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<ハノキア踏査編> 63.エンゼン・フィグイッツ

<レヴルストラ以外の主な登場人物>

【エンゼン・フィグイッツ】

ティフェレト人類議会の次席マスターヒューであったがグレイアンの侵略によってマスターヒューが死亡したため繰り上がってマスターヒュー代理を務めている。本人は代理ではなく正式なマスターヒューとなっていると思っている。虚言癖があり周囲がついてこず無能な人物ではあるが上には気に入られる処世術をもっており、ホドの元老院最高議長候補者として選ばれたが、ニル・ゼントに破れた。

63.エンゼン・フィグイッツ


ーーヴィマナ会議室ーー


 「んん〜うぅ!」


 会議室にはスノウ、フランシア、シルゼヴァ、アリオクの4人とスノウの連れてきたエンゼン・フィグイッツがいた。

 エンゼンは両手両足を縄で縛られ椅子に括り付けられている。

 おまけに猿ぐつわされており上手く喋ることが出来ず涙を流しながら呻き声を出していた。


 ガタン‥


 スノウはエンゼンの方を向いて椅子の背もたれを抱き抱えるように反対の向きで座った。


 「さて。エンゼン・フィグイッツだったか。名前が合っているなら頷け。間違っているなら首を横に振れ。いいか?」


 エンゼンは慌てたように頷き緊張の面持ちでスノウを見ていた。


 「よし。お前は今おれのおかげで生き延びられている。何故ならおれが止めなければ最も重い罪である国家反逆罪で処刑されるからだ。お前のせいで大勢の死傷者が出た。農業区域と工業区域にも大きな被害を与え、数多くの人々の生活の基盤を失わせた。被害者の正確な数や損害額の報告もあるが最も重い罪であることは言うまでもないわけだ。だがおれはそれを今止めている。生き延びたければおれに従いおれの信用を勝ち取る努力をすることをお勧めする」


 クイクイ!


 エンゼンはさらに慌てたように首を縦に振った。


 「これから幾つか質問するが同じように合っていたら頷き、間違っていたら首を横に振れ。言っておくがおれは嘘を見破るワードを質問に散りばめている。矛盾点や嘘の回答に該当するワードが出たらお前を信用することはなくなり、おれはお前をラザレ王政府へと引き渡さなければならない。その後は予定通り刑の執行だ。質問に正直に答えるか?」


 クイクイクイ!


 必死の形相でエンゼンは頷いた。

 スノウは彼の目をじっと見つめた。

 全てを見透かすような目でエンゼンの目を数秒見続けた。


 「んん〜ん!んん!」


 何かを訴えているが猿ぐつわは外さない。

 スノウは質問し始めた。


 「お前はティフェレトの人類議会(ヒューパラメンタル)のマスターヒューか?」

  

 クイクイ!


 エンゼンは勢いよく首を縦に振った。


 「最前線で戦っていたナイトヒューとヒュナイツは三足烏(サンズウー)か?」


 エンゼンは首を振ろうとしたが、再び涙目になり何かを考え始めた様子となったため、スノウはエンゼンの目を見てプレッシャーをかけた。


 「‥‥‥‥」


 クイ‥‥


 エンゼンは一回頷いた。


 「なるほど。お前への信頼度は少し上がった。ここからは質問を変える。猿ぐつわを取るが騒いだり暴れたりしたらお前の目を抉る。おれの気に食わないことをしても目を抉る。呼吸の仕方が気持ち悪いと感じただけでも目を抉る。いいか?」


 クイクイ!


 フランシアはエンゼンの猿ぐつわを外した。


 「!」


 エンゼンは震えながら必死に平静を装うとしている。

 どんな表情でどんな態度ならスノウの心象を損ねないのかを探りながら必死に取り繕っている。


 「よし。今のところ合格だ。お前はおれの期待に応えられている。質問を続けるぞ」


 スノウの様子を見てアリオクは感心していた。


 (心理的に支配が出来ている。正しい答えを答える答えないと言う状態からどう答えれば正解が伝わるかに変わっている。本気で殺す気迫が無ければ出来ない芸当だ。優しすぎるぬるい男だと思っていたが、成長しているようだ)


 スノウはエンゼンから一瞬も目を離さず質問を続けた。

 

 「お前をマスターヒューに任命した者は誰だ」

 「!」


 相当答えづらい質問が飛んできたのかエンゼンは絶句した。

 スノウの目が徐々に冷たい視線へと変わっていく。

 その変化に恐怖しているエンゼンはガタガタと震えながら話し始めた。


 「ニ、ニルヴァーナと呼ばれる組織‥‥」

 「ニルヴァーナとはどんな組織だ?」

 「せ、世界をに、人間のものにする組織‥‥」

 「ニルヴァーナに紐づく組織には何がある?」

 「人類議会(ヒューパラメンタル)、元老院‥‥武力は三足烏(サンズウー)‥‥」

 「ニルヴァーナを牛耳っているのは何者だ?」

 「ジ‥‥ぐぐぐぐぐががががががが!」

 『!』


 突如エンゼンはガタガタ震えながら意味不明な言葉を発し始めた。


 「じぐががががが!」

 「リュクス!こいつを出来るだけ遠くへ転送しろ今すぐだ!」

 "承知しました"


 キィィィィィィィィン‥‥


 エンゼンは転送され消えた。


 「リュクス、エンゼンを映せるか?」

 "ブリッジのスクリーンに映します"


 スノウ達は急いでブリッジへと向かった。

 ブリッジのスクリーンには空中に放り出されたエンゼンが落下している。


 『!』


 エンゼンは激しく発光した後凄まじい爆炎をあげて爆ぜた。

 もしスノウが咄嗟の判断でエンゼンを転送させなければヴィマナは今頃大打撃を負っていたに違いない。


 「何があったんですか?」

 

 ソニックが質問してきたのを受けてスノウはメンバーを集めてここ1〜2日で起きた出来事を共有した。


 「というわけだ。ニルヴァーナと言う組織に人類議会(ヒューパラメンタル)と元老院が紐づいていて、同様に三足烏(サンズウー)はニルヴァーナの戦力として紐付いている。ニルヴァーナを牛耳っている存在を聞き出そうとしたら爆発した」

 「あれは遠隔操作魔法じゃない。自動発動魔法だ」


 補足したのはアリオクだった。


 「自動発動魔法はかなり高度な魔法だ。特定のトリガーを設定し、トリガーが引かれた瞬間に内在されている魔法が炸裂する。条件を付与して発動させること自体が高等魔法だが、条件発動を検知する魔法は最も高等魔法になる。そしてあの爆ぜる直前の激しい閃光と凄まじい爆発もまたかなりの威力であり魔力量もあるが魔法技術も相当なものだ。この3つの魔法を融合させてエンゼンとやらに刻印したのだろう。魔王でも出来るものを俺は知らない。ただ1人を除いてはな」


 珍しく感心しつつ話しているアリオクを見てニルヴァーナと言う組織の恐ろしさを皆感じ取った。

 

 「ただ1人を除いて‥‥誰だそれは」


 シルゼヴァのワクワクするような目つきに表情を変えずにアリオクは答える。


 「明けの明星、大魔王ルシファーだ」

 「大魔王ルシファー‥‥」

 「会ったことないからなぁ。そいつは強いのか?」


 ヘラクレスは呑気に質問した。


 「強い。恐らくハノキアで最も強い存在だ」

 『!!』


 皆突然の最強キャラの登場に言葉を詰まらせた。


 「だが俺の知る彼の方はあのような雑魚に高等魔法を付与するとは思えんし、ニンゲンの世のためにニルヴァーナに与することも考えられない。つまり、エンゼンにあの魔法を付与したのは彼の方ではない」


 スノウは冷静にアリオクを見ていた。


 (大魔王ルシファーを彼の方と敬意をもって呼んでいるってことは当然ルシファーを知っているか近しい間柄か。アリオクは仲間であることは揺るがないが、まだまだ知らないことは多いな‥‥)


 「あの自動発動魔法をルシファーが使ったのでなければ誰が使ったんだ?」

 「分からない。魔界や冥府にもあれを使える者はいないだろう。天界はどうなのだエルティエル?」

 「え?あ、あぁそうね、私は大魔王ルシファーを見たことがあるけどあれほどの存在は知らないわ。メタトロンでさえあの域には達していないと思うの。もちろん我が主なら使えるだろうけど」

 「俺の知る多神教の神どもや旧神どもにもいないだろうな。原初の神のひとりのニュクスやガイア、カオスですらあれを使えるとは思えん」


 エルティエルに続いてシルゼヴァが答えた。


 "僕なら簡単だがね"


 ソニアに抱き抱えられているアヌが答えた。


 "知者アリオクの認識は正しい。あれは高度な魔法の三重構造だ。しかも三種の魔法をただ同時に込めて刻印すればよいというものではない。魔法の複雑な接続が必要なのだ。それをやってのけられるのは神を名乗るエセ種族では到底無理だね。だが逆に使いこなせる者がいるとすれば相当な脅威と見た方がいい。まぁ僕がいれば敵ではないのだがな。ソニアとアリオクは守ってやろう。無知者スノウ。お前もおまけだ。それ以外は塵となって死ぬがいい"


 アヌの発言に皆ムッとしたが、黙っていた。

 怒らせれば直ぐに "何か" に変えられてしまうからだ。

 それを無視するように何か整理がついたような表情でスノウが話し始めた。


 「これはおれの推測だが、ニルヴァーナの中にあれを使える者がいるんじゃないかと思う。それを突き止めなければならないと思うんだ。ニルヴァーナがどれほどの脅威なのかは測りかねていたが脅威たる存在と見ていいと思う。三足烏(サンズウー)のネンドウのような異能の持ち主がいるとかだな」

 「元々ニルヴァーナは調べることになっていたのだろう?幾つもの勢力がそれぞれ力を持って暗躍している。我らも同様に力を付けねばならんな」

 「その通りだルナリ。おれ達は冒険を通して成長し、オルダマトラやニルヴァーナ勢力、そしてグレイアンやイヌトと対峙し勝たなければならない。みんな、より一層気を引き締めて行こう!」

 『おう!』


 スノウに鼓舞され皆気持ち新たにしその場は解散となった。


・・・・・


ーー医療室ーー


 スノウはワサンの寝ている医療室を訪れた。

 隕石船から帰還して以降、治療を施しても治りが遅く、意識も中々はっきりしない状態が続いていた。


 「ワサン‥‥」

  

 キュィィィン‥‥


 ワサンの傷跡にスノウは回復魔法を施すが傷は治らなかった。


 (一体どうしたって言うんだよワサン。何があったんだ?)


 スノウはワサンの額に手を当てた。


 「熱なんてねぇぞ‥‥」

 「ワサン!」

 「うるせぇなぁ‥‥でかい声出さなくても聞こえてるよ‥‥」

 「目が覚めたんだな?!」

 「ああ‥‥心配かけてすまない‥‥」

 「一体何があったんだ?!何故傷の治りが異常に遅いんだ?」

 「分からない‥‥だが直感的に感じているのは、原因はオレの今の存在にあるんだと思う」

 「どう言う意味だ?」

 「オレは今半分獣人みたいな感じなんだ」

 「?!」


 スノウは返す言葉を失うほど驚いていた。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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