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<ハノキア踏査編> 66.離れていても仲間だよ

66.離れていても仲間だよ


 スノウはシュカレトゥーダと別れた後、城内でエストレアを探していた。

 だがどこにも見当たらない。


 (全くどこに行ったんだよ‥‥)


 城中探したが見つからずかれこれ2時間は探し続けていた。


 「もう少しで越界の時間になってしまう‥‥」


 スノウは立ち止まりエストレアが行きそうな場所を考えた。


 (城の中にいないとなれば、王宮都内の城下町‥‥いや考えにくいな。普段から城下町には出ていると聞いているけど、ここのところずっと街を歩いて民衆たちと会話して勇気づけたり、復興を手伝ったりしていたから怒って行く場所じゃ無い。きっと何処かで独りでいるはずなんだ。どこだ‥‥あいつの思い入れの強い場所‥‥気持ちが沈んだ時に行く場所‥‥まさか!)


 ヒュゥゥン!


 スノウは凄まじい勢いで空に向かって飛び去った。



ーーマクロニウムセンターピラー跡ーー


 スメラギの開発したマクロネットで隕石の大半を破壊した際に出来たマクロニウムの土台の上に何者かが舞っていた。

 舞を踊っているのはエストレアだった。


 ヒュゥゥン‥‥スタ‥‥


 そこから少し離れた場所にスノウは降り立った。


 「エスティ‥‥」


 スノウは彼女の美しい舞に見惚れ暫く目を奪われていた。


 タタン‥‥タタ‥‥


 独特でありながらも優美で繊細な舞いに完全に引き込まれている自分に気づくことなくスノウは舞いを見続けていた。

そしてそうなることが予め分かっていたと思わせるような美しいポーズで舞を終えたエストレアはまだスノウがいることに気づいていないかった。

 舞いが終わりやっと我に返ったスノウはエストレアのもとへと近づいていった。


 「エスティ」

 「わぁ!」


 ビクンと体を震わせエストレアは驚きの声をあげた。


 「何でここにいるのよ!」

 「君がここにいるからだよ」

 「え?」


 エストレアは頬を赤ながら少し俯いた。


 「前回ティフェレトを発つ時はまともに会話もできないままだったから今回はしっかりと話をしてからと思ってさ。さっきは挨拶とか素っ気ない言い方して悪かったよ」

 「い、いいわよ別に!‥‥それで次はどこへ?やっぱりマルクト?」

 「ああ。マルクトには行くけど、目的が増えたよ。ゴーザと消えたロロンガ・ルザも探さなきゃならない」

 「ゴーザ‥‥あれは不幸な事故だった‥‥」

 「ああ。おれなんかティフェレトからゲブラーって言う火山ばっかりの世界に飛ばされて、挙げ句の果てには地面に衝突した衝撃で地下深く食い込んで危うく溶岩で溶かされそうになったからな。まぁ石頭で頑丈なゴーザなら問題ないと思うけどさ」

 「そうね、あの無駄に頑丈な体なら少々のことでは死にはしないでしょうね」

 「ははは、そうだな」

 「ふふふ、いってぇなぁとか言って平然としてそうよね」

 「そうそう!それで数秒後には忘れてるって感じの!」

 「あはは、分かる!でもそのさっぱりした感じがゴーザの良いところよね」

 「そうだな。あの性格に随分と助けられたよな」

 「ね!初めて悪魔と戦った時もゴーザが一緒にいてくれてよかったわ。嬢ちゃん気合い入れるぜぇ!なんて言ってさ!」

 「はっはっは!ゴーザらしいな」

 「そうよね!‥‥!」


 いつの間にか笑あっていることに気づいたエストレアは急に顔を赤らめて俯いた。

 それを見たスノウは思わず言葉を詰まらせてしまい、数秒の沈黙が流れた。


 『‥‥‥‥』

 「い、いつ出発?」

 「間も無くだ」

 「間も無くって!ここどこだと思ってんの?!‥あ、そっか。スノウならヴィマナ離れててもひとっ飛びだし、途中で転送も出来るのよね」

 「まぁな‥‥」

 「いいなぁ‥‥私も冒険したいな‥‥」

 「エスティ‥‥」

 「あ、いや、こんなこと言っちゃダメよね!なんて言っても私はラザレ王国の女王様なんだから!老後も安心な将来約束された存在なのよね!本来なら貴方なんか恐れ多くて近寄れない存在なんだから」

 「そうだな‥‥」

 「そうよ!分かった?‥‥分かったなら‥‥さっさと行きなさいよ‥‥マルクトでもどこへでも‥‥私は‥‥私は‥‥うぅぅ」


 エストレアは感情が溢れ出したのか泣き出してしまった。

 高価なドレス袖は涙で濡れてしまった。


 「うぅぅ‥‥ふえぇぇぇん‥‥」


 どうすれば良いのか分からないスノウはこの場から逃げるわけにもいかず、エストレアの頭部に手をあてるとそっと引き寄せた。

 エストレアの顔がスノウの胸の部分に埋まった瞬間、抑えきれなくなった感情が爆発したかのように大声で泣き出した。


 「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 エストレアはスノウの胸に顔を埋めて子供のように泣いた。

 エストレアの美しい紫の髪が間近にあり、ゼロ距離であることを認識したスノウは思わずエストレアを引き離そうとしたが、泣き崩れるエストレアの姿を見て強く抱きしめた。


 「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 大声で泣き崩れるエストレアの体温を感じながらスノウはエストレアが一緒に冒険できる方法はないかと考えたが、間違っていると結論づけて、さらに強く抱きしめた。


 (エスティが仮におれと一緒に冒険に出られたとしても、きっと後悔する。責任感が強いからラザレ王国に、いやティフェレトに何かあったらきっと自分が残ってさえいればと後悔するはずだ。それはエスティにとって不幸でしかない‥‥)


 「エスティ」

 「わぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 「泣きながらでも構わないから聞いてくれ。お前が女王でなければ一緒に冒険できたのにっておれも思う。でもお前は女王だ。他の誰でもないお前がこの世界の女王なんだ。これはきっと運命だと思う。命を狙われホドに越界したのに、結局ティフェレトに戻って来た。そしてムーサ王に辿り着き、アウロスを鍛えられるブロンテースやゴーザと会い、生まれながらに染み付いている美しい舞いを踊り世界を救った。こんなの運命としか言いようがないよ。でも一生冒険が出来ないってわけじゃない。今イヌトやグレイアン、オルダマトラ、ニルヴァーナといった勢力が何かを企てハノキアは未曾有の危機に瀕しているけど、おれ達は必ずやつらの企みを阻止してハノキアに平和を取り戻す。世界が平和になれば、エスティ、君は女王を退いて冒険者に戻ることだって出来るはずだ。その時に思う存分おれ達と世界を冒険すればいい。そう思うんだ」

 「うぅぅぅ‥‥」


 スノウの胸に顔を埋めていたエストレアはスノウの言葉を聞いて顔をあげスノウの顔を見た。


 「平和になれば、また一緒に冒険できるの?」

 「ああ。流石にラザレ王国の民も許してくれるよ。苦しい時に民のために力を尽くした女王の夢を邪魔する人なんているわけがないだろ?」

 「うん‥‥ラザレの人たちはみんないい人たちよ‥‥」

 「エスティは2度もティフェレトを救った。これで世界が平和になれば、皆エスティの冒険者復活をきっと喜んでくれるはずだ」

 「うん」

 「だからハノキアに平和が訪れるまで待っていてくれ。おれ達レヴルストラが必ず実現する。まぁエスティもレヴルストラの一員だから、距離は離れていても一緒に戦っていることになるんだろうけどな」

 「そうね‥‥」

 

 エストレアはスノウのマントで涙を拭いた。

 

 「おいおいお前なぁ」

 「いいでしょ!どうせこのマントは元々ラザレ王国の宝物庫にあったやつなんだから!」

 「まぁそうだけど‥‥」

 「分かったよスノウ!私は私でレヴルストラの一員として出来ることをする。ここティフェレトでね!スノウは他の世界でハノキアに害をなすやつらを叩き潰して来て!そうねぇ‥‥5年でどう?」

 「5年?!‥‥いや5年でも長いかもしれない。あれだけの勢力が企んでいるんだ。5年もかけていたらどこかの世界が滅ぼされかねない。もっと早くハノキアに平和を取り戻すよ」

 「うん!」


 エストレアの表情に笑顔が戻った。


 「それじゃぁ行って!見送りはしないわよ?お別れじゃないんだから!」

 「分かったよ。それじゃぁレヴルストラの一員としてティフェレトをしっかり守ってくれ、エスティ」

 「ふん!任せなさい!」

 「フフフ。心強いよ女王様」

 「ちょっと!気持ち悪いい方やめてよね!っておい!」

 

 エストレアが話している最中にスノウは空中に浮上した。


 「じゃぁなエスティ!」


 ヒュゥゥゥン!!


 スノウはヴィマナの方へと飛んでいった。

 その姿をエストレアはじっと見つめていた。



 「大好きよスノウ‥‥」


 エストレアは届かない声でつぶやいた。


・・・・・


――ヴィマナ・ブリッジ――


 ヒュゥゥゥン‥‥スタ


 スノウがヴィマナに帰還した。


 「遅い!スノウ!」

 「おわ!」


 転送されたスノウを見るや否や飛んで抱きついてきたのはケリーだった。


 「ケリーか!」

 「遅い遅い!」

 「悪かったよケリー!」

 「許してあげる!」

 「ははは、ありがとうな」


 すっかり大人の姿に成長したケリーであったが、スノウにとっては幼く可愛いケリーだった。


 「それで、ここにいるってことはおれ達と一緒に冒険するってことでいいんだな?」

 「‥‥‥‥」


 ケリーは少し俯いて黙ってしまった。


 「ん?どうした?」

 「スノウ、ケリーは一緒には行かないわ」


 アヌを抱いたソニアが言った。


 「そうなのかケリー?」

 「うん。本当は一緒に冒険したかったけど、行けないの」

 「どうしてだ?何か理由があるのかい?」

 「うん。上手く言えないんだけど、変化が訪れそうなの」

 「変化?」

 「うん。姉さんもボダルゲも感じているみたいなんだけど、私たちハルピュイアに間も無く大きな変化が訪れるみたい。漠然とした感覚なんだけど、変化が訪れることだけは確信しているというか。それでね、どうやらティフェレトを離れちゃいけないみたいなの」

 「どうしてだい?」

 「分からない。でもそんな感覚が強くあるの。頭の中に」

 「そうか。でもケリーもレヴルストラの一員だ。ティフェレトに残ることになっても仲間であることは変わらない。どんな変化が訪れるのか分からないけど決して無理だけはしちゃだめだぞ?おれはまたティフェレトに戻ってくるけど、その時に変化が既に終わっているようなまた誘うからね」

 「うん!分かった!」


ケリーは少しだけ悲しそうな表情を見せつつも元気よく挨拶してその後、ヴィマナ外へと転送された。


 「よし、それでは5分後に越界開始だ。それまでみな準備を頼む」

 『おう!』


 ヴィマナの越界に向けた最終調整が始まった。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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