう少しだけ時間を下さい」


もちろん、と頷く。


「俺もメンバーも優斗が決断できるまで待ってます」


自分の考えを話せて良かった。今日はゆっくり眠れそうだと嬉しく思いながら立ち上がる。


「…甘いものが食べたくなってきたので、ユウ君に買って来たアイスを食べます」


目が赤い優斗を見る。冷やした方がいいかもしれない。


「あの…小林さん…。僕も少しだけ…食べたいです…」


優斗も少しスッキリしたような表情に見えるのは俺の気のせいだろうか。





10月15日――


仕事から帰宅して一息ついていたら電話が鳴る。遠藤さんからだ。


「お久しぶりです。どうしました?」


『小林君に用があるとしたら一つだろう。優斗のことだ』


「優斗…?今日はバイトでしたっけ?」


遠藤さんから直々に電話が来るのは珍しい。よっぽどのことが起きたのかもしれない。


『俺は小林君に優斗のことを任せるって言ったよな?それなのに、また泣かせたのか…?』


「泣かせた…?誤解です、俺は何もしてません」


『小林君じゃないとしたら誰なんだ…!あんなに優しい子を泣かせるなんて…俺は許せないよ』


現場で泣いている姿を見たのは初めてで驚きと同時に、怒りがこみ上げたそうだ。


(俺の前ではよく泣いてます…なんて言ったら処刑されるかもしれない)


俺は何も言えず、遠藤さんの話を聞く。


『休憩中に泣いていたのに撮影では笑顔を絶やさず…見ていて俺の方が泣きたくなったんだぞ…』


「それは…確かに辛いですね…」


『そうだろう?それと最近の優斗は痩せ過ぎだ…17日の土曜日、優斗をメシに連れて行ってくれ』


遠藤さん行きつけのお寿司屋に行って来い、ツケで飲み食いできるからと言われ電話が切れた。


(17日か…特に予定は入ってない…)


すぐに行動を起こさないと遠藤さんに処刑される。断頭台の露に消えるなんて嫌だ、と思いながら優斗にメールする。


「17日、バイトが終わるころ迎えに行くからお寿司を食べに行こう」と送ると、すぐに返信が来る。


『遠藤さんから聞いてます。面倒なことになってすみません。よろしくお願いします』


『面倒じゃないよ。お寿司は楽しみだ。それじゃ当日、連絡します』


遠藤さんの行きつけの寿司屋か、役得だな、と思いながらベッドに入る。





10月17日――


寿司屋に行くのでお昼は抜いてきた。コンディションもバッチリだ、と撮影スタジオの喫茶スペースで俺は優斗を待っていた。


そろそろ来る頃かと視線を上げてると、金髪センター分けの青年と目が合った。


「小林さん、こんにちは」


「あれ…ライア君?どうしてここに…?」


声がうわずった。若かりし頃の春樹さんに似ていて、心なしか緊張するのだ。


「遠藤さんから伝言を預かって来たんです、広瀬君のこと頼むって…。俺からも渡したいものがあって…」


テーブルの上にDVDが置かれる。


「この前観たいって言ってたトレバト夏季大会のDVDです」


「俺に…くれるの…?」


「はい、素人の俺が撮影したので、見づらいかもしれませんが…」


「そんなこと気にしなくていいよ。ありがとう。ライア君には色々ともらってばかりで悪いな…何かお返しできればいいんだけど…何かないかな?」


「それこそ気にしないで下さいよ…だけど…何かあれば…連絡してもいいですか?」


もちろん、と答える。


「ありがとうございます…。あっ、そろそろ行きますね…広瀬君が睨んでますし…」


「へっ…?優斗が睨んでる…?」


ライア君が歩き出すと、入れ替わりに優斗がやって来た。


「お疲れ様。バイトは終わったの?」


「終わりました…。このDVDは…?」


(トレバトの大会のことはあまり話さない方がいいよな…?)


簡単にDVDの説明をして鞄にしまい立ち上がる。


「それじゃ食べに行こうか…?」


「はい…。僕、今日はたくさん食べられる気がします!」


「本当…?最近はあまり食べてないだろう?優斗が痩せたってみんな心配してるよ。元々細かったけど…さらに細くなった…」


「それは…大学受験や学校のテスト、バイトで、ずっと気が張ってたんです。お腹は鳴りますけど食べたいと感じなくて…」


優斗の話しを聞きながらタクシーでお店に向かう。

店内はカウンター席で食べたい物やオススメを大将に聞きながら注文するというスタイルだった。



満腹になって店を出る。


「ものすごく感動したよ…やっぱり寿司はニッポンの宝だな…」


「遠藤さんにお礼の連絡をしますね」


優斗は携帯電話を取り出している。


「俺からもよろしく言ってほしい…」


はい、と返事して電話している。お店で優斗は大将と話しながら注文していたが、あまり箸は進んでなかった。


「…お腹一杯になった?」


電話が終わった優斗に話しかける。


「食欲は出てきたんですけど、胃が受け付けないって感じでした」


酢飯が食べられないと言ってあら汁や茶わん蒸しを食べていた。


「落ち着いたら焼肉食べに行く?牛肉好きだろう…?」


「焼肉は……胃もたれしそうです…12月末まで気が抜けないんです…。これ以上痩せないように努力しますけど…もしかしたら食べられないかもしれません」


「じゃあ…優斗が食べられそうなもの一緒に考えようか?」


「僕…食べるより小林さん家のソファで眠りたいです…」


素直な言葉、本心なのだろうと思う。


「あっ、でも迷惑ですよね?」


「…迷惑じゃないよ、せっかくパジャマも買ったし」


「プースカのパジャマですね」


「そう。あのパジャマ、明地さんが見つけたんだよ。特撮イベント行った帰りにさ…」


明地さんと行ったイベントの話しをする。


「明地さんといえば、また優斗の写真を狩りたい(写真を撮りたい)って言ってたな。今は忙しいだろうから時間ができたらお願いしたいって…」


「それはサリエルの写真ってことでしょうか?」


「そうだと思う。サリエルの衣装を作ってるって言ってたから…」


「分かりました…時間ができたら連絡します」


「うん…明地さん…めちゃくちゃ喜ぶよ」


「小林さんも…良かったら撮影していいですよ」


(えー!?驚き、桃の木、山椒の木ですけど…?)


あっけにとられて言葉が出てこない。


「別に嫌なら…」


「い、嫌じゃないよ!撮りたいです…でも…」


俺に見せるのをあんなに嫌がっていたのに…どういう心境の変化なんだろう…。思い切って聞いてみた。


「それは…サリエルに負けない自信がついた…というか…余裕が生まれた…というか…」


(自信がついた…?よく分からない…でもまぁいいか…サリエルの写真が撮影できるんだから…)


話題を変えよう。やっぱり嫌です、なんて言われたらヘコむ。


「…今日はウチに泊まる?」


「そうですね…行きたいです…。ライアさんのDVDも観たいので…」


「DVDってトレバト夏季大会だけど…?」


「はい…。僕…不破さんと平田さんの勝負が気になってて…」


「そうなの…?」


(大会の話しは触れない方がいいと思っていたが、そうでもないんだな…)


「じゃ、アイスか何か…甘いもの買って帰ろう?」


「…いいですね!」




2008年10月17日、大会のDVDを観ながら優斗と意見交換ができた、最近はまた普通に話せるようになってきてる、兄離れは一時的なものだったのか…?




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