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頑張ってね、小林君!  作者: もう無理だよ
132/211

132_俺と優斗と小休止_前編


俺の名前は小林匡宏。27歳、男、独身、彼女なし。




10月11日――


トラのマーチ交流会にGUNがやってくる。どんな人が来るのか、期待に胸が膨らんでいた。


「小林さん…少し話せますか?GUNの正体ですけど…」


「何でしょうか?」


宮永君に話しかけられる。宮永君が俺に話しかけることが珍しい。


「えっと…実は…GUNって俺の妹なんです…」


「へっ…妹…?宮永君の…?」


ヘラヘラッと頭をかきながら教えてくれる。


(宮永君の妹ってことは…優斗の誕生日に一緒に遊んだ子が宮永君の妹…だったよな…?)


GUNは女子高生ってことか、と考えていたら華奢な女の子がチームの仕切りに入って来た。


(もしかして…あの子がGUN?)


目を疑うが俺は立ちあがって声をかける。


「あなたが、『GAME・ユートピア(野日店)』ですか?」


「はい、私です。宮永紗希です。後ろの二人は付き添いで来てもらいました」


友達らしき二人に会釈する。


「念のためIDを教えていただけますか?」


俺は携帯電話を取り出した。


「えっと、ID番号は……メールアドレスが……です」


「ありがとうございます。確認が取れました」


俺は宮永さんを見る。宮永さんを見ていると初めて優斗と対戦した日がフラッシュバックした。


(線が細くて華奢で…子どもに見える幼い顔つき…優斗も高校1年生だったよな、懐かしい…)


昔のことを思い出していると、環がツカツカと歩いてくる。


「この子がGUNなの?信じらんない」


「おい…からむのはやめろよ」


「ハァ?別にからんでないし」


(いや、絡んでるだろう、思いっきり…)


環と宮永さんがトレバトで対決することになった。俺が止めても環は言うことを聞かないし負けて大人しくなればそれでいいか、と了承する。




宮永さんが圧勝して、俺は優斗を迎えに行く。


「すみません、また遅刻して…仕事が長引いちゃったんです」


大丈夫と頷いて、GUNが来ていることを告げる。


「優斗が来る前に環と勝負してた」


「環さんとですか?」


「あぁ、決着が早かった」


「…でしょうね」


苦笑している優斗をGUNの元へ案内する。


「遅くなりました、僕がトラの…」


優斗はそこで止まってしまった。宮永さんも驚いている。


「紗希さんが…GUN…だったんですか?」


「優斗さんが…トラのマーチの…リーダー?」


二人は完全に固まってしまった。知り合いだから驚いているのかと思ったらそうでもないようだ。


会話を聞いてると、宮永さんは優斗がやろうとしている活動を止めに来た、と話している。


「僕はッ…!!」


話しの途中、優斗はクルっと向きを変えて出口へと歩き出す。俺はハッとして、すぐに優斗を追いかけた。




「…ちょっと待て…」


立ち止まってくれるから安心する。俺の方に振り向いてくれないけど、かまわない。


「…今日ウチに来ない?話したいことがあるんだ」


部屋のスペアキーを渡して交流会に戻る。


交流会の場も収集がつかない…というか、宮永さんが泣きじゃくっている。メンバーは深刻な顔で落ち着きがない。


今日の交流会は解散とするか、と考えていると、宮永君に呼ばれる。


「なんだが大変なことになってすみません。妹は俺がフォローしますから…チームのことお願いします」


宮永俊介君が妹さんを連れて行く。友達二人も神妙な顔つきで後ろに続く。


俺は騒然としているチームメンバーを一か所に集める。


「申し訳ありませんが、本日の交流会は中止とします。交流会の活動内容については改めてチームリーダーの広瀬君からお話します。リーダーの意見が固まるまで…待っていてほしいと思います」


何かあれば連絡してください、と告げてテーブル席に移動する。少し残っている雑用を片付ける必要があった。パソコン作業を終えて帰ろうとしたら、女子高生三人組に取り囲まれる。


「あの…広瀬さんがやろうとしている活動ってなんですか?」


「それは俺の口からは言えません。活動内容はリーダーの広瀬君が決めることなので決断を待ってあげてほしいと思います」


八谷茉莉さんの質問に答えると、今度は山中祥子さんから声をかけられる。


「あの…小林さん…」


クリクリとした瞳で聞かれる。


「広瀬さんはどこに行っちゃったんですか?」


「今は俺の家にいるはずだけど…?」


「それは…この後、広瀬さんを慰めるってことでしょうかー?」


奥田怜華さんから恐る恐る聞かれる。


「慰める…?そうだな…感情が高まっていたから落ち着いてもらいたいと思うが…」


「は、早く帰ってあげて下さい!」


「あぁ…それじゃ、また来月に…」


俺の挨拶を無視して、三人は抱き合っていた。





帰る途中、優斗に連絡したが繋がらなかった。家に着いたらソファで寝ていて、まつ毛が濡れて光っている。


(泣いていたのか…)


フゥーと息を吐いて優斗の前に座る。


(二人とも傷ついてたな…)


優斗の誕生日に宮永さんと二人で遊ぶってことは友達以上に仲良しってことだよな。


宮永紗希さんが話してた内容を思い出す。


――優斗さんが…トラのマーチが、やろうとしている活動を止めに来たんです。負けた人のIDを削除するなんて本気ですか?


本来なら俺が聞かなきゃいけないことだったのに、優斗に嫌われるかもしれないと思って聞けずにいた。


まさか見ず知らずの女子高生が指摘するなんて思ってもみなかった。


(俺もちゃんと話さなきゃな…)


タオルケットを持って来よう、重い腰を上げる。




21時過ぎに優斗が起きた。お風呂に入ってパジャマに着替えた優斗にココアを作った。


「はい、どうぞ。牛乳たっぷりです」


「…ありがとうございます」


両手で持ってフーフーしている。


「そのままでいいから聞いてほしい…ちゃんと伝えられるか自信がないけど…」


優斗の対面に座って一息つく。


「8月…お腹が痛くて泊まった日…優斗は俺に何か言おうとしてただろう…?もしかしたらチームを抜けたいって言いたかったんじゃないかと思って…でも俺のせいでチームを抜けたいって言えないのなら…」


「僕は…」


優斗が瞳を揺らす。


「僕はチームを抜けたいと思ったことはありません。あの時僕が言いたかったのは大会に出場するのを辞めるって言われてパニックになって…僕が活動内容を変更するって言ったせいで…だから僕がチームを辞めたら大会に出場できると思って…でも…結局僕は…何も言えなくて…」


「…そうか」


優斗の本当の気持ちが聞けると思ってなかった。うつむいている男子高校生を安心させるように、ゆっくりと話すことにした。


「優斗…俺はさ、大会に出られなくても問題ないよ…。優斗がチームを抜けないでいてくれたら…それでいい…」


「でも…それだと僕のせいで…小林さんの夢が…」


「俺の夢…?」


「はい…僕が交流会の活動を変更したいって言ったから…そのことで…大会に出られなくなるなんて…」


優斗がポロポロと涙を流す。


「大会で優勝するのが小林さんの夢だって言ってたのに…僕が小林さんの夢を叶えるんだって…あの時そう誓ったのに…その僕が小林さんの夢を壊す結果になるなんて…考えが足らなかったんです…本当にごめんなさい」


「優斗…」


(大会で優勝するのが夢だって、俺はいつ優斗に話したんだろう…?)


覚えてないが優斗は覚えてくれてたんだな。立ちあがってコジラのティッシュケースを持ってくる。


「優斗…確かに俺は…大会で優勝したいって夢はある」


「はい…GUNが…紗希さんがいれば…小林さんの夢は叶います」


ティッシュで涙を拭っている。


「GUNじゃダメだ、お前じゃないと…」


「…えっ?」


「優斗…俺が夢を描けるのはお前がいるからなんだよ…」


「どういう…ことでしょうか…?紗希さんがいれば大会で優勝できると思います」


「そうだな…優勝できるかもな…。でも…俺が優斗に語った夢はお前がいてこその俺の夢なんだよ…」


フゥーと息を吐いてワインを飲む。俺の夢の話なんてワインの力を借りないと話せない。


「あのさ…今から気味の悪いことを言うけど…聞いてくれ」


「はい…」




後半へ続く



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